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第2章 チート無双

第4話 賢者がおかしい

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ゲートをくぐると、バートが汗を流して治療していた。イケメンが台無しになるくらい汗だくだ。台無しになってないのが腹立つ。それより、アレクが大変だった。血だらけ、骨も見えてる。

(大変そう。)
〈他人事ですね。もうちょっと心配してあげたらどうなんですか?〉
(心配してる。大変そう。)
〈反応が雑なんですよ。残酷な人ですね。〉
(…賢者、うざ)
〈?!〉

魔法を使って治療をしているけど、かなり危険な状況らしい。

〈…うざい発言は置いておくとして、マスターならその人治せますよ。〉

もうアレク呼びが嫌になったのか、その人って呼んでいる。めんどくさいな、賢者。

(それより、その方法って?)
〈え、それより?〉
(方法って?)
〈…まあ、いいですけど。治癒魔法ですよ。あの人の元の姿を想像して、手から魔力ばーん!でアレクの完成です。〉
(ほんとにどうしたの、賢者。)
〈え、何がですか?〉
(…アレクに治癒魔法かけた後言う。)

本格的におかしい賢者にどうしたか聞くのは後回しにして、汗だくのバートに話しかけた。

「バート」
「あ、あなたはさっきの…。」
「どいて」
「え?」
「どいて」
「無理です。今退けば、王子が死にます。」
「どいて」
「だから無理だと…うわっ!!?」

何回言っても聞こうとしないバートを椅子から落として、椅子をどかす。そして、血まみれの死にかけアレクに両手をかざす。元の姿を想像、情緒不安定でキャラが安定してないイケメン…。あ、これ内面だった。

(想像、想像…。で、手から魔力ばーん…?)

しっかり想像してからぐっと手に力を込めた瞬間、手から光が溢れ出しアレクの体を包む。大体2秒位だろうか。光が収まり、アレクは元の姿に戻っていた。

〈うぐ…。なんて魔力量ですか…。
地球には魔力は存在していないはずなのに、こんなに魔力量の多い人間が存在するはず…いや、私が授けられたと同時にこの規格外の魔力まで授けられたのかもしれない。いやそれにしても、地球にこんな莫大な魔力を有して耐えられる人間がいるはずはない。まさか、勇者の資質…?いや、それこそありえない。勇者とは通常何十人もの魔力を大量に注ぎ込み時空の穴を強制的に開け、その末やっと召喚できる特別な存在。偶然の偶然で穴に落ちた存在が、勇者なはずは…。でも、あんな大魔法を軽々使う魔力量、結界を無意識に扱うことができる能力、かつその魔力量に耐えられる強靭な身体。勇者しかありえない。いや、でもそれにしてもおかしい。億分の1の確率で落ちたのが勇者だなんて、あるはずが…いや、でも勇者を召喚できるのはその資質がある者に時空の穴が引っ張られるからだと言う資料もある。もしかして本当に…?…召喚は強制的に開けるからこそそれが実現するんじゃないか?自然にできた穴が引っ張られるなんであるはずない。自然にできた穴はほんの数分で収縮してしまう。だから引っ張られるなんて、億分の1どころの確率じゃない…!〉
(賢者、いい加減うるさい。頭の中でブツブツ呟かないで。)
〈あ、すみません。賢者としてつい正確な情報を手に入れようと必死になっちゃって。〉

勇者がどうとか言ってたけど、なんなんだろう。…ま、どうでもいいか。
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