36 / 63
幼少期編
36 魔術学園のあれこれなんです
しおりを挟む
お茶会の後、日を跨がずにレオナルドからルシータの訓練を受ける許可をもぎ取った。
決して無理はしない事が条件と、まずはシシリーとの訓練を先に受ける事を条件に加えられた。
シシリーには祝儀の際の恨みがあるので、全力でボコれる様になりたい。
しかしルドルフを愛でるのと、家族の溺愛と、三人からの手紙の返事と。色々忙しくて満足に特訓を行う事が出来ずに、ルドルフが誕生してそろそろ一年が経とうとしている。
つまりユリウスが魔術学園に通う日が迫っているのだ。
最近まではユリウスの部屋に入り浸ることは控えていたのだが、しばらく会えない寂しさから、再びユリウスの部屋へ遊びに行く事が増えた。
今日もユリウスの部屋を訪ねると、ユリウスはちょうど本棚の本を整理していた。
「やあ、レティ。今日も遊びに来てくれて嬉しいよ」
「ユリウ...ユ、ユーリ兄様、学園に家の本を持って行くの?」
「そうだね。学園には貴重な書物が揃った図書館があるらしいけど、慣れ親しんだ本も読みたくなるかもしれないから、数冊は持って行こうと思ってね」
ユリウスは本棚から一冊の本を取り出した。
「この本、覚えてる?」
ユリウスに近づいて本を覗き込んだ。
少し古びた本の表紙を見て、レティシアは笑みを浮かべた。
「あ、懐かしい! それ魔術の基礎が書かれた指導書!」
「そう。僕が引き取られて初めての誕生日に、義父様と義母様からのプレゼントでもらった本。僕は公爵の人間になるまでは、魔術の勉強はしたことが無かったから。……この本にはとてもお世話になったんだ」
懐かしそうに表紙を指でなぞるユリウス。
「私も一緒になって読んでたから、よく覚えてるよ。十歳になって魔力操作を覚えるまで魔法の練習しちゃダメって言われてたのに、隠れて練習しようとしてたのがバレて。兄様、物凄く怒られてたよね?」
(私は六歳から練習してたけど、細心の注意を払ってたからバレなかったけどね!)
「……それは覚えてなくていいよ。とにかく、この本には色々思い出があるから持って行こうかと思って。それにこの本には、レティの落書きも沢山書かれてあるしね?」
「ええ? 嘘、そんな事したっけ?」
「ほらこことか……と言うか殆どのページに書かれてるよ」
ユリウスがページをペラペラめくると、何やら殴り書きの様な文字が余白のあちこちに散らばっていた。
「えぇ……これ私が書いたんだっけ……」
「そうだよ。書かれた内容のここはこうした方が良いとか、ここは間違ってるとか言って訂正までしてたし」
(……そう言えば、やっちゃってたかな……どうでもいい事は覚えていない質なもので……)
「最初は思い込みで言ってるのかと思ってたけど。十歳になっていざ魔術を使ってみると、レティが言っていたことが正しいって、よく分かったよ。この本は、レティの落書きで国宝級の価値になってる」
「こっ国宝級? やだな兄様、おだて過ぎだって」
「本当だよ。レティが教えてくれた事は、魔術の概念そのものから覆している。思い浮かべる『想像』をするのではなくて、新たに魔法を『創造』するだなんて。……似ている様で全然違う」
(……あー、うん。最近まで『想像』を『創造』だと勘違いしてたんだよねー……。兄様は全然違うって言ってるけど、未だに違いがよく分からないんだよな……)
「レティは魔術の天才なんだって、よく分かったんだ。僕は少しでもレティに追いつきたい。だから、魔術学園に行くことにも前向きになったんだ。……でも……」
ユリウスは本を閉じるとレティシアを見た。
「本当はレティの傍に居たい」
「……兄様?」
「レティ、魔術学園に行きたいんだよね?」
「……う、ん。気にはなってる」
「……それだと僕が卒業する年に、レティが入学することになる。会えなくなるのは四年ではなくて八年になるんだ。レティに出会ってから過ごした年月と同じ……八年も……」
(八年……そうか。兄妹になってもうそんなに経つのか……。確かに毎日一緒に居たのに同じ年月会えないのは……かなり辛いな……)
「で、でも兄様。年末年始だけは帰省しても大丈夫なんだよね? 全く会えないって事じゃないよね? あ、私毎日手紙書くよ! ……って身元がバレる事はダメなんだった……」
魔術学園はかなり規制が厳しい。
まだ詳しくは聞いていないが、とにかく身元がバレる事に関しては、特に厳しいらしいのだ。年末年始の帰省も一筋縄にはいかないらしい。
レティシアはユリウスと会えないどころか、連絡すら取れない事にようやく気づいた。
「……寂しく…なるね……」
「僕は……レティを学園に行かせたくない」
「……兄様」
「大分前に義母様が言ってた通り、魔術学園は若い貴族が群がる場所だから、当然必然的な男女の交流もある。……何が言いたいか、分かる?」
(分かりません)
「魔術学園の表向きは、そのまま魔術を学べる学園。でも裏では、魔力の高い者達同士を婚姻関係にさせる為の、婚活の場でもあるんだ。変装石を使って姿を変えさせるのは、貴族の階位を気にせずに婚姻させる為なんだよ」
(え)
「ええええぇぇーー?!」
「……やっぱり、気づいてなかった。皆、暗黙の了解で入学するんだ。まあ、強制ではないけどね。でも、相手探しの為に入学する者達が大半だよ。だからあの三人も、姿を変えたレティを探すだろうね。多分だけど、一つ年の違うライト公爵もレティと同じ年に入学すると思うよ」
「えぇ……」
公爵三人組と他の貴族達との、四年間という長期の婚活学園だと聞かされ、やはり乙女ゲームなのかとレティシアは絶望感に苛まれた。
決して無理はしない事が条件と、まずはシシリーとの訓練を先に受ける事を条件に加えられた。
シシリーには祝儀の際の恨みがあるので、全力でボコれる様になりたい。
しかしルドルフを愛でるのと、家族の溺愛と、三人からの手紙の返事と。色々忙しくて満足に特訓を行う事が出来ずに、ルドルフが誕生してそろそろ一年が経とうとしている。
つまりユリウスが魔術学園に通う日が迫っているのだ。
最近まではユリウスの部屋に入り浸ることは控えていたのだが、しばらく会えない寂しさから、再びユリウスの部屋へ遊びに行く事が増えた。
今日もユリウスの部屋を訪ねると、ユリウスはちょうど本棚の本を整理していた。
「やあ、レティ。今日も遊びに来てくれて嬉しいよ」
「ユリウ...ユ、ユーリ兄様、学園に家の本を持って行くの?」
「そうだね。学園には貴重な書物が揃った図書館があるらしいけど、慣れ親しんだ本も読みたくなるかもしれないから、数冊は持って行こうと思ってね」
ユリウスは本棚から一冊の本を取り出した。
「この本、覚えてる?」
ユリウスに近づいて本を覗き込んだ。
少し古びた本の表紙を見て、レティシアは笑みを浮かべた。
「あ、懐かしい! それ魔術の基礎が書かれた指導書!」
「そう。僕が引き取られて初めての誕生日に、義父様と義母様からのプレゼントでもらった本。僕は公爵の人間になるまでは、魔術の勉強はしたことが無かったから。……この本にはとてもお世話になったんだ」
懐かしそうに表紙を指でなぞるユリウス。
「私も一緒になって読んでたから、よく覚えてるよ。十歳になって魔力操作を覚えるまで魔法の練習しちゃダメって言われてたのに、隠れて練習しようとしてたのがバレて。兄様、物凄く怒られてたよね?」
(私は六歳から練習してたけど、細心の注意を払ってたからバレなかったけどね!)
「……それは覚えてなくていいよ。とにかく、この本には色々思い出があるから持って行こうかと思って。それにこの本には、レティの落書きも沢山書かれてあるしね?」
「ええ? 嘘、そんな事したっけ?」
「ほらこことか……と言うか殆どのページに書かれてるよ」
ユリウスがページをペラペラめくると、何やら殴り書きの様な文字が余白のあちこちに散らばっていた。
「えぇ……これ私が書いたんだっけ……」
「そうだよ。書かれた内容のここはこうした方が良いとか、ここは間違ってるとか言って訂正までしてたし」
(……そう言えば、やっちゃってたかな……どうでもいい事は覚えていない質なもので……)
「最初は思い込みで言ってるのかと思ってたけど。十歳になっていざ魔術を使ってみると、レティが言っていたことが正しいって、よく分かったよ。この本は、レティの落書きで国宝級の価値になってる」
「こっ国宝級? やだな兄様、おだて過ぎだって」
「本当だよ。レティが教えてくれた事は、魔術の概念そのものから覆している。思い浮かべる『想像』をするのではなくて、新たに魔法を『創造』するだなんて。……似ている様で全然違う」
(……あー、うん。最近まで『想像』を『創造』だと勘違いしてたんだよねー……。兄様は全然違うって言ってるけど、未だに違いがよく分からないんだよな……)
「レティは魔術の天才なんだって、よく分かったんだ。僕は少しでもレティに追いつきたい。だから、魔術学園に行くことにも前向きになったんだ。……でも……」
ユリウスは本を閉じるとレティシアを見た。
「本当はレティの傍に居たい」
「……兄様?」
「レティ、魔術学園に行きたいんだよね?」
「……う、ん。気にはなってる」
「……それだと僕が卒業する年に、レティが入学することになる。会えなくなるのは四年ではなくて八年になるんだ。レティに出会ってから過ごした年月と同じ……八年も……」
(八年……そうか。兄妹になってもうそんなに経つのか……。確かに毎日一緒に居たのに同じ年月会えないのは……かなり辛いな……)
「で、でも兄様。年末年始だけは帰省しても大丈夫なんだよね? 全く会えないって事じゃないよね? あ、私毎日手紙書くよ! ……って身元がバレる事はダメなんだった……」
魔術学園はかなり規制が厳しい。
まだ詳しくは聞いていないが、とにかく身元がバレる事に関しては、特に厳しいらしいのだ。年末年始の帰省も一筋縄にはいかないらしい。
レティシアはユリウスと会えないどころか、連絡すら取れない事にようやく気づいた。
「……寂しく…なるね……」
「僕は……レティを学園に行かせたくない」
「……兄様」
「大分前に義母様が言ってた通り、魔術学園は若い貴族が群がる場所だから、当然必然的な男女の交流もある。……何が言いたいか、分かる?」
(分かりません)
「魔術学園の表向きは、そのまま魔術を学べる学園。でも裏では、魔力の高い者達同士を婚姻関係にさせる為の、婚活の場でもあるんだ。変装石を使って姿を変えさせるのは、貴族の階位を気にせずに婚姻させる為なんだよ」
(え)
「ええええぇぇーー?!」
「……やっぱり、気づいてなかった。皆、暗黙の了解で入学するんだ。まあ、強制ではないけどね。でも、相手探しの為に入学する者達が大半だよ。だからあの三人も、姿を変えたレティを探すだろうね。多分だけど、一つ年の違うライト公爵もレティと同じ年に入学すると思うよ」
「えぇ……」
公爵三人組と他の貴族達との、四年間という長期の婚活学園だと聞かされ、やはり乙女ゲームなのかとレティシアは絶望感に苛まれた。
16
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
ひめさまはおうちにかえりたい
あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)
王冠を手に入れたあとは、魔王退治!? 因縁の女神を殴るための策とは。(聖女と魔王と魔女編)
平和な女王様生活にやってきた手紙。いまさら、迎えに来たといわれても……。お帰りはあちらです、では済まないので撃退します(幼馴染襲来編)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる