レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか

宮崎世絆

文字の大きさ
1 / 63
幼少期編

1 気が付けば赤ちゃんなんです

しおりを挟む
「あぅうーああうあうぅあああうああー?」
(これって異世界転生ってやつですかー?)

 豪華なベビーベッドに横たわったまま自分のちっちゃな手を見つめ、暫くグーパーグーパーしてからつぶやいた。

 あうあーとしか喋れない赤ん坊となった自分の頭を動かすと、現代の日本ではなかなかお目にかかれない豪華な天井がボンヤリと見えた。赤ん坊の視力はまだしっかりしていない様だ。

 とりあえず無心で天井をジーーーと見つめてみた。
 今、自分に起きている現実を……赤ん坊となった現実を冷静に受け止めようと思ったからだ。

「うぁああううああああううあああっっっーー!!」
(って直ぐに受け入れられるかあぁっっっーー!!)

 確かについ今、今さっきまで、リビングのソファーで小説サイトを開き、大好きな異世界転生モノで新作はないかと調べていた。
 そしたら、ついウトウトしてそのまま眠ってしまった。

 ただそれだけなのに。

 目が覚めたらいきなり赤ん坊になっていて、よくわからない豪華な部屋で寝かされている。

 異世界転生のよくあるテンプレ的な展開に、まさか自分が体験することになろうとは……。

「あうああうあうあー?! うううあうあうあうあうあー?! あう、あうあうあああううあううあうあうううあうぁ!!」
(私死んだんですかー?! うたた寝で死んだんですかー?! まあ、よくあるトラック死じゃなくて良かったけども!!)

 色々考えたいが混乱する頭では上手く思考がまとまらない。
 赤ん坊の体に精神が引っ張られているのか、気が付けば手足をバタバタさせて大声で泣き叫んでいた。

「レティシア様?」

 扉の開く音がして、誰かが近づいてきた。
 混乱してひどく泣き叫ぶ赤ん坊である自分を、メイドらしき女性が優しく抱き上げた。

「よしよし。そんなに大声で泣いてどうしたのですか? 大丈夫、大丈夫ですよ」

 首の座らない自分を優しく抱いて、背中をトントンと叩いてあやしてくれる。

「大丈夫、大丈夫」

 しばらく背中をポンポンされると幾分落ち着きを取り戻した。

「……あうあうあーあううあう」
(……取り乱してごめんなさい)

 とりあえず謝っておく。

「怖い夢でも見ましたか? ふふっ旦那様と奥様が居なくて寂しくなってしまったのかしら? 大丈夫ですよ、明日になれば会えますからね」

 泣き止んだことで赤ん坊が落ち着いたと思ったのか、元いたベビーベッドに優しく戻してくれた。

「おやすみなさいませ。レティシアお嬢様」

(レティシア……お嬢様? って私のこと?)


 静かに部屋から出て行ったメイドさんが呼んだ名前を復唱してみた。

(レティシア……何だか高貴そうな名前。しかもメイドさんっぽい人、赤ちゃんに対して礼儀正しく様付け)

 豪華な部屋、節度を持ったしっかりとしてそうなメイドさん。数少ない情報だが、ある一つの可能性が頭をよぎった。

(まさか何処ぞの乙女ゲー的な世界ですか此処!!)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編) 王冠を手に入れたあとは、魔王退治!? 因縁の女神を殴るための策とは。(聖女と魔王と魔女編) 平和な女王様生活にやってきた手紙。いまさら、迎えに来たといわれても……。お帰りはあちらです、では済まないので撃退します(幼馴染襲来編)

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

処理中です...