異世界もそんなに悪くない 〜きみと二人きりの異世界生活〜

宮崎世絆

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3 異世界での新しい生活

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 初めて出会った異世界人、スピカに案内されてたどり着いた場所は、俺がいた場所から確かにそう遠くなかった。

 樹林を切り開いて小さな畑を耕しているようだ。地球では見た事もない葉物野菜らしきものが植えられていた。

 そんな畑の先に、木造の小さな建物が見えた。

 こじんまりとした家だが、古民家な感じで俺は好きだな。

「ここが私の家。中へどうぞ!」
「お邪魔します」

 頑丈そうな木の玄関から家に入ると、案外中は広々としていて木造住宅特有の木の香りがほのかに香った。
 ……なんだか、田舎の実家に帰ってきたかの様な。不思議と居心地の良い空間だな。

「どうぞ、ここに座って? 今お茶淹れるから」
「あ、ありがとう」

 食卓テーブルから程近い土間の台所でスピカはお茶を用意してくれている。

 俺は少しソワソワしながら、辺りを見渡した。

「……あの、スピカ。ご家族は?」
「いないよ。前はアルおじいちゃんとベガおばあちゃんと住んでいたんだけど、去年二人とも死んじゃって。今は私一人で住んでいるんだ」

 スピカは俺の前にお茶らしき液体の入った木製のコップを置いてくれた。

 お礼を言いながら俺は恐る恐る初めての異世界のお茶を頂いた。飲んでみると、緑茶みたいな味で結構美味しかった。

 ようやく一息つけた俺はとりあえず、スピカと一緒に住んでいたと言うアルとベガという人達の話を詳しく聞いてみることにした。


 アル爺さんとベガ婆さんはその昔、長い間冒険家をしていたらしい。引退してこの森で気ままに暮らす為にこの家を建てて、何十年も暮らしていたそうだ。

 そして年のかけ離れたスピカ。俺は孫を預かっていたのだろうと勝手に思った。


「今は一人暮らしって事か。……ん? も、森の中女の子一人で!? そんな、危ないだろう!」
「え? 別に大丈夫だよ。獣除けのお香毎日焚いてるから」
「いやいや、もし山賊とか悪党が来たらどうするんだ!?」
「いやいや、そんなの出ないって。ここってかなりの山奥だから、一番近い麓の村までだってかなり距離あるんだ。地形も複雑だし、この辺で人なんて見たの、カイトおじさんが初めてだよ」
「ちょっと待ったぁ!! 俺はまだ二十五だ! 断じておじさんではない!!」
「あ、そうなんだ。でも私十五だから、十歳違いでギリギリお兄さん。かな?」
「ギ、ギリギリ……。うぉほん! とにかく、誰か知り合いとか親戚はいないのか? 親は? きょうだいは?」
「だから、そんなの居ないよ。おじいちゃんおばあちゃんが死んだから。私、一人」
「て、天涯孤独なのか……。えっと、その、……寂しく、なかったか……?」

 思わず、そう呟いてしまった。

 するとスピカはキョトンとした顔をした後、何故か嬉しそうに笑ったんだ。


「じゃあさ、カイトお兄さん。私の、お兄ちゃんになってよ」

「……へ?」



 こうして俺はこの森でスピカと言う名の少女と、兄妹として一緒に暮らすことになった。
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