浅井湯舟

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金 




今日は飲む、大いに飲むのだ。景気付けのクライナーを2本飲み干して、俺はほろ酔い気分でバーに入った。女は居なかった。でもそこのお酒は俺好みであったので少し飲むことにした。
マスターにハイボールを頼んだ、もちろんウイスキーはいつものフロムザバレル。家で注ぐといつも垂れてしまうあのボトルを慣れた手つきで彼は棒状の氷が入ったグラスに注ぎ入れた。氷に黄金の液体が流れ込み艶を帯びた。グラスの二倍はありそうなバースプーンを俺が普段ペンを扱うより簡単に回し始めた。グラスと氷がぶつかる甲高い音が静かな店内に響いた。回り続ける氷に瓶のウィルキンソンが注がれる。氷を避け、黄金の液に直接注がれ。アルコール特有の模様がグラスの中を駆け回る。俺は頬杖をつきながらそれを眺めていた。
マスターからクリームチーズとクラッカーとその薄い黄金色のハイボールが渡された。俺はそれを飲んで、これからどこへ繰り出すか考えていた。クラブか、
安い若人が行くバーか、交差点でうろうろしてみるか、気づけば俺の手にはウィンストンの赤いソフトの煙草が握られていて、先端をプチプチ言わせながら煙を上げていた。俺が黄昏に浸っていると隣に人が座った。それは女性だった。
長い黒い髪の毛を靡かせて、上にはウールの大きめなコートを着ていた。背は低そうで、中に着ていたタイトなセーターは俺の肉欲を誘っていたようだ。
もう話しかけられずにはいられなかった。「一緒にどうですか?」
「今ちょうど探してたんです。」
酒を飲んで口が上手になると自分を僕と呼ぶ様になってふざけた冗談ばかり言うんだ。勉強は無駄に出来た僕の冗談はどこか知性があって、目上の方が笑ってくれる。「名前を聞いても?」
「美由って言います」
僕より4年年上の様だ。
僕は更にそそった。
彼女はマルボロメンソールに安いライターで火をつけて僕と同じ灰皿に灰を落とす。
僕はほろ赤くなった顔で彼女と灰皿の上にある細く小さい手を眺めていた。
「年上だったんですね。生意気でした。ぼく」
「もう良いよ笑
マスター、山崎の梅酒と
ピスタチオ2人分」
彼女の元にも金色に輝くロックグラスが置かれていた。彼女の艶やかな長い髪は、店の照明のせいで金色にも見えた。
話も弾んで、僕の冗談もますます加速して。いつか官能的な話になっていった。
マスターの顔が渋くなり始めたので僕たちは店を出ることにした。
「このまま持って帰っちゃおっかな?
家近いよ?」
「いいよ、持ち帰えられちゃおうかな」
今日は大当たりらしい。
タッチパネルで5000円くらいの僕の別荘に連れて行った。
慣れた手つきでダイヤルでちょうどいい明るさにする彼女を見て、大分回っていた僕はぼーっとしていた。
「私先はいるね。待ってて」
僕は酔うと機能を失うのだ。それを忘れていた。酔いもそのせいで覚めたくらい冷静になった。急に部屋が肌寒く感じられた。もう面倒くさい。寝てしまうか。
そんなことを考えていたらもう布団の上で横になってた。
何時間寝ただろう。もう朝だった。
部屋に差し込む太陽のせいで目が覚めた。彼女は居なかった。ラインもインスタも忘れていた。
ベッドの木製の小さいテーブルの上には、僕が外した金色のネックレスが朝日と共に輝いていた。
僕は煙草に火をつけた。

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