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序章 第二節
レナトゥス
しおりを挟む娘
「アンナ姉さん、アンナ姉さん、何処?レナ、しっこしたいよー」
辺りは静まり返っている。人の気配は感じられない。
暫くすると、いつもの様に手探りで部屋の隅へ行き、用を済ます。
いつの日からだろうか。アンナはレナの前から現れなくなった。アンナとは、レナの名付け親であり、お世話係であった。しかし、アンナが現れなくなった日からずっと何も食べられず、用を足すにもこんな感じ。人としての尊厳が失われ始めていた。否、そんな物最初から無かった。
そんな折、心が折れかけていたある日、レナは足音が近付いて来たのを聞き逃さなかった。
レナ
「アンナ姉さん」
レナは大声でとは行かないが、今出せる精一杯でアンナを呼んだ。
男
「うわっ。クセーなぁ。なんの臭いだ」
男の声だった。
レナは直ぐ様両手で口を抑え、声を潜ませた。
「ガチャ」
金属音。
しかし、男は
「お前がレナトゥスとか云うガキか?」
「取り敢えず此処から出ろ!」
レナ
「…」
男
「何黙って口抑えてんだ?早く出やがれ!」
レナ
「…」
男
「はぁ。そうだった。コイツ眼が視えねぇんだったな」
そう言うと男はレナの手を取り、この牢屋から連れ出した。
そうです。レナは牢屋に入れられていたのです。初めて此処に来た時からずっと。あの日からずっと。
アンナはそんなレナを監視すると共に、お世話係として側に居た女性でした。
男
「ホラ。コイツに着替えろっ。ても無理だったな。おーい。メイ。コッチ来て手伝え。」
遠くから若い女の声
「はーい」
「タタタッ」
走り寄る細い足音
メイ
「はい。ロータス様。お呼びでしょうか?」
ロータス(先程迄の男)
「此のガキの服を替えてやれ。あー、その前にコイツを洗ってやれ。こんなんじゃ親方様の前にだせねぇ。」
メイ
「はい。仰せの通りに。」
「それじゃ行こっか」
レナ
「…」
ロータス
「あー。言ってなかったが、コイツは眼が視えてねぇ。」
メイ
「え?ウソ?あらホント。この子の眼。コレ火傷??まぁ何でもいいわ。早く行きましょ。コレじゃぁ可哀想だわ。」
そう言うと、メイはレナの手を取り風呂場へと連れて行った。
レナ
「キャっ。何?水?でも温かい?」
メイ
「この子お湯も知らないの」
レナ
「オユ?」
メイ
「そうよ。お湯。身体を洗う時はコレじゃ無きゃ寒いでしょ。唯でさえこんな寒い日に。」
レナ
「お湯…」
メイ
「アンタ、此の眼どうしたの?言いたくなきゃ言わなくて良いけど」
レナ
「アンナ姉さんは、薬で親方様が焼いたって言ってた」
メイ
「アンナ?あの。って事はアンタがアンナの言ってた娘ね。えーっと。レナトゥス…。だっけ?」
レナ
「うん。私、レナトゥス。アンナ姉さんが付けてくれたんだぁ。レナってアンナ姉さんは呼んでくれたよ。」
メイ
「そっか。レナちゃんか。それじゃあ、レナちゃん、洗ったら服着よっか。」
レナ
「うん。」
二人はいつの間にか打ち解け合っていた。
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