レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆

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(うーん。よく寝た……)

 新しい朝を迎えた。

 今日はいよいよ義姉と初対面。緊張はするが、楽しみな気分の方が勝つ。


 起こしに来たシンリーに着替えさせてもらう。
 
 本日の装いはクリーム色が基調だ。所々の黄緑色がアクセント。
 胸ポケットには、何故かラベンダー色のハンカチーフが入っていた。

 自分の装いに鏡の前で満足気にうなずいた。

 今回からきちんと鏡で確認する様にしたのだ。鏡に映る姿は、相変わらず妖精のように神秘的な容姿だ。

 左耳には、誕生日プレゼントのイヤーカフをつけている。
 両親曰く、強力な守りの術式を組み込んでいるらしい。出来れば毎日身に付けて欲しいと懇願された為だ。

「大変お似合いでございます、レイルーク様」
「えへへ、あいがと」

 相手は子供とはいえ女の子だ。これだけかっこよければ邪険にはされないだろう。
 レイルークは自分の神秘的な外見をフルに活用しようと画策していた。

「朝食はユリア様もご同席されるそうです。楽しみでございますね」

 緊張させまいとしているのだろう。何事もない事の様に笑顔で言うシンリーに、レイルークも笑顔で返事をした。

「うん! ユリアねーたまにカッコいいおとうとっておもってもらえるようがんばるよ。まじゅはこのふく、よごしゃないようにきをつけてたべないとね!」
「まあっレイルーク様ったら。ふふっ」

 程よくリラックスしながらダイニングへと向かった。



 ***



「おはようレイ」
「おお! レイおはよう! 待っていたよ!!」
「おはよーごじゃーます」

 ダイニングには既に両親が自分の席に座っているが食事をしている様子はない。レイルークが来るのを待っていたようだ。

「もうすぐユリアも来るよ! 昨日はなかなか寝付けなかった様でね! 少しお寝坊さんになってしまったが、許してやって欲しい!!」

 レイルークはうなずいてシンリーに自分の席に座らせてもらう。


 しばらくするとリビングの扉がノックされ、勢いよく扉が開かれた。

「おはようございまーす! ユリアお嬢ちゃんをお連れしました~」

 少し垢抜けた感じの青年が入ってきた。

「これランディ!! 旦那様の返事を待たずに扉を開ける者があるか!」

 レオナルドの執事であるセバスが、ランディと呼んだ人に近づいて頭を叩いた。

「いってぇ! 悪かったってセバス爺ちゃん」
「仕事中は爺ちゃんと呼ぶなと言っておるだろう馬鹿者!」

 再び頭を叩かれている。

「旦那様、奥様、並びにレイルーク様。お騒がせして大変申し訳ございません」

 セバスは深々と頭を下げた。ランディは軽く会釈しただけだ。
 セバスはすかさずランディの頭を掴んで下げさせた。

 そんなやり取りを見ていたルシータは声を上げて笑い、レオナルドは微笑ましく声を掛けた。

「セバス、そんなに気にしなくて良い。ランディは私の護衛をしっかりと務めてくれている。屋敷の中では畏まらなくて良いとランディに言ったのは私だからな」
「ですが、公爵家の使用人として大問題です。我が孫ながら何とも不甲斐ない……!」
「えー信用無いなー。外では結構ちゃんとやってるって! セバス爺…いたっ!」
「お前は坊ちゃ……旦那様に甘え過ぎだ!!」

 レイルークは呆気に取られながら二人を眺めた。

(この人が父様の側近。初めて見た。髪と瞳の色がセバス爺やと同じで何だか祖父と孫というより、親子みたいだ。父様と同じ歳くらいのイケメンだけど言動が何だかチャラいな)

「わかった! わかったから! ちゃんとやる! ちゃんとやるから叩くなって!」

 ランディは咳払いをすると、顔つきがガラリと変わった。

「……失礼致しました。改めましてユリア様をお連れ致しました。お通ししてもよろしいでしょうか、レオナルド様」
「ああ。通してくれ」

 急に真面目になったランディに連れられて、黄緑色のドレスを身に纏った女の子がダイニングに入って来た。

 ルシータと同じ長い金髪に紫の瞳。子供特有のスラリとした体型。


「……わあ、かわいい……」


 思わず呟いてしまった。


 それ位にとても整った綺麗な顔。
 ぱっちりとした瞳がこちらを見て僅かに目を見張った。かと思えば顔を赤らめてそっぽを向かれた。
 ……今の呟きが聞こえていたのかもしれない。

 ルシータは立ち上がってユリアに近づくとその肩を軽く叩いた。

「おはようユリア! 昨日の今日で心労が残っているかもしれないが、今日から心機一転新しい生活に早く慣れてくれると嬉しい!! それでは改めて新しい家族として自己紹介してくれるか! ユリア!!」

 ユリアは小さく頷いた。

「……初めまして。ユリアと申します。……これからどうぞ宜しくお願いします…」

 少し元気がないが、耳当たりのいい声だ。
 ユリアが頭を下げる。真っ直ぐで綺麗な金髪がさらりと流れた。

 普通貴族の女性ならカーテシーで挨拶するのだが、まだ教わっていないようだ。

「うん!! レオとは昨日の内に顔合わせしたからいいとして! さあ! お待ちかねの私の息子を紹介しよう!! おいでっレイルーク!!」

 ルシータに呼ばれたレイルークは椅子から飛び降りてユリアに近づいた。

 近くで見るとますます可愛い。レイルークは今世紀最大の笑顔で挨拶をした。

「はじめまちて。レイルークでしゅ。あたらちぃおねーたまができてうれしーです。よろしくおねがいしましゅ、ユリアおねーたま!」
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