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7 二人一緒なら
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何とか泣き止んだスピカと共に、穴だらけのキラーベアーをその場で二人がかりで解体して、切り分けた肉を木の葉で丁寧に包んだ。
「これだけあれば、麓の村に売りに行ってもいいかもな。早速明日にでも一緒に行こうか?」
「うん!」
「よし、じゃあスピカ。この大穴を魔法で……」
塞いでくれるか? と言いかけた時、僅かに地響きが聞こえた。
「ん? 地震か?」
音は段々と大きくなってくる。地震にしては何だか様子がおかしい。何かが、迫って来るような……なんとも言い難い不気味なその音に、スピカも不安そうに俺の腕にしがみついてきた。
「な、何? この音」
「……なあ、この音……。何だかこの穴の下から聞こえてないか?」
俺達が、スピカが開けた大穴に目を向けた瞬間。
地面が一層大きく揺れ、突如大穴から間欠泉の様に、轟音と共に勢いよく熱湯が噴き出してきた。
「きゃああ!!」
「スピカ!!」
俺は咄嗟にスピカを抱き上げて大穴から全速力で逃げた。
少し離れた安全な場所まで逃げてそこから注視していると、段々とお湯の勢いは弱まり、やがて大穴はちょっとした池の様になった。
池から濛々と湯けむりが立ち昇っている。それに僅かに硫黄の匂い…正確には硫化水素の匂いがする。卵が腐った匂い、あれだ。
「……これって、もしかしなくても、温泉。か?」
俺は念の為お湯に小枝を入れ、暫くして取り出して小枝を触ってみる。少し熱めだが、人が入れない温度ではないようだ。
「おいおい……ここはいずれ秘湯の温泉地に化ける、かもしれないぞ……」
長らく封印されていた、俺のアイデンティティが騒ぎ出した。
早速俺はスピカにお願いして、大地の魔法を使って俺の指示通りに岩を大穴に敷き詰めてもらった。
そして瞬く間に、森の中なのにそれはそれは見事な露天風呂が出来上がった。
「……凄いな。完全に露天風呂だ。しかも、お客を呼べるくらいにクオリティ高!」
もはやこれは旅館業やるしかないのでは……?
近くに宿屋を造ったら、結構流行るかもしれない。名付けて『キラーベアーの湯』ってのはどうだろう? ……客からしたら意味が分からないか。なら、オーソドックスに『秘湯、美肌の湯』でどうだ。スピカが看板娘。それで俺が……。
「ね、お兄ちゃん、せっかくだし一緒に入ろっか!」
「ばんとうやります?!」
「あ、でもちょっと辺りが暗くなってきたね。待ってて灯り取ってくる!」
そう言うと俺の返答を待たずして、スピカは猛スピードで森を駆けていった。
暫くしてスピカは提灯の様な灯りと、タオルや獣除けのお香やらを入れた籠を持って直ぐに戻って来た。
無我夢中で逃げてたから気が付かなかったが、この露天風呂は家から結構近かったようだ。
「こんな大っきなお風呂、私初めて! ね、早く一緒に入ろ!」
そう言っていきなりスピカが自分の服を脱ぎ始めたので俺は慌てて後ろを向いた。
「ば、馬鹿! いきなり脱ぐんじゃない!!」
「えー? ここにはお兄ちゃんしかいないんだし、別にいいじゃない。……あ、ちょっと熱いけど、いいお湯だよ! ほら、お兄ちゃんも早くおいでよ。すっっごく気持ちいいよ!!」
そっとスピカを見ると、既に肩まで浸かっていた。
よほど気持ちいいのか頬を少し赤らめ、目を閉じて恍惚とした顔をしていた。
「ハア……。気持ちいい……」
……俺達は兄妹。俺達は兄妹。俺達は、一緒に風呂に入る程、仲の良い、兄妹……!!
無理矢理悟りを開いた俺は、スピカから見えない位置で服を脱ぐと、とりあえず腰にタオルを巻いてスピカを意識しないよう気をつけながら、ゆっくりと温泉に浸かった。
少し熱めのお湯が全身に染み渡る。俺は思わず叫んでいた。
「かあぁーーっ! 気っ持ちいいーー!!」
「ねー!!」
つい先程死にかけた俺は、途轍もない解放感に包まれた。
肩の先までお湯に浸かると、自然と溜め息が漏れた。
「ああ……。これは、マジでやるしかない……秘湯の温泉宿……」
「え? お兄ちゃん、この温泉で旅館開くの?」
「ダメかな?」
「ううん、すっごくいいと思う! だってこの温泉のお湯ね、入ってから何だか肌がすべすべするんだよ? ね、触って見て?」
「お兄ちゃんもすべすべだから大丈夫っ!!」
スピカの火照った艶かしい姿を一瞬見てしまい、慌てて視線を上へと向けた。
丁度森が少し開けた場所に温泉が湧き出たようで、空を見上げてみると既に日が暮れて、綺麗な満月の青い月が見えていた。
地球の月の色とは全然違うけれど、とても美しいコバルトブルーの月。
そんな月を見上げていたら、ある思いが心を締め付けて。
俺は独り言のようにつぶやいたんだ。
「月が、綺麗ですね」
「うん! とっても綺麗だね! でも何で敬語?」
大切な妹。今はそれで良い。
美しい自然を眺めながら、大切な人と一緒に温泉に入ってのんびりと過ごす。何てこの上なく幸せなことか。
だから、俺はやっぱりこう思うんだ。『異世界もそんなに悪くない』ってな。
「これだけあれば、麓の村に売りに行ってもいいかもな。早速明日にでも一緒に行こうか?」
「うん!」
「よし、じゃあスピカ。この大穴を魔法で……」
塞いでくれるか? と言いかけた時、僅かに地響きが聞こえた。
「ん? 地震か?」
音は段々と大きくなってくる。地震にしては何だか様子がおかしい。何かが、迫って来るような……なんとも言い難い不気味なその音に、スピカも不安そうに俺の腕にしがみついてきた。
「な、何? この音」
「……なあ、この音……。何だかこの穴の下から聞こえてないか?」
俺達が、スピカが開けた大穴に目を向けた瞬間。
地面が一層大きく揺れ、突如大穴から間欠泉の様に、轟音と共に勢いよく熱湯が噴き出してきた。
「きゃああ!!」
「スピカ!!」
俺は咄嗟にスピカを抱き上げて大穴から全速力で逃げた。
少し離れた安全な場所まで逃げてそこから注視していると、段々とお湯の勢いは弱まり、やがて大穴はちょっとした池の様になった。
池から濛々と湯けむりが立ち昇っている。それに僅かに硫黄の匂い…正確には硫化水素の匂いがする。卵が腐った匂い、あれだ。
「……これって、もしかしなくても、温泉。か?」
俺は念の為お湯に小枝を入れ、暫くして取り出して小枝を触ってみる。少し熱めだが、人が入れない温度ではないようだ。
「おいおい……ここはいずれ秘湯の温泉地に化ける、かもしれないぞ……」
長らく封印されていた、俺のアイデンティティが騒ぎ出した。
早速俺はスピカにお願いして、大地の魔法を使って俺の指示通りに岩を大穴に敷き詰めてもらった。
そして瞬く間に、森の中なのにそれはそれは見事な露天風呂が出来上がった。
「……凄いな。完全に露天風呂だ。しかも、お客を呼べるくらいにクオリティ高!」
もはやこれは旅館業やるしかないのでは……?
近くに宿屋を造ったら、結構流行るかもしれない。名付けて『キラーベアーの湯』ってのはどうだろう? ……客からしたら意味が分からないか。なら、オーソドックスに『秘湯、美肌の湯』でどうだ。スピカが看板娘。それで俺が……。
「ね、お兄ちゃん、せっかくだし一緒に入ろっか!」
「ばんとうやります?!」
「あ、でもちょっと辺りが暗くなってきたね。待ってて灯り取ってくる!」
そう言うと俺の返答を待たずして、スピカは猛スピードで森を駆けていった。
暫くしてスピカは提灯の様な灯りと、タオルや獣除けのお香やらを入れた籠を持って直ぐに戻って来た。
無我夢中で逃げてたから気が付かなかったが、この露天風呂は家から結構近かったようだ。
「こんな大っきなお風呂、私初めて! ね、早く一緒に入ろ!」
そう言っていきなりスピカが自分の服を脱ぎ始めたので俺は慌てて後ろを向いた。
「ば、馬鹿! いきなり脱ぐんじゃない!!」
「えー? ここにはお兄ちゃんしかいないんだし、別にいいじゃない。……あ、ちょっと熱いけど、いいお湯だよ! ほら、お兄ちゃんも早くおいでよ。すっっごく気持ちいいよ!!」
そっとスピカを見ると、既に肩まで浸かっていた。
よほど気持ちいいのか頬を少し赤らめ、目を閉じて恍惚とした顔をしていた。
「ハア……。気持ちいい……」
……俺達は兄妹。俺達は兄妹。俺達は、一緒に風呂に入る程、仲の良い、兄妹……!!
無理矢理悟りを開いた俺は、スピカから見えない位置で服を脱ぐと、とりあえず腰にタオルを巻いてスピカを意識しないよう気をつけながら、ゆっくりと温泉に浸かった。
少し熱めのお湯が全身に染み渡る。俺は思わず叫んでいた。
「かあぁーーっ! 気っ持ちいいーー!!」
「ねー!!」
つい先程死にかけた俺は、途轍もない解放感に包まれた。
肩の先までお湯に浸かると、自然と溜め息が漏れた。
「ああ……。これは、マジでやるしかない……秘湯の温泉宿……」
「え? お兄ちゃん、この温泉で旅館開くの?」
「ダメかな?」
「ううん、すっごくいいと思う! だってこの温泉のお湯ね、入ってから何だか肌がすべすべするんだよ? ね、触って見て?」
「お兄ちゃんもすべすべだから大丈夫っ!!」
スピカの火照った艶かしい姿を一瞬見てしまい、慌てて視線を上へと向けた。
丁度森が少し開けた場所に温泉が湧き出たようで、空を見上げてみると既に日が暮れて、綺麗な満月の青い月が見えていた。
地球の月の色とは全然違うけれど、とても美しいコバルトブルーの月。
そんな月を見上げていたら、ある思いが心を締め付けて。
俺は独り言のようにつぶやいたんだ。
「月が、綺麗ですね」
「うん! とっても綺麗だね! でも何で敬語?」
大切な妹。今はそれで良い。
美しい自然を眺めながら、大切な人と一緒に温泉に入ってのんびりと過ごす。何てこの上なく幸せなことか。
だから、俺はやっぱりこう思うんだ。『異世界もそんなに悪くない』ってな。
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