異世界もそんなに悪くない 〜きみと二人きりの異世界生活〜

宮崎世絆

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2 森の中での出会い

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 夢オチならどれほど良かったか。

 しかし、残念ながらこれは紛れもなく現実だ。ならば何とかして生き延びなくてはならない。
 このまま野垂れ死ぬなんて、死んでもごめんだ。

 俺はその場に座り込むと、手に持っていたビジネス鞄を開けた。
 何か役に立つものは持っていなかったか、中を探ってみる。

 入っていたのはノートパソコンにモバイル充電器。今日は夜に雨が降る予報だったので、折り畳み傘。

 鞄以外の持ち物はズボンに入れていた携帯。
 たったこれだけだった。

「ハア……こんな事なら家に常備してある菓子パンでも入れておけば良かった……」

 過去の自分を恨みながらも俺は重い腰を上げる。とりあえず川か、願わくば集落を探す事にした。


 太陽らしき天体があるから、大凡の方角は知ることができる。

 まず、一メートル程度のまっすぐな枝を見つける。それを平らな場所に垂直に立て、枝の影の一番高いところの地面に印を付け、十~十五分まって再度影の一番上の部分に印を付ける。
 最初の印は二つ目の印の西にあるはずだ。したがって最初の印が自分の左を西、二つ目の印が右で東にくるように体を向ければ、俺は北を向いている。

 この世界が地球と同じ様な天体であれば、とりあえずこれで方角は正しい筈。
 無闇に歩き回るのは危険だから、暫く同じ方角を常に進む事にしよう。

 北側はやや登りになっているから、逆の南へ。

 定期的に目印を付けるのを忘れずに……。

「おじさん、こんな所で何しているの?」
「どうっわゎあああぁぁーー!!!!」


 背後からいきなり声をかけられた俺は、自分の心臓が飛び出たんじゃないかと思ったくらい驚いた。

「だ、だ、だ誰だ!?」

 俺は心臓がバクバクしながら慌てて振り向いた。

 そこにはいつの間にか、中学生位の真っ直ぐなシルバーブロンドの髪にコバルトブルーのような青い瞳の綺麗な女の子が、訝しんだ表情で立っていた。

「それはこっちの台詞。こんな山奥に、何か用なの?」
「え、あ、いや。用は全くもって、ないんだけど……」

 少ししどろもどろになりながら俺が答えると、少女は更に訝しんだようだった。……これはマズイ。

「……じゃあ、どこから、どうやって、ここまで来たの? そんな変な軽装な服でこんな山奥に来るなんて。……もしかして貴方、自殺願望者なの?」
「っ違う! 違うって!! えーと。話しても、信じてくれないと思うんだけど……君、聞いてくれる?」
「? まあ、いいけど。手短にお願いね」
「えー……」

 ここで嘘を吐いても仕方がない。それにもし今ここで下手な嘘をついたら、のちのち余計に墓穴を掘りそうな気がしたので、俺は正直に今までの経緯を出来るだけ手短に説明した。


「……えっと、つまり。貴方は異世界人ってこと?」
「うん」
「気が付いたら、ここにいた」
「その通り」
「……異世界から物凄く稀に人がこの世界に迷い込むって言うお話は、御伽噺では聞いた事はあるけど。まさか本当に実在するなんて、びっくり」

「……あの、俺が異世界人って、信じてもらえた……?」
「えっと、まあ……? 確かに、見た事もない道具や山奥には不釣り合いで見た事もない変わった服着てるしね。……うん、分かった。信じてあげる」
「あ、ありがとう!」

 俺はようやく肩の力を、少し抜くことができた。

「あ、俺の名前は牛富海斗。君の名は?」
「ウシトミカイト?」
「あ、いや、カイトでいいよ」
「カイトね。私はスピカ」
「改めて、よろしくスピカ。……で、あのさ。早速で悪いんだけど、どこか近くに集落かあればそこに案内してくれないかな?」
「集落? 集落なんて麓まで降りないと無いよ。今からだと、多分陽が暮れちゃう」
「そ、そうか……」
「異世界人なら、この世界にあてなんて無いでしょう? とりあえず私の家においでよ。ここから結構近いし」
「良いの!?」
「うん。じゃあ早速行こう? こっちだよ」
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