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6 油断大敵
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こっちの世界の方が性に合ってるかも知れない。
……何て、フラグの様な甘ったれた事を考えていた報いなのか。
「ハアハア……俺の、クソッタレ!!」
今現在、俺は熊にメッチャ追われていた。
異世界なので熊ではなく正確にはキラーベアー。この森で上位の肉食獣だ。
この森には美味しいキノコがあちこちに生えている。
そんなキノコ採取に夢中になりすぎて、注意すべきキラーベアーの縄張りに足を踏み入れてしまったみたいだ。
以前に、スピカから話は聞いていた。
『お兄ちゃん、この山の中腹にキラーベアーって名前の、すっごく凶暴な獣の縄張りがあるの。絶対にそこには近づいちゃ駄目だからね? 絶対だよ?』
獣の中でも特に縄張り意識の強い獣らしく、踏み込んだが最後。地の果てまで追いかけて相手を必ず仕留める。
その執念深さから、キラーベアーと呼ばれているのだとか。
それにキラーベアーは熊に似ているだけあってか、木登りが得意らしい。
木に登ったら逆に逃げ場を失う。
「ハアハアハア……」
全速力で走り続けて息が切れる。
追いかけてくるキラーベアーは約三メートル位の巨体だ。
狭い木々の合間を利用して何とか逃亡を試みるが、巨体な割に柔軟な身体なのか上手にすり抜けて執拗に追いかけてきた。
お前は猫か! と叫びたかったが、もはや体力的に無理だった。
このままだと追いつかれる。どうすればいいんだ。
こんな時、俺にも魔法が使えれば……!
そう思った時だった。
木の幹に足を取られ、俺はバランスを崩してしまった。
「や、ばっ」
俺は咄嗟に受け身をとって地面に転がって止まった。
慌てて起き上がるがキラーベアーはもう目の前に迫っていた。
あ、俺、死ぬわ。
「駄目ーー!!」
遠くからスピカに声が聞こえたその瞬間。
キラーベアーの真下に巨体の一回り大きな穴が突如開き、そのままキラーベアーは一瞬で落ちた。
暫くして衝撃音が聞こえた。結構穴は深い様だ。
声のした方を見ると、息を切らしながら必死な形相でこちらに走ってくるスピカが見えた。
「お兄ちゃんを、襲うなんて……絶対に許さない!!」
そう言ってスピカは走りながら右腕を勢いよく振り上げた。
落とし穴からキラーベアーの度太い叫び声が聞こえると、無数の鋭い槍のような尖った土が鋭い針の山となって鋭利な音と共に穴から突き出した。
キラーベアーはその針の山に全身串刺しの状態で穴から姿を現した。
……うちの妹、結構えげつない。怒らせると絶対ダメなタイプの様だ。
「お兄ちゃーん!!」
スピカが駆け寄って来たので、俺は尻餅をついていたが何とか立ち上がった。
するとスピカはそのまま俺の胸に飛び込んできた。そしてすぐさま俺の顔を心配そうな顔で見上げてきたんだ。
「大丈夫!? どこか、どこか怪我してない!?」
「あ、ああうん。大丈夫」
「本当!? 本当にどこも怪我してない!?」
「うん、スピカのお陰で何ともないよ。ありがとう、助けてくれて」
そんな俺の返事を聞いて気が抜けたのか、今度はスピカがその場に座り込んでしまった。
「よ、よかっ、た……」
そう言うとスピカは突然ポロポロと涙を溢し出したので、俺は大いに焦った。
「ど、どうしたんだ急に泣き出したりして……も、もしかしてどこか怪我でもしたのか!?」
「ちがっ、違うのっ。お、お兄ちゃんも、死んじゃうって…居なく、なっちゃう、って、思った、から……。私、ま、またひとり、ぼっちに、なっちゃうって、すごく、すごく怖かった……!!」
よっぽど怖かったのだろう。スピカはそのまま大声で泣き出した。
俺は安心させたくて、泣きじゃくるスピカの頭にポンっと手のひらを乗せた。
「……馬鹿だな。俺がスピカをひとりぼっちになんて、する訳ないじゃないか。絶対に、そんなことしないよ」
「ヒック……お兄、ちゃん……ほ、ほんとう、に……?」
「うん。本当。ずっとスピカのそばに居る。約束だ」
スピカは俺が頭に置いている手をそのまま両手で握り締めて、泣きながら何度何度も頷いた。
「うん、うん。ずっと……ずっと私の側に居て。カイト……お兄ちゃん」
……何て、フラグの様な甘ったれた事を考えていた報いなのか。
「ハアハア……俺の、クソッタレ!!」
今現在、俺は熊にメッチャ追われていた。
異世界なので熊ではなく正確にはキラーベアー。この森で上位の肉食獣だ。
この森には美味しいキノコがあちこちに生えている。
そんなキノコ採取に夢中になりすぎて、注意すべきキラーベアーの縄張りに足を踏み入れてしまったみたいだ。
以前に、スピカから話は聞いていた。
『お兄ちゃん、この山の中腹にキラーベアーって名前の、すっごく凶暴な獣の縄張りがあるの。絶対にそこには近づいちゃ駄目だからね? 絶対だよ?』
獣の中でも特に縄張り意識の強い獣らしく、踏み込んだが最後。地の果てまで追いかけて相手を必ず仕留める。
その執念深さから、キラーベアーと呼ばれているのだとか。
それにキラーベアーは熊に似ているだけあってか、木登りが得意らしい。
木に登ったら逆に逃げ場を失う。
「ハアハアハア……」
全速力で走り続けて息が切れる。
追いかけてくるキラーベアーは約三メートル位の巨体だ。
狭い木々の合間を利用して何とか逃亡を試みるが、巨体な割に柔軟な身体なのか上手にすり抜けて執拗に追いかけてきた。
お前は猫か! と叫びたかったが、もはや体力的に無理だった。
このままだと追いつかれる。どうすればいいんだ。
こんな時、俺にも魔法が使えれば……!
そう思った時だった。
木の幹に足を取られ、俺はバランスを崩してしまった。
「や、ばっ」
俺は咄嗟に受け身をとって地面に転がって止まった。
慌てて起き上がるがキラーベアーはもう目の前に迫っていた。
あ、俺、死ぬわ。
「駄目ーー!!」
遠くからスピカに声が聞こえたその瞬間。
キラーベアーの真下に巨体の一回り大きな穴が突如開き、そのままキラーベアーは一瞬で落ちた。
暫くして衝撃音が聞こえた。結構穴は深い様だ。
声のした方を見ると、息を切らしながら必死な形相でこちらに走ってくるスピカが見えた。
「お兄ちゃんを、襲うなんて……絶対に許さない!!」
そう言ってスピカは走りながら右腕を勢いよく振り上げた。
落とし穴からキラーベアーの度太い叫び声が聞こえると、無数の鋭い槍のような尖った土が鋭い針の山となって鋭利な音と共に穴から突き出した。
キラーベアーはその針の山に全身串刺しの状態で穴から姿を現した。
……うちの妹、結構えげつない。怒らせると絶対ダメなタイプの様だ。
「お兄ちゃーん!!」
スピカが駆け寄って来たので、俺は尻餅をついていたが何とか立ち上がった。
するとスピカはそのまま俺の胸に飛び込んできた。そしてすぐさま俺の顔を心配そうな顔で見上げてきたんだ。
「大丈夫!? どこか、どこか怪我してない!?」
「あ、ああうん。大丈夫」
「本当!? 本当にどこも怪我してない!?」
「うん、スピカのお陰で何ともないよ。ありがとう、助けてくれて」
そんな俺の返事を聞いて気が抜けたのか、今度はスピカがその場に座り込んでしまった。
「よ、よかっ、た……」
そう言うとスピカは突然ポロポロと涙を溢し出したので、俺は大いに焦った。
「ど、どうしたんだ急に泣き出したりして……も、もしかしてどこか怪我でもしたのか!?」
「ちがっ、違うのっ。お、お兄ちゃんも、死んじゃうって…居なく、なっちゃう、って、思った、から……。私、ま、またひとり、ぼっちに、なっちゃうって、すごく、すごく怖かった……!!」
よっぽど怖かったのだろう。スピカはそのまま大声で泣き出した。
俺は安心させたくて、泣きじゃくるスピカの頭にポンっと手のひらを乗せた。
「……馬鹿だな。俺がスピカをひとりぼっちになんて、する訳ないじゃないか。絶対に、そんなことしないよ」
「ヒック……お兄、ちゃん……ほ、ほんとう、に……?」
「うん。本当。ずっとスピカのそばに居る。約束だ」
スピカは俺が頭に置いている手をそのまま両手で握り締めて、泣きながら何度何度も頷いた。
「うん、うん。ずっと……ずっと私の側に居て。カイト……お兄ちゃん」
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