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1-1. R-bit
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1)R-bit
「ではご自分で触ってみて下さい。いかがですか?」
仕事が好きだ。
特に納品時の快感は格別だ。
顧客がみんな目をキラキラさせて僕を見てくれる。教祖にでもなった気分になる。
「すごいよ~。里見君!期待以上だよ!これがうちのHPだなんて信じられないよ」
「HPじゃありません。社長。ホワイドボード。WBです」
「いやあ、そうだった!とにかくありがとう!これで売り上げUPも間違いなしだ」
「里見さぁ~ん。ありがとう。里見さんってホントすごいよね~~」
「気に入っていただけて、僕も嬉しいです。では、実際使ってみて、使いにくいところなどありましたらご連絡下さいね。僕はこれで失礼します」
「え~里見さん。もう帰っちゃうのぉ?そばにいてくれなきゃ分かんないよぅ」
「大丈夫ですよ。初めての人でもすぐ使えるのがWBです。とにかく色々と触ってみて下さい。また感想を伺いに上がります」
「また来てね~。絶対だよー」
「ありがとうございます。それでは」
そのまま帰りかけたが、さっきからどうしても気になる人がいる。
出口近くの席で、眼鏡をかけた若い女の子が一人だけ輪にも加わらず、眉間に皺をよせてキーボードを叩いている。
僕は通りがかりにモニターを覗いた。
「何かお困りですか?」
その子は一瞬で真っ赤になって首をすくめた。
「え!大丈夫です。それに、ヨソのソフトですから」
「ああ、その表計算で簿記付けてたら大変じゃないですか。ちょっと見てもよろしいでしょうか。作業を自動化しましょう」
後ろからマウスに手を伸ばすと、彼女は慌てて手を引っ込めた。
「ダメ~!里見さん!新人は甘やかしちゃダメなの!」
お局さんらしい人がデスクの向こうから声を張り上げる。
「そうだよ。今日は金曜日だから、里見君、早く帰してあげなきゃ」
「すぐできますよ。ところで社長、こういう伝票や給与明細なんかもWBにできますけど、どうでしょう、この際うちの製品で一括管理ってのは?」
僕はモニター越しに社長を見つめてニッコリした。
「社長~!」
社長の周りを取り囲む女子社員はみんな手を組んで瞳を潤ませている。
会社に戻るために快速に飛び乗った時は6時15分をまわっていた。今日は6時半から部下と飲みに行く約束をしている。実は3週間前から今日と同じような状況で3回も約束を破っている。さすがに今日遅れるのはマズい。オフィスに戻ったらすぐ退勤できるように、スマホから業務報告を入れる。
それにしてもスマホの操作はいつまで経っても慣れない。ケータイでメールするのも苦手だったがスマホはもっと嫌いだ。皆、なんでこんな物好んで使うのだ?大体、業界の統計結果ほど、本当にスマホ率って高いのか?僕は周りを見渡した。
斜め前の座席に座っているスーツ姿の男性はスマホどころか、雑誌を読んでいた。僕はちょっとニヤけてしまった。僕も紙媒体が好きだからだけでなく、雑誌の表紙に我らがボスの顔がアップで載っていたからだ。テッド・ローゼンバーグ、28才にして年商数百億のIT企業R-bitのCOOである。
数ヶ月前、僕はその本人と握手した。
それまで務めていた会社NYANCがR-bitに買収され、統合記念パーティで会ったのである。実物も写真のテッドも同じように屈託ない笑顔をしていて、ビジネスマンというよりTVタレントのようだった。雑誌の表紙からするとテッドは今年の世界に影響力のある人間100人に選ばれたらしい。
僕もちょっとだけ鼻が高い。
カスタマーサポート部とはいえ、僕もR-bitの社員だ。
我が社のビジネス統合ソフトWBはオンラインストレージにビジネスでよく使うソフトの機能が付いている。社内掲示板を始め、会議のプレゼンも財務管理もWB一つでできる。さらに取引先への広告もWB上でできしまう。大抵の事業者自分のWBを持っていないと営業にならないという理由でWBを購入する。WBは会社の顔になるため、セットアップを依頼してくる顧客は多い。僕達カスタマーサポートはそれぞれの企業にあわせてWBをカスタマイズしている。
「里見さん、お疲れ様でした!」
オフィスに着くとすでに帰り支度をしたモコが出迎えてくれた。
僕は伸びをするようにVサインを高く掲げた。
「修正なし!簿記システム追加~!それは来週ね」
「やっぱりね~。モノを見るとみんなもっと欲しくなるんだよね」
「モコのおかげだよ。女子社員が多い会社だからちょっと可愛いデザインで正解だった」
「里見さん!」
ジャケットを羽織りながらチャラ男が近づいて来た。
案の定、怒っている。
「遅いっす。遅いっすよ。予約7時からなんすよ。すぐ出ますよ!」
「悪かった。今日こそはちゃんと行くから。着替えていいか?」
僕はスーツで飲み屋には行きたくない性分だ。
「だぁ~め!ダメダメ!6時半に約束したのに遅れたのはアナタ!どおせ、クライアントとくっちゃべってて遅くなったんでしょ!」
チャラ男は僕から営業用ブリーフケースを取り上げて、そのまま自分のロッカーに放り込んでしまった。
「・・・・仕事を取って来たって言って欲しいね。」
「そうだよ、チャラ男!里見さんに労いの言葉はないの!?」
「ハイハイ。里見さんお疲れ様でした~!じゃあ行きますよ!ネオさん、仕事はもういいから早く立って!ちょっと、ヤルヲ、ネオのコート取って!そのコウモリ合羽みたいなやつ!」
ネオが眼鏡を光らせて立ち上がる。
「・・・・・コウモリィ・・・?」
「コウモリ!コウモリ!コウモリッ!」
ネオはチャラ男を追いかけて外に誘導されて行った。
「チャラ男サン、今日はやけに張り切ってるんだお」
そう言うヤルヲも出かける準備万端だ。
「しょうがないなあ。3週間働き詰めだったし、今日こそガッツリ飲むか」
ちなみにユニットメンバーの呼び名は各自決めた社内アカウントによるもので、僕がつけたあだ名ではない。
いつもは会社の最寄り駅近くで飲む事が多いが、今日はチャラ男がぜひ行ってみたいという、4駅離れた新規オープンの多国籍料理の店に向かった。隠れ家的雰囲気が売りの店らしく、お目当ての店はなかなかみつからなかった。
「ちょっおっと~!チャラ男!道間違えてんじゃないの!」
「あれ~、路地一本間違えた?」
チャラ男はスマホの画面を見ながらうろうろしだした。
「自分が行ったことのない店にうちら誘うなんて、チャラ男さんらしくないお」
「準備不足。しかも人の仕事を中断させておきながらこのていたらく。幹事失格だ」
「オープンしたてで、マップに載ってないんだろ。手分けして探そうか。何て店だっけ?チャラ男?」
件のチャラ男は僕達の言うことを全く聞いていない。
「この辺のはずなんすけどねー・・・・・あ、里見さん、こっちみたいっす」
「ちょっと待てって、チャラ男・・・・」
チャラ男を追いかけて細い路地に駆け込むと、道の真ん中に突っ立っているチャラ男の背中にぶつかりそうになった。
「チャラ男?」
チャラ男はぽかんとして前を見つめていた。僕はチャラ男の視線の先に目をやった。腕を組んだカップルが小洒落たフレンチレストランに入って行くところだった。女の子は手にライトブルーの小さな紙袋を下げている。
「あ!里見さん!ごめん、やっぱ、路地一本向こうだわ!」
チャラ男のデカイ声のせいでカップルが僕らに気がついて振り向いた。女の子は僕を見て硬直した。
「・・・・晴人君」
「マリエちゃん?」
僕はどうやら恋人の浮気現場に遭遇するという修羅場にいるらしかった。
こういう場面では僕はどういう態度を取れば良いんだ?
まるで他人事のように言葉が出てこない。
彼女も同じ状態らしく僕らは見つめ合って立ち尽くしていた。
代わりに彼女の連れの男がススッと近寄って来た。僕より微妙に背が高く、上から下まで高そうなブランド品で固めている奴だった。
「君が里見君ですか。初めまして僕は鷹藤商事の山下と言います。マリエちゃんを責めないで下さい。マリエちゃんに言い寄ったのは僕の方です。近いうちにちゃんと説明するつもりでした」
まるで営業トークのノリだったが、僕だってこんな所で事を荒立てたくない。
「そういうことでしたら今日はこんな場所ですし、日を改めて・・・・」
バシッ!
一瞬何が起こったか分からなかったが、彼女に紙袋を投げつけられたのだった。袋の角がモロに顔にヒットした。
「痛っ~!」
「いっつもそうなのよぉ~!あんたは~~っ!」
彼女は僕が今まで見た事のない形相をしていた。
なんで?
なんで、ここで僕が怒られるんだ?
「何すんだよ。てめぇ!」
チャラ男が罵声を飛ばしたので僕の方が驚いた。
「大体、お前にストーカーされて迷惑してんだよ、こっちは!これ以上里見さんにつきまとったら訴えるぞ!」
「今の決定的瞬間バッチリ撮っちゃったお。」
いつの間にかヤルヲがカメラを構えて横に立っていた。
「ヤダ!里見さん、血が出てる!」
「今のは傷害罪が成立する。通報する?」
「何よ!あんたたち!」
うちの奴らが調子に乗ってある事ない事騒ぎだしたものだから、彼女いや元彼女もますますヒステリックにわめきだした。僕は彼女のそんな姿を見たショックより、この場をどうやって治めるかを考えていた。しかし山下君とやらは僕より修羅場に慣れていたようだ。
「マリエちゃん、行こ」
山下君とやらは、あっさりと元彼女の肩を抱いて駅の方向に歩み去った。
取り残された僕達は野次馬の奇異の目を避けて、慌てて近くの居酒屋チェーン店に逃げ込んだ。
「さあ~って!里見さんのー 厄落としを祝ってかんパーイ!」
「お前ら、ホント、むかつくな」
「なんでえ~?あんな女、別れて正解じゃ~ん」
チャラ男は本当に嬉しそうにニヤついている。
むかつく。
そもそもこいつがあの時騒ぎ立てなければ、穏便に済ませられたのに。
「そうだよ!いまさらいうのも何だけど、あの女、超特大の地雷だったよ。里見さん、被害に遭う前に別れて良かったよ。あの気取った商社マンはこれから地獄を見るんだよ。ザマーミロ」
「モコまで・・・・・」
「だぁってさあ、あの女結婚してもないのに、うちらが徹夜してる仕事場に押し掛けてきてさ!絶対頭おかしいじゃん」
「あの時は夜食のお弁当と着替えを持ってきてくれたんだよ・・・」
「それがおかしいっての!」
チャラ男が空のジョッキを勢い良く置いた。
「大体ね、お伺いしますがね、里見さん。あの女のこと、本気で好きだったの?」
「マリエちゃん?可愛いし、健康的だし、料理上手いし、良いお嫁さんになりそうだったけど・・・」
「俺は、好きだったかどうかをきいてんの!大体浮気するような女が良いお嫁さんになるかっつーの!」
「・・・それに関しては、僕も悪かったよ。最近忙しくてあまり彼女にかまってあげられなくてさ・・・寂しかったんだろ・・・」
「あ~あ~」
チャラ男がわざとらしいため息をついた。
「・・・確かにあんたが悪いわ」
「・・・・やっぱり?」
「里見さん、前々から聞こうと思ってたけど、あんた、自分が何て言われてるか知ってんの?それともほんとに天然なの?」
「何だよ。何がだよ!」
チャラ男は僕の首に腕を回して締め上げるまねをしてきた。
「見て下さい。この顔!この身長!この無難なファッションセンス!下手なアイドルも顔負けの爽やかイケメン」
「ちょっ、何それ。やめろよ」
周りのテーブルの客からも視線を感じて顔が熱くなる。チャラ男はますますデカイ声で続けた。
「しか~も!名門CIT卒の高給取り!それを鼻にかけない、ヤサ男!これぞこれぞ、R-bitでお婿にしたい男NO.1!」
「・・・誰が・・・」
「しかあ~し!その正体は!?ヘビー級のオタク!そこいらのオタクもひれ伏すキングオブオタク!」
僕は反論するのも嫌になってただチャラ男を睨んでいた。
「ちょっと待って。君のオタクの定義って何?」
代わりにネオが反論の口火を切った。
「そうですお。里見さんはフォートラン好きだからマニアックに見えるけど、うちらみたく、アニメに興味もないし、なんかオタクって感じじゃありません」
「そうだ!チャラ男!お前が里見さんの悪口言わないでよ!自分はチャラいチャラ男のくせに!」
「はっはー!そうよ?俺は、見た目もチャラ男!心もチャラ男!歩く姿もチャラッチャラ!根っからの遊び人なの!だから結婚したい地雷女なんか寄ってこんの!それに引き換えこの男は、年代問わず独身女子社員全員から狙われ、はては取引先の重役にまでうちの娘の婿にって目をつけられてるっつーのに、来るもの拒まずの優柔不断!本当は女になんか興味ないくせに!」
「何言ってるんだよ!そんなことないさ!」
「じゃあ、休日に女とネズミの国でデートすんのと、一日中部屋にこもってフォートランで遊んでんのと、あんたどっちが好きなの?」
「うっ」
「黙れ!チャラ男!里見さん、気にしないで。チャラ男が言いたいのはね、里見さん、さわやかで優しそうに見えるけど実はストイックな仕事人間でしょ。里見さんに寄ってくる女の子はそのギャップについて行けないんだよね。でも別に悪い事じゃないじゃん。今は仕事が波に乗ってる時じゃん。仕事にのめり込んで何が悪いの。そのうち、素のままの里見さんを好きになってくれる人が現れるよ。モコだって無理するのやめてから、ほんとのモコを分かってくれる人に巡り会えたんだよ。里見さんが出会えないわけないじゃん」
うっとりした顔で語るモコを前に男共はビールを垂れ流さんばかりにあんぐりと口を開けていた。
「・・・・・モコさん・・・・キモいですお」
「モコ!お前!やっと彼氏ができたからって!里見さんを慰めるんじゃねーよ!里見さんに失礼だろ!モコの分際で!!」
「同意。モコ。取り急ぎ、里見さんに謝れ」
「何よ!何だよ!!クズ共に言われたくねーよ!お前らなんか一生結婚できないんだ!クズ!」
「落ち着け!落ち着けよお前ら・・。モコ、ありがとう。どうか僕の分まで幸せになってくれ。僕は当分、仕事に打ち込むよ」
「っつーことで!改めまして~里見さんの厄落としを祝ってカンパ~イ!」
その日は、終電まで飲み食いした。
飲み過ぎて気分が悪くなった僕をチャラ男がアパートまで送ってくれた。
そもそもチャラ男は飲み会の後はいつも僕の部屋に泊まる。
そもそもチャラ男は酒を飲まない。
なんで飲み会好きなのか不思議だが、本人曰くパーティ好きの寂しがり屋なんだそうだ。
チャラ男は帰国子女で、いつもラッパーみたいな恰好をしているし、敬語がおかしいからチャラく見えるが、中身はそんなにチャラくない。プログラミングは一流だし、気配り上手で皆を取りまとめる能力に長けている。少なくとも僕より人を見る目がある。そのチャラ男に恋愛不向き体質を指摘され、僕は少なからずショックを受けていた。僕は帰り道ずっと愚痴を言い続けいていた。
「好きかどうか何て分かんないさ」
「ハイハイ。さあ着いたっすよ。鍵は?」
「僕はね、家族が欲しいの!悪いか!」
「だからちゃんと相手を選んで欲しいんでしょ~が。それより寝る前に水飲んだ方がいいっすよ」
「もういい!」
僕はチャラ男を振り払って、ベッドにダイブした。
「スーツ、シワになりますよ~」
ベルトの金具をいじられて僕は飛び起きた。
「自分で脱ぐ!」
「ついでにコンタクト外して」
チャラ男に差し出されティッシュに、外したコンタクトを包んでゴミ箱に捨てる。その間にチャラ男は勝手にクローゼットを開けて僕のTシャツと短パンを投げてよこした。僕は脱いだズボンとワイシャツをチャラ男に投げつけた。チャラ男は僕のジャケットを、形を整えながらハンガーにかけている。こいつ、爬虫類系の顔した毒舌男じゃなければ、良い嫁になれるのに。
「里見さん、パソコン借りますよ~」
「勝手にしろ」
PCは2台あるがチャラ男はいつもネット用のラップトップしかいじらない。チャラ男がラップトップをコーヒーテーブルの上に置くのが見える。スクリーンセーバー画像のゴールデンレトリバーがこちらに笑いかけている。
「犬が欲しい」
僕は毛布にくるまってつぶやいた。
「早く結婚して家を建てて犬を飼うんだ・・・彼女も犬が好きだったのに・・・・」
「まさかそんな理由であの女とつきあってたとか?」
「・・・・・」
「犬ぐらい、飼えばいいじゃないっすか!わざわざ結婚しなくても」
「一人暮らしで犬なんか・・・・」
いつの間にか眠りに落ちていた。
明け方、目が覚めた時にはチャラ男はいなくなっていた。奴なりに気を使ったのかもしれなかった。
ユニットリーダーになってから、週末を一人で過ごす事はほとんどなかった。放っておくとろくに食事もしないメンバーを食事に連れ出したり、家で宅飲みしたりして、いつもメンバーのうち誰かしらが僕の部屋に来てだべっていた。彼女とつきあいだしてから休みのうち一日はデートにあてるようにしていたが、彼女もそんなつきあい方は嫌だっただろう。フられるのは当然だ。
今週末は、ネオとヤルヲはそれぞれ大事なイベントがあると言っていたし、モコはできたばかりの彼とデートだ。チャラ男は遊び相手には事欠かない。僕は久々に完全に一人で週末を過ごした。家から一歩もでず、ネットにすら入らず、ひたすらフォートランと向き合うという退廃的生活を堪能した。
「ではご自分で触ってみて下さい。いかがですか?」
仕事が好きだ。
特に納品時の快感は格別だ。
顧客がみんな目をキラキラさせて僕を見てくれる。教祖にでもなった気分になる。
「すごいよ~。里見君!期待以上だよ!これがうちのHPだなんて信じられないよ」
「HPじゃありません。社長。ホワイドボード。WBです」
「いやあ、そうだった!とにかくありがとう!これで売り上げUPも間違いなしだ」
「里見さぁ~ん。ありがとう。里見さんってホントすごいよね~~」
「気に入っていただけて、僕も嬉しいです。では、実際使ってみて、使いにくいところなどありましたらご連絡下さいね。僕はこれで失礼します」
「え~里見さん。もう帰っちゃうのぉ?そばにいてくれなきゃ分かんないよぅ」
「大丈夫ですよ。初めての人でもすぐ使えるのがWBです。とにかく色々と触ってみて下さい。また感想を伺いに上がります」
「また来てね~。絶対だよー」
「ありがとうございます。それでは」
そのまま帰りかけたが、さっきからどうしても気になる人がいる。
出口近くの席で、眼鏡をかけた若い女の子が一人だけ輪にも加わらず、眉間に皺をよせてキーボードを叩いている。
僕は通りがかりにモニターを覗いた。
「何かお困りですか?」
その子は一瞬で真っ赤になって首をすくめた。
「え!大丈夫です。それに、ヨソのソフトですから」
「ああ、その表計算で簿記付けてたら大変じゃないですか。ちょっと見てもよろしいでしょうか。作業を自動化しましょう」
後ろからマウスに手を伸ばすと、彼女は慌てて手を引っ込めた。
「ダメ~!里見さん!新人は甘やかしちゃダメなの!」
お局さんらしい人がデスクの向こうから声を張り上げる。
「そうだよ。今日は金曜日だから、里見君、早く帰してあげなきゃ」
「すぐできますよ。ところで社長、こういう伝票や給与明細なんかもWBにできますけど、どうでしょう、この際うちの製品で一括管理ってのは?」
僕はモニター越しに社長を見つめてニッコリした。
「社長~!」
社長の周りを取り囲む女子社員はみんな手を組んで瞳を潤ませている。
会社に戻るために快速に飛び乗った時は6時15分をまわっていた。今日は6時半から部下と飲みに行く約束をしている。実は3週間前から今日と同じような状況で3回も約束を破っている。さすがに今日遅れるのはマズい。オフィスに戻ったらすぐ退勤できるように、スマホから業務報告を入れる。
それにしてもスマホの操作はいつまで経っても慣れない。ケータイでメールするのも苦手だったがスマホはもっと嫌いだ。皆、なんでこんな物好んで使うのだ?大体、業界の統計結果ほど、本当にスマホ率って高いのか?僕は周りを見渡した。
斜め前の座席に座っているスーツ姿の男性はスマホどころか、雑誌を読んでいた。僕はちょっとニヤけてしまった。僕も紙媒体が好きだからだけでなく、雑誌の表紙に我らがボスの顔がアップで載っていたからだ。テッド・ローゼンバーグ、28才にして年商数百億のIT企業R-bitのCOOである。
数ヶ月前、僕はその本人と握手した。
それまで務めていた会社NYANCがR-bitに買収され、統合記念パーティで会ったのである。実物も写真のテッドも同じように屈託ない笑顔をしていて、ビジネスマンというよりTVタレントのようだった。雑誌の表紙からするとテッドは今年の世界に影響力のある人間100人に選ばれたらしい。
僕もちょっとだけ鼻が高い。
カスタマーサポート部とはいえ、僕もR-bitの社員だ。
我が社のビジネス統合ソフトWBはオンラインストレージにビジネスでよく使うソフトの機能が付いている。社内掲示板を始め、会議のプレゼンも財務管理もWB一つでできる。さらに取引先への広告もWB上でできしまう。大抵の事業者自分のWBを持っていないと営業にならないという理由でWBを購入する。WBは会社の顔になるため、セットアップを依頼してくる顧客は多い。僕達カスタマーサポートはそれぞれの企業にあわせてWBをカスタマイズしている。
「里見さん、お疲れ様でした!」
オフィスに着くとすでに帰り支度をしたモコが出迎えてくれた。
僕は伸びをするようにVサインを高く掲げた。
「修正なし!簿記システム追加~!それは来週ね」
「やっぱりね~。モノを見るとみんなもっと欲しくなるんだよね」
「モコのおかげだよ。女子社員が多い会社だからちょっと可愛いデザインで正解だった」
「里見さん!」
ジャケットを羽織りながらチャラ男が近づいて来た。
案の定、怒っている。
「遅いっす。遅いっすよ。予約7時からなんすよ。すぐ出ますよ!」
「悪かった。今日こそはちゃんと行くから。着替えていいか?」
僕はスーツで飲み屋には行きたくない性分だ。
「だぁ~め!ダメダメ!6時半に約束したのに遅れたのはアナタ!どおせ、クライアントとくっちゃべってて遅くなったんでしょ!」
チャラ男は僕から営業用ブリーフケースを取り上げて、そのまま自分のロッカーに放り込んでしまった。
「・・・・仕事を取って来たって言って欲しいね。」
「そうだよ、チャラ男!里見さんに労いの言葉はないの!?」
「ハイハイ。里見さんお疲れ様でした~!じゃあ行きますよ!ネオさん、仕事はもういいから早く立って!ちょっと、ヤルヲ、ネオのコート取って!そのコウモリ合羽みたいなやつ!」
ネオが眼鏡を光らせて立ち上がる。
「・・・・・コウモリィ・・・?」
「コウモリ!コウモリ!コウモリッ!」
ネオはチャラ男を追いかけて外に誘導されて行った。
「チャラ男サン、今日はやけに張り切ってるんだお」
そう言うヤルヲも出かける準備万端だ。
「しょうがないなあ。3週間働き詰めだったし、今日こそガッツリ飲むか」
ちなみにユニットメンバーの呼び名は各自決めた社内アカウントによるもので、僕がつけたあだ名ではない。
いつもは会社の最寄り駅近くで飲む事が多いが、今日はチャラ男がぜひ行ってみたいという、4駅離れた新規オープンの多国籍料理の店に向かった。隠れ家的雰囲気が売りの店らしく、お目当ての店はなかなかみつからなかった。
「ちょっおっと~!チャラ男!道間違えてんじゃないの!」
「あれ~、路地一本間違えた?」
チャラ男はスマホの画面を見ながらうろうろしだした。
「自分が行ったことのない店にうちら誘うなんて、チャラ男さんらしくないお」
「準備不足。しかも人の仕事を中断させておきながらこのていたらく。幹事失格だ」
「オープンしたてで、マップに載ってないんだろ。手分けして探そうか。何て店だっけ?チャラ男?」
件のチャラ男は僕達の言うことを全く聞いていない。
「この辺のはずなんすけどねー・・・・・あ、里見さん、こっちみたいっす」
「ちょっと待てって、チャラ男・・・・」
チャラ男を追いかけて細い路地に駆け込むと、道の真ん中に突っ立っているチャラ男の背中にぶつかりそうになった。
「チャラ男?」
チャラ男はぽかんとして前を見つめていた。僕はチャラ男の視線の先に目をやった。腕を組んだカップルが小洒落たフレンチレストランに入って行くところだった。女の子は手にライトブルーの小さな紙袋を下げている。
「あ!里見さん!ごめん、やっぱ、路地一本向こうだわ!」
チャラ男のデカイ声のせいでカップルが僕らに気がついて振り向いた。女の子は僕を見て硬直した。
「・・・・晴人君」
「マリエちゃん?」
僕はどうやら恋人の浮気現場に遭遇するという修羅場にいるらしかった。
こういう場面では僕はどういう態度を取れば良いんだ?
まるで他人事のように言葉が出てこない。
彼女も同じ状態らしく僕らは見つめ合って立ち尽くしていた。
代わりに彼女の連れの男がススッと近寄って来た。僕より微妙に背が高く、上から下まで高そうなブランド品で固めている奴だった。
「君が里見君ですか。初めまして僕は鷹藤商事の山下と言います。マリエちゃんを責めないで下さい。マリエちゃんに言い寄ったのは僕の方です。近いうちにちゃんと説明するつもりでした」
まるで営業トークのノリだったが、僕だってこんな所で事を荒立てたくない。
「そういうことでしたら今日はこんな場所ですし、日を改めて・・・・」
バシッ!
一瞬何が起こったか分からなかったが、彼女に紙袋を投げつけられたのだった。袋の角がモロに顔にヒットした。
「痛っ~!」
「いっつもそうなのよぉ~!あんたは~~っ!」
彼女は僕が今まで見た事のない形相をしていた。
なんで?
なんで、ここで僕が怒られるんだ?
「何すんだよ。てめぇ!」
チャラ男が罵声を飛ばしたので僕の方が驚いた。
「大体、お前にストーカーされて迷惑してんだよ、こっちは!これ以上里見さんにつきまとったら訴えるぞ!」
「今の決定的瞬間バッチリ撮っちゃったお。」
いつの間にかヤルヲがカメラを構えて横に立っていた。
「ヤダ!里見さん、血が出てる!」
「今のは傷害罪が成立する。通報する?」
「何よ!あんたたち!」
うちの奴らが調子に乗ってある事ない事騒ぎだしたものだから、彼女いや元彼女もますますヒステリックにわめきだした。僕は彼女のそんな姿を見たショックより、この場をどうやって治めるかを考えていた。しかし山下君とやらは僕より修羅場に慣れていたようだ。
「マリエちゃん、行こ」
山下君とやらは、あっさりと元彼女の肩を抱いて駅の方向に歩み去った。
取り残された僕達は野次馬の奇異の目を避けて、慌てて近くの居酒屋チェーン店に逃げ込んだ。
「さあ~って!里見さんのー 厄落としを祝ってかんパーイ!」
「お前ら、ホント、むかつくな」
「なんでえ~?あんな女、別れて正解じゃ~ん」
チャラ男は本当に嬉しそうにニヤついている。
むかつく。
そもそもこいつがあの時騒ぎ立てなければ、穏便に済ませられたのに。
「そうだよ!いまさらいうのも何だけど、あの女、超特大の地雷だったよ。里見さん、被害に遭う前に別れて良かったよ。あの気取った商社マンはこれから地獄を見るんだよ。ザマーミロ」
「モコまで・・・・・」
「だぁってさあ、あの女結婚してもないのに、うちらが徹夜してる仕事場に押し掛けてきてさ!絶対頭おかしいじゃん」
「あの時は夜食のお弁当と着替えを持ってきてくれたんだよ・・・」
「それがおかしいっての!」
チャラ男が空のジョッキを勢い良く置いた。
「大体ね、お伺いしますがね、里見さん。あの女のこと、本気で好きだったの?」
「マリエちゃん?可愛いし、健康的だし、料理上手いし、良いお嫁さんになりそうだったけど・・・」
「俺は、好きだったかどうかをきいてんの!大体浮気するような女が良いお嫁さんになるかっつーの!」
「・・・それに関しては、僕も悪かったよ。最近忙しくてあまり彼女にかまってあげられなくてさ・・・寂しかったんだろ・・・」
「あ~あ~」
チャラ男がわざとらしいため息をついた。
「・・・確かにあんたが悪いわ」
「・・・・やっぱり?」
「里見さん、前々から聞こうと思ってたけど、あんた、自分が何て言われてるか知ってんの?それともほんとに天然なの?」
「何だよ。何がだよ!」
チャラ男は僕の首に腕を回して締め上げるまねをしてきた。
「見て下さい。この顔!この身長!この無難なファッションセンス!下手なアイドルも顔負けの爽やかイケメン」
「ちょっ、何それ。やめろよ」
周りのテーブルの客からも視線を感じて顔が熱くなる。チャラ男はますますデカイ声で続けた。
「しか~も!名門CIT卒の高給取り!それを鼻にかけない、ヤサ男!これぞこれぞ、R-bitでお婿にしたい男NO.1!」
「・・・誰が・・・」
「しかあ~し!その正体は!?ヘビー級のオタク!そこいらのオタクもひれ伏すキングオブオタク!」
僕は反論するのも嫌になってただチャラ男を睨んでいた。
「ちょっと待って。君のオタクの定義って何?」
代わりにネオが反論の口火を切った。
「そうですお。里見さんはフォートラン好きだからマニアックに見えるけど、うちらみたく、アニメに興味もないし、なんかオタクって感じじゃありません」
「そうだ!チャラ男!お前が里見さんの悪口言わないでよ!自分はチャラいチャラ男のくせに!」
「はっはー!そうよ?俺は、見た目もチャラ男!心もチャラ男!歩く姿もチャラッチャラ!根っからの遊び人なの!だから結婚したい地雷女なんか寄ってこんの!それに引き換えこの男は、年代問わず独身女子社員全員から狙われ、はては取引先の重役にまでうちの娘の婿にって目をつけられてるっつーのに、来るもの拒まずの優柔不断!本当は女になんか興味ないくせに!」
「何言ってるんだよ!そんなことないさ!」
「じゃあ、休日に女とネズミの国でデートすんのと、一日中部屋にこもってフォートランで遊んでんのと、あんたどっちが好きなの?」
「うっ」
「黙れ!チャラ男!里見さん、気にしないで。チャラ男が言いたいのはね、里見さん、さわやかで優しそうに見えるけど実はストイックな仕事人間でしょ。里見さんに寄ってくる女の子はそのギャップについて行けないんだよね。でも別に悪い事じゃないじゃん。今は仕事が波に乗ってる時じゃん。仕事にのめり込んで何が悪いの。そのうち、素のままの里見さんを好きになってくれる人が現れるよ。モコだって無理するのやめてから、ほんとのモコを分かってくれる人に巡り会えたんだよ。里見さんが出会えないわけないじゃん」
うっとりした顔で語るモコを前に男共はビールを垂れ流さんばかりにあんぐりと口を開けていた。
「・・・・・モコさん・・・・キモいですお」
「モコ!お前!やっと彼氏ができたからって!里見さんを慰めるんじゃねーよ!里見さんに失礼だろ!モコの分際で!!」
「同意。モコ。取り急ぎ、里見さんに謝れ」
「何よ!何だよ!!クズ共に言われたくねーよ!お前らなんか一生結婚できないんだ!クズ!」
「落ち着け!落ち着けよお前ら・・。モコ、ありがとう。どうか僕の分まで幸せになってくれ。僕は当分、仕事に打ち込むよ」
「っつーことで!改めまして~里見さんの厄落としを祝ってカンパ~イ!」
その日は、終電まで飲み食いした。
飲み過ぎて気分が悪くなった僕をチャラ男がアパートまで送ってくれた。
そもそもチャラ男は飲み会の後はいつも僕の部屋に泊まる。
そもそもチャラ男は酒を飲まない。
なんで飲み会好きなのか不思議だが、本人曰くパーティ好きの寂しがり屋なんだそうだ。
チャラ男は帰国子女で、いつもラッパーみたいな恰好をしているし、敬語がおかしいからチャラく見えるが、中身はそんなにチャラくない。プログラミングは一流だし、気配り上手で皆を取りまとめる能力に長けている。少なくとも僕より人を見る目がある。そのチャラ男に恋愛不向き体質を指摘され、僕は少なからずショックを受けていた。僕は帰り道ずっと愚痴を言い続けいていた。
「好きかどうか何て分かんないさ」
「ハイハイ。さあ着いたっすよ。鍵は?」
「僕はね、家族が欲しいの!悪いか!」
「だからちゃんと相手を選んで欲しいんでしょ~が。それより寝る前に水飲んだ方がいいっすよ」
「もういい!」
僕はチャラ男を振り払って、ベッドにダイブした。
「スーツ、シワになりますよ~」
ベルトの金具をいじられて僕は飛び起きた。
「自分で脱ぐ!」
「ついでにコンタクト外して」
チャラ男に差し出されティッシュに、外したコンタクトを包んでゴミ箱に捨てる。その間にチャラ男は勝手にクローゼットを開けて僕のTシャツと短パンを投げてよこした。僕は脱いだズボンとワイシャツをチャラ男に投げつけた。チャラ男は僕のジャケットを、形を整えながらハンガーにかけている。こいつ、爬虫類系の顔した毒舌男じゃなければ、良い嫁になれるのに。
「里見さん、パソコン借りますよ~」
「勝手にしろ」
PCは2台あるがチャラ男はいつもネット用のラップトップしかいじらない。チャラ男がラップトップをコーヒーテーブルの上に置くのが見える。スクリーンセーバー画像のゴールデンレトリバーがこちらに笑いかけている。
「犬が欲しい」
僕は毛布にくるまってつぶやいた。
「早く結婚して家を建てて犬を飼うんだ・・・彼女も犬が好きだったのに・・・・」
「まさかそんな理由であの女とつきあってたとか?」
「・・・・・」
「犬ぐらい、飼えばいいじゃないっすか!わざわざ結婚しなくても」
「一人暮らしで犬なんか・・・・」
いつの間にか眠りに落ちていた。
明け方、目が覚めた時にはチャラ男はいなくなっていた。奴なりに気を使ったのかもしれなかった。
ユニットリーダーになってから、週末を一人で過ごす事はほとんどなかった。放っておくとろくに食事もしないメンバーを食事に連れ出したり、家で宅飲みしたりして、いつもメンバーのうち誰かしらが僕の部屋に来てだべっていた。彼女とつきあいだしてから休みのうち一日はデートにあてるようにしていたが、彼女もそんなつきあい方は嫌だっただろう。フられるのは当然だ。
今週末は、ネオとヤルヲはそれぞれ大事なイベントがあると言っていたし、モコはできたばかりの彼とデートだ。チャラ男は遊び相手には事欠かない。僕は久々に完全に一人で週末を過ごした。家から一歩もでず、ネットにすら入らず、ひたすらフォートランと向き合うという退廃的生活を堪能した。
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もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
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