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穏やかな休暇
秘密の生活
しおりを挟む「深いのが…好きなんだね…ほら見て…僕たち繋がってる。」
初めて、そしてやっとひとつになれたという思いが、ふたりの興奮をより一層高めた。
「本当に…やっと…トウコさんとひとつになれた。」
今泉は冬の上で前後に動きつつ、激しい口づけを求めた。
ベットが軋む音と冬の喘ぎ声が静かに聞こえ始めた。
「そんなにされたら…はぁ…あぁ…でも…もっと欲しい…の」
繋がっているという事実だけで、それだけで快感が倍増してしまい、ふたりとも今にも押し流されてしまいそうだった。
「ああ…。」
今泉の甘い声は冬を蕩けさせた。冬がずっと待ち望んでいた時間だった。
「不思議…体で感じて…いるのに、それ以上に…頭で快感を…感じてる。」
冬は今泉の下で、身もだえ始めた。
「僕を見て…トウコさん。」
「静さん…いっぱい…愛してね。」
快感に苦悶する紅潮した顔でお互いに見つめ合った。
「うん。…ゆっくり…愛し合お…う。」
今泉は微笑みつつ、冬の胸に舌を這わせた。
今泉の下腹部に、血液が滾っていた。この快感は一体どれぐらい振りだろう。
「トウコさん…僕…もう…我慢が出来ない…よ。」
切なく喘ぐ、今泉の姿は見惚れてしまう程にとても美しかった。
「私も。」
今泉の綺麗な顔は、ゆっくりと深く強く蠢くたびに、快感で歪んでいた。
「ぁ…出そう。」
今泉が大きなため息をつきながら切なく言葉を吐きだすと、冬は今泉の顔を手で挟んでじっと見つめた。
「シズさん…愛してる。」
快感に押し流され始めた冬は、見つめあうこともままならなかったが、それでも今泉に伝えたかった。冬の腰が自然に波打った。
「しっかり捕まえてて。」
冬の腰を抱えている今泉の腕に力が入った。
「いく時には、私の名前を呼んで…。」
冬の皮膚はぞわざわと逆立ち、銀朱色の形の良い乳首が丸く引き締まった。
「…私…もう…我慢…できない。…あぁぁぁ…。」
冬は小さく長い吐息とともに体は快感で震え、腰は不規則に今泉から愛情を吸い取ろうとするように、きつく締めあげた。
「はぁ…くっ…トウコ…愛してるよ。ああ…トウコ……あなたのいやらしい顔を見ながら…いく…うっ…。」
今泉は譫言のように、冬の名前を何度も呼んでいた。それに呼応するように冬の膣は波打ち何度も締め上げると、今泉の呼吸が荒くなった。今泉は、動きに合わせて甘い官能的な喘ぎ声を出していた。
「…あっ。」
小さな声をあげると、冬の上に倒れ込んだ。冬は寄せてはかえす快感で動けずにいたが、今泉のウェーブが掛かった髪の香りを楽しんだ。
…至福の時。満たされた時。
お互いがそう思った。
「トウコさん…あいしてる…ありがとう。」
冬の胸の上に乗った今泉の胸から早い心臓の振動が伝わった。今泉は耳元で囁いた。そして冬から、ゆっくりと離れた。生成り色のさらさらとした液体が少しだけ入っていた。
「僕は、こころからトウコさんを愛してる。」
今泉の眼には涙が光っていた。それだけで、冬は今泉が自分以上にこの時を待っていたのかを知った。
「…やっと ひとつになれた。」
そして冬も嬉しさで涙ぐみ、お互いに微笑んでいた。
「今は…僕だけの…もの。」
今泉は強くしっかりと冬を抱きしめた。
「ええ…静さん…私はあなたのもの…よ。」
ふたりともこの上ない幸福感に包まれていた。
それは冬の中にたっぷりと愛情を注いだ後も硬く太かった。
「もし疲れてなかったら…。」
今泉は冬に囁いた。
「うん…もう一度したい。」
そう言って恥ずかしそうに今泉の胸に顔を埋めた。
「トウコさんのそういうところが…可愛くて…好き♪」
今泉の何気ない一言が、冬には嬉しかった。
「ねえ…上になって動いて。」
コンドームを再び着けた。今泉の身体を跨いで、膨張を保持しているそれを冬は花弁の中央に当てがった。
「なんて…。いやらしいんだ。」
今泉は大きなため息をついた。冬はそれを見せつけるように、時間を掛けて自分の中へと埋めていく。
「…自分で…いれちゃうなんて…とってもエッチだ。」
そして冬は腰をゆっくりと波打たせた。
「とっても…エロい…。もっといっぱいみせて。」
冬は微笑みながら、うっとりと今泉を見つめた。
「エッチなトーコをみせてあげる。」
今泉の上で膝を立てM字に座ったので結合部が丸見えになった。
「君って人は…ほんとうに…。」
――― ぬちゃっ…ぬちゃっ…。
冬が動くたびに粘着質な瑞々しい音が聞こえた。
…あぁ。
冬の口から吐息が出始めた。
「トウコ…とってもセクシーだよ。あぁなんていやらしいんだ?」
今泉がいやらしく腰を振り、愛情を享受している自分の姿を見ていると思っただけで、冬の快感は何倍にも増幅された。今まで愛し合えなかった分、今泉はとても丁寧で優しかった。
「感じる…ああ。」
「静さん…私もう…いきたくなっちゃった。」
冬が切なそうに今泉に訴えた。
「まだ…駄目。あなたのその淫らな姿を僕にもっともっと見せて。」
今泉自身も、ドクドクと滾る欲望が、出口を探して暴れ始めたのを必死に抑えていた。
「あん…我慢…出来ない…。」
冬は懇願したが、今泉は微笑む余裕を見せた。
「僕も…また…熱くなってきた。」
「静さんと 一緒にいきたいの。お願い…。」
冬が上下するたびに肥大したそれに吸着した冬のピンク色の粘膜が、見え隠れし、今泉をより一層興奮させた。
――― ぶちゅ…ぶちゅっ…。
冬の愛液と汗は、甘い芳香を発して今泉の股間を蕩けさせた。
…トウコ。
「ああ…でも駄目…もう待てない…静さん」
今泉は冬の中で不随意に締め付けられた。敏感になった乳首を指で潰され、先端からの刺激と合わさり、快感が何倍にもなって冬に押し寄せてきた。
「…うぅぅ…んん…。」
鼻に抜ける様な甘い喘ぎ声が細く長く続いた。膣はビクビクと動き、今泉を痛いほどに締め付けた。
「凄いよ…トウコさんが感じてるのが判るなんて。」
今泉の胸に冬の鼓動が伝わってきた。
「バックでさせて…。」
そっと冬から離れた。まだ余韻に浸っていた冬は、ふらふらと膝と手をついたので、今泉はお腹の下に枕を2つ入れうつ伏せにさせた。
「ほら…これでトウコさんが好きなだけイケる。」
あとをひく快感にまだ敏感になっていた冬の下半身は、今泉の侵入に再び、快感を求めて蠢き出した。
「当たる場所が変わると…また気持ちいい。」
今泉はため息をついた。ゆっくりと浅いスライド。
「ああ…静…私…駄目…もう…すぐ感じちゃうの…。」
一度整った筈の呼吸は、いつの間にか喘ぎ声に変換され、我慢しようとしても、冬の口元から零れ落ちた。
「僕も…また…トウコさんがそんなに締め付けるから…あぁ。」
愛液が冬の足を伝って流れ始め、そこから発せられるいやらしい音と共に
今泉の動きがスムーズに深くなった。
「静さん…もう何をされても…感じちゃう。」
今泉は、冬の背中に唇を這わせた。
…駄目だ…体が言うことを聞かない。
ふらふらとしだした冬に動きを止めて覆いかぶさるようにして囁いた。
「…疲れちゃった?」
その熱が籠った温かな手は優しく冬の乳房に触れていた。
「大丈夫…何度もイッちゃいそうになるの。」
「ちょっと休憩しよう?」
今泉は冬から離れ、そっと抱き寄せた。
「僕は大丈夫だから…。」
くったりと今泉に身体を預ける冬の肩に指を這わせながら囁き、首筋にキスを落とした。
「静さん…もう良いの?」
「こうやってくっついているだけでも幸せ。とっても気持ちが良かった。」
冬をしっかりと抱きしめた。今泉の身体は火照ってピンク色になっていて、いやらしく素敵だった。
「本当にもう良いの?」
「うん。」
そっとコンドームを外したが、それは膨張したままだった。
「じゃあ…口と手でしてみても良い?」
見上げた冬の頬を優しく撫でた。
「してくれたら嬉しいけど…無理しなくて良いんだよ?」
今泉は冬の顔をじっと見つめた。
「ううん…したいの。」
冬はゆっくりと手で包み込んだ。
「痛かったら言ってね?」
「うん♪」
仰向けに寝ている今泉の膨張し拍動を続けているそれを口にそっと含んだ。
「トウコさん 顔を見せて。」
すぼめた口で先端からくびれまでをゆっくりとわざと音をたて、今泉の眼をみながら出し入れした。そして裏側から根元までふたつの果実に触れながら何度も唇を滑らせた。
「あ…それ気持ち…いい。」
今泉は冬の髪にそっと触れ、反対の手は冬と繋がれていた。徐々に喉の奥へと誘った。
――― じゅぼっ…じゅぼっ…。
大きくていやらしい音が部屋に響いた。
「あ…あ…ちょっと待って、腰が勝手に動きそう。」
冬は口を離した。
「やっぱ…止めないで♪」
…どっちですか?
冬は笑った。
「気持ちよすぎて駄目だぁ。」
ありがとう…と言って冬にキスをした。
「もう良いの?」
「2回目は時間掛かるから…。」
「時間掛かっても良いよ…夜は長いから。」
冬は囁いて優しく手で包み口に含んだ。少し早く大きく動いた。それは口の中で拍動をしていた。
「口の中で動いてる…静さん…エッチね。」
今泉は熱気を帯びた目で冬を見つめていた。
「どうして欲しい?」
冬の手は休まず動いた。
「先を…。」
冬はくびれから先を舌で転がすように愛撫した。今泉の整った顔は切なく歪んだ。冬はその顔を見て再び欲情した。
「…あ。きもち…いい。」
今泉は身体を起こし、自分のそれを咥えている冬の顔をそっと撫でた。
「また挿れたくなっちゃった。」
冬は微笑み頷き、首に手を回して抱きついた。
「よしっ。魔法が解けちゃう前に…僕…頑張る!」
冬は声を出して笑った。
…魔法か。
「シズさん…大好き。」
「僕の方がもっと大好き。」
今泉の無邪気な笑顔は、冬をほっとさせた。
「あれ…今日は“知ってた”って言わないの?」
――― ちゅっ…ちゅっ。
キスの隙間を埋めるように、ふたりは話をしていた。
「うん。思っていたよりも、僕のこと愛してくれてることが判ったから。でもそれよりも僕の方がトウコさんのことをもっと好きだけどね。」
そう言って冬の強く抱きしめると、肥大したそれを再び冬の中へと深く挿した。
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ふたりを送り出した後、何故か、小鳥遊はほっとした。心は少しざわついていたが、思っていた程でも無かった。
今泉は、乗りも良く看護師にも人気だ。仕事はきっちりとしていたが、
プライベートは派手で奔放で女遊びも激しいかと思いきや…違った。
病棟ごとに仲の良い看護師や、医師もいるようだったが、クールで整った顔に似合わず人懐こい性格なので、どこでも人気があった。
冬には言ってないが、小鳥遊が知っているだけで、既に4人の看護師が今泉に振られている。一度振っている所を目撃してしまったのだが、断り方もとても丁寧で、あれではしつこく付き纏われるかも知れないと他人事ながら心配になった。
最初のうちは、冬が何故あんなちゃらちゃらしたような男を好きになったのか、判らなかったが、それは表面上の事だけだった。
今泉はずっと以前から冬を知っていたのだ。そしてそれが決定的になったと思った時の事を今泉が話した。小鳥遊自身ももその時の事は、よく覚えていた。
それは、執刀医が小鳥遊で、麻酔科医が今泉の時だった。新人オペ室ナースが独りで初めての申し送りをしたが、緊張で泣いてしまった。先輩オペ室ナースが怒鳴りつけた。
「もうあなた良いわ!私が月性さんに送るからっ!」
静かに見ていた冬が新人に声を掛けた。
「いいのよ…患者さんの状態も落ち着いてるし、ゆっくり送ってくれても大丈夫よ。ほらそれに先生達もそこにいるから♪緊張してても時間が掛かっても良いからあなたが送って下さい。」
冬は今泉がマスクをしていて判らなかったようだ。
「いい?もしもあなたが何か送り忘れたとしても、病棟看護師がちゃんと聞いて確認するから大丈夫。」
新人は緊張が少し溶けたようだった。
「最初から出来る人なんていないんだから、今日出来なかったことを明日一つだけ出来るように頑張る…で良いんじゃないかしら?」
そう言ってせかしもせずに、新人の送りを静かに聞いていた。
「どうもありがとう。あなたのオペ記録、字が綺麗で読みやすかったわ。先生達にも見習って欲しいわね。」
今泉をちらりとみて笑った。その時の小鳥遊は、冬が学生指導になって悶々としていた頃だ。
似たようなことがあったが、そのたびに文句も言わず、お互いさまといつもあっさりとした対応をしていた。それから冬のことが気になってはいたが、流石に医局長の小鳥遊の居る前では聞きにくかった様で、小峠がいるあのタイミングで名前を聞いた…と今泉はその後笑って教えてくれた。
冬の近くにいれば分かるが、そんなことは冬にとって日常茶飯事で、小峠にですら丁寧に対応していたので、大嫌いだと聞いた時には驚いたぐらいだった。
今泉の忍耐強さや博愛精神に、尊敬さえしている自分がいた。
ここ数ヶ月で、不思議だが3人でいる事が普通で生活自体がそれで落ち着いてしまったようにも思えた。
…次に冬を抱くときに嫉妬をしたりするのだろうか?
自分でも良く分からなかった。
今泉と自分では、肉体関係云々というよりも、冬に対するかかわり方の違い、いうなればお互いの“守備範囲”が違った。簡単に言えば、“束縛”と“奔放”のような対照的な何か…。
だからこそ、冬はふたりを愛したのだ。小鳥遊はそう結論付けていた。
今泉に比べ自分は冬を拘束している時間も長いと思いきや、実は今泉と冬の方が、一緒に居る時間は遥かに長い。
冬の言っていた2-3年後には一体何があるのだろうか?でも好きな人が出来たら結婚して下さいと言った。普通だったらそれまで自分を待ってて下さいと言うだろうに…その言葉を聞き、逆に小鳥遊は切なくなった。
冬は相手が何を求めているのかを察して、言葉を飲み込んでしまうように思えた。少なくとも自分に対してはそうだった。
…今泉の前ではまた違うのだろうか?
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朝、キッチンへ行くと冬が既に起きていた。
「あ…せんせ。おはようございます。」
短パンにTシャツというラフないでたちで、瓶に入ったペペロンチーニのピクルスを手でつまみながら食べていた。そのすらりとした白くて長い足をカウンターに座り、ぶらぶらさせていた。
「今泉先生は?」
リラックスした冬を眺めているのは楽しかった。無邪気で奔放で、生命力に溢れているように見えた。
小鳥遊にカウンターに腰掛けたままキスをせがんだ。いつもは前かがみにならなければいけなかったが、今は屈まなくても良かったので不思議な感じがした。冬がそっとしたキスを小鳥遊は追いかけるようにして冬の舌を探し絡ませた。
「わっ…トーコさんのキス…辛い。なんですかこれ。」
冬は笑った。
「新感覚…ペペロンチー二の辛いキス♪ 静さんはまだ寝てます。」
僕は甘いキスが良い…小鳥遊は笑った。
「目玉焼きとパンにサラダ、コーヒーで良いですかね?」
「はい。それで充分です。」
小鳥遊は笑ってキッチンカウンターから冬を軽々と抱きあげた。
「何かお手伝いしましょうか?」
冬の柔らかな髪は、いつもの優しい香りがした。
「あ…じゃあ、あそこにパンケースあるんで、好きなのを取ってバスケットに入れて下さい。」
冬をそっと下し、手を洗った。カウンターの端には、大きなパンケースがあった。開けてみると、食パン、クロワッサン、ロールパンやフランスパンなど数種類のパンが入っていた。
冬はフライパンを火にかけて、温めている間に卵を準備し、春が撮影用にと作り過ぎたサラダを冷蔵庫から出した。
「あと、そこの引き出しから、フォークとナイフを出して下さい。」
卵を4つボールに割り塩コショウを振った。熱いフライパンに油を敷き、4つとも纏めてフライパンへそっと流しいれた。
「昨日は眠れましたか?」
ジュッという音を立てて卵が広がった。
…ああ…何て野暮なことを聞いたんだ?
小鳥遊は自分で聞いて何とも言えない居心地の悪さを感じた。
白身のふちに、プクプクと泡が立った。
「ええ、結構早くに寝ちゃいました。」
冬はフライパンから目を逸らさずに答えた。
「そうでしたか…。」
パチパチと白身が音を立て始め、フライパンを見ていた冬がちらりと小鳥遊をみた。
「あの…昨夜…静さんとしてみたの。」
水を少し差し入れて、蓋を締めた。じゅわわわという音と共に真っ白な湯気が上がった。
…でましたね…正直過ぎるトーコさん。
「はい。」
冬の横顔を小鳥遊は見つめていた。
「…ただ…それだけです。」
冬は微笑んでいた。
…え…報告だけ?
もう少し、色々話をしてくるのかと思い身構えていた小鳥遊だったが、あっけなく終わってしまった。
「そうですか。」
どう答えて良いのか小鳥遊は、困惑した。
「はい…そうです。」
冬は蓋の隙間から上がる湯気を見ていた。
「…。」「…。」
…なんか…気まずい。
「何か聞きたいことがあるのかなぁと思って…。」
冬はじっと小鳥遊の見て言った。
「…何か僕に話したいことがあるんですか?」
冬は暫く考えていたが。
「…いえ特に。」
プライパンの蓋を開けると黄身の上に艶やかな白い膜がはっていた。
「よし…もう良いかな。」
半熟の黄身は透明な濃い黄金色だった。小鳥遊はプレートを冬に渡した。
「はい。」
小鳥遊が皿を出すと、その上にふわりと目玉焼きを乗せた。
「ありがとう…。」
湯気が立つ目玉焼きのプレートをキッチンカウンターの上に置いた。
「はい次。」
小鳥遊は新しいプレートを渡した。
「先生、コーヒー煎れるから座ってて。」
ふたつのお皿を手に持ち冬はテーブルに向かった。
「あ…僕が煎れましょう。」
小鳥遊がマグカップを持ってコーヒーメーカーからコーヒーを注ぐ。
何に使うのか分からない道具類も、綺麗にきちんと整理されていた。
ブレッドバスケットに何個かパンを入れ、サラダを運ぶ。
「小泉先生起こさなくて良いんですかね。」
小鳥遊は言った。
「疲れてそうだから…起こさなくて良いと思います。」
冬はサラダボールを取りに行った。
「先生ご飯食べたら、海にお散歩行きませんか?」
冬はにこにこと笑いながら小鳥遊が食べるのを眺めていた。その顔は見ると本当に春にそっくりだった。
…結婚すればこんな幸せな日常を毎日過ごすことが出来るのだろうか。
小鳥遊はふとそんなことを思った。忙しい自分が、家に戻ると、夕食の香りがして、おかえりなさいと冬が笑う…そんな妄想をしてしまう自分がいた。
「良いですね。」
春の手作りのホイップバターをパンにたっぷりつけて冬は美味しそうに頬張った。
「あなたは病院以外だと、とっても幼く見えるんですよね。」
小鳥遊は綺麗にきった目玉焼きの片方を口に運んだ。
「体は大人、心は少女…ですから。」
窓から入る海風が心地よかった。
「静さんとしてみて判ったのは、やっぱりどちらも同じぐらい好きってこと。どちらか一方は選べないし、どちらか欠けてもきっと辛い。」
冬は小鳥遊を真っすぐに見つめた。
「そうですか。」
小鳥遊は、それを聞いて不思議とほっとした。
「それにやっぱり先生も好き…大好き。」
恥ずかしそうに笑った冬に小鳥遊がテーブル越しにキスをすると蜂蜜と砂糖の甘い味がした。
…ずっと傍に居て欲しい。
小鳥遊は今それを心から望んでいた。今にも溢れ出してしまいそうな愛情を必死に理性で抑え込んでいた。
「あ…僕はこのキスの方が好きです。」
そう言って笑うと、再び冬の唇に引き寄せられる様にキスを返した。
冬と小鳥遊は砂浜まで手を繋いで歩いた。
「なんか…今日は甘えたい気分です。」
冬は小鳥遊の腕に絡み付いた。
「昨日、今泉先生に沢山甘えたんじゃないですか?」
小鳥遊は笑った。冬はとても自然で可愛いらしかった。
「…昨日は、寂しかったでしょう?ごめんなさい。」
冬は真面目な顔をして言った。
「寂しくないと言えば嘘になりますが、思ってたよりも嫉妬をしていない自分に驚きました。」
小鳥遊が冬の肩に手を置くと、冬は小鳥遊の腰に手を回した。
「先生に嫉妬されるとちょっと嬉しい…かも。」
白い歯を見せて笑い、冬はキスをせがんだ。
「嫌です…朝食を食べた後に、あなたまたぺペロンチーニ食べてたでしょ?辛いキス嫌。」
あらばれちゃった?でもきっと大丈夫よと冬は笑った。風はまだ涼しく、裸足の下の砂は少し冷たい感じがした。
「静さんに家族にあって欲しいって言われたの。」
冬はぽつり言った。
「そうなんですか…いつ行くんですか?」
相変わらず堂々としていると言うか…今泉らしいなと小鳥遊は思った。
「うーん正直悩んでる…だって家族には理解して貰えるとは思わないもの…悲しませたくないから。先生に言われたとしても同じ…だと思う。」
…そうなのだ…3人の間に誰かが介在することを冬は嫌がる。
「どうしてあなたは、人に知られるのを嫌がるのでしょう?」
…なんかおかしな質問をしてしまった。
自分だってそうだった。ただそれは遊びと割り切っていたうえでのことだ。
「…怖いから…。私だけが傷つくなら良いけど…他の人達は別。わざわざ悲しませることを言う必要があるんでしょうか?」
…確かに
「それから…何故あなたは2-3年欲しいと僕に言ったのでしょうか?」
冬は考えているようだった。
「今は…まだ言えません。不確かなことだから…。」
冬は突然小鳥遊の胸に抱きつき顔を埋めた。
「…どうしたんですか?突然…。」
小鳥遊は一瞬冬が泣いているのかと思ったが、違った。
「好きな時に抱きつけるのっていいなぁと思って。」
話はそれで終わってしまった。いつもそうだ。必要以上のことは言わないし、聞かない。
“今”が大切だからなのか?
「ねぇ先生、日が高くなったら、またここに水着で来ませんか?」
…良いですね。
小鳥遊は言った。砂浜には人が全くおらす、本当にプライベートビーチのようだった。
「ここには、どのくらいいる予定ですか?僕は楽しんでいるので、ずっとここに居ても良いのですが…というか居たいです。」
「んー多分1週間ぐらい?ホントはもっと早く呪縛から逃れたい。母が何かしでかす前に。」
…春さんの呪縛か。
小鳥遊は笑った。
家に戻ると、今泉はまだ寝ているようだった。冬はちょっと様子を見てくる…と今泉の部屋へ行った。春がキッチンでコーヒーを飲んでいた。
[ねぇ…あなた達いつまで居るの?]
「トーコさん次第ですね。」
小鳥遊は笑った。
「師長さんにメールを送ったら、トーコは2週間もお休み貰ってるんですって?」
…あ…師長さん。余計な事言ってトーコさんまた怒られる。
小鳥遊は苦笑した。
「折角あなた達も来てるんだし、来週パーティーでもしようかなと思ってね。」
…春さんがもう“何かしでかしそう”としてますよ。トーコさん。
何か起こりそうだと小鳥遊は思った。
「でも…トーコさんに怒られるんじゃないでしょうか?」
…でも、知り合いにも会ってみたい。
「あーいつものことだから良いのよ。ほっといて。」
…この情報はトーコさんに伝えた方が良いんだろうか。
「あ…トーコには言わないでね。父親が帰ってくれば機嫌も直るでしょうし…。」
「トーコさんのお父さんはいつお帰りになるのですか?」
「来週なの…だから帰って来た翌日に開こうと思ってるの。」
「お父さんは何をされていらっしゃる方なのですか?」
「外交官を退職してからは、代々していた貿易会社を継いで、経営しているの。…なので殆ど家には居ないわね。若い頃から家に居ない…が正しいわね。今回も3ヶ月振りだわ。」
だから小さい頃は寂しい思いをさせちゃったわと春は笑った。
「そうですか…。」
小鳥遊にも春はコーヒーを煎れた。
「父親の帰宅の事は良いけれど、パーティーの事は内緒ね?あなた達も勿論来てくれるわよね?」
はい…熱いから気を付けて。と言って春は渡した。
「え…はい…トーコさんがここに居るのであれば…。」
あなた達3人は本当に仲が良いのねと春は笑った。
冬は今泉の顔を眺めていた。いつもならとっくに起きて来る筈の時間だが、疲れてしまったのだろうか。その綺麗な寝顔に冬はそっとキスをすると、うーんと伸びをして目を覚ました。
「あ…今何時?」
そう言うと、冬を温かいブランケットの中に引きずり込んだ。
「もうすぐ10時ですよ。」
…トウコさん…海の匂いがする。
「小鳥遊先生と浜辺を散歩してきたの。」
えーっ僕も行きたかったなぁぁぁと再び大きな伸びをした。
…あ…魔法が解けちゃったと言って今泉は笑った。
「魔法があっても無くても、静さんのこと大好きだ…から。」
唇で塞がれ、Tシャツの裾から、温かな手が入って来て、冬の胸を揉んだ。
…ん…んん。
「またしたくなっちゃった♪いいかな?」
今泉は冬の耳元で甘い声で囁いた。
…じゃあ…今夜も?
「今夜は小鳥遊先生の所へ行ってください。僕は暫くこうしているだけで大丈夫だから。」
と言いつつ、その手は10分程冬の胸から離れなかった。
「ねぇ…海へ行こうって話してたんだけど、ご飯食べてから行かない?」
…もみ…もみ…もみ…
「…。」
「ちょっと静さん?」
…もみ…もみ…もみ…
「んー僕はもう少しベットでゴロゴロしてるからいかない…。二人でいってらっしゃい♪」
…もみ…もみ…もみ…
そう言いつつ、少し硬くなった突起を指でそっと捻った。
…あっ。
背中のTシャツを捲り、舌を這わせた。
「くすぐったい…けど、良いかも。」
冬は笑った。
「でしょ?」
耳元で今泉は囁いた。
「したくなった?」
「うん…。ちょっと。」
冬は囁いた。
今泉の手が、冬のショーツの中に侵入した。
「ホントにそうか、確かめてみる。」
肉丘の間をすり抜け、突起を指で優しく愛撫した。
…あ…ん…
そして、その先の洞窟へと侵入した。
「ほんとだ…もう濡れてる。トウコさんはエッチだ♪」
指が突起と潤い始めた洞穴の入り口を行ったり来たりしている。
「ねぇ…本当にしたくなっちゃった…。」
冬は振り返り今泉にキスをしようとしたが、
「動いちゃ駄目…じっとしてて。」
冬の耳元で再び囁いた。
…ぁ…ぁん…駄目…。
冬の腰がその刺激から逃れるように動いた。
「ほら…こんなに濡れちゃって…。」
そしてその指はランダムに、冬の中に入り込んだ。
「ぁぁ…あ…感じちゃう…。」
「ほら…ここもこんなに…硬くなっちゃって。」
乳首の先端の一番敏感な部分を指の腹で優しく愛撫した。指の動きと共に、冬の腰がくねくねと動いた。
「したくなっちゃった?」
「うん…。」
「はい…じゃあこれでお終い♪」
…えっ?
「続きは小鳥遊先生にしてもらって♪」
そう言うと、今泉は布団に潜り込んだ。
「えーー。静さんが気持ちよくさせたんだから、最期まで責任とって下さい。」
(ナル:エッチな気分のトーコさんがそちらに行きます♪)
「はい…メッセージ入れておいたから、いってらっしゃい。」
今泉は意地悪に笑った。直ぐに返事が来た。
(エロ:承りました。)
「ほら…早く。行っといで。」
「じゃあ、静さんがキスしてくれたら行く…。」
今泉は、冬を強く抱きしめ、甘く優しいキスをした。
「大丈夫…愛してる…だから行っておいで…。」
今泉は微笑んだ。
…静さん。
「僕は大丈夫だから。」
今泉に部屋を追い出されてしまった。冬はしかたなく小鳥遊の部屋へと向かった。
ドアをノックすると小鳥遊がドアを開けた。
「エッチなトーコさん♪いらっしゃい♪」
嬉しそうに小鳥遊は言った。
「違います…静さんにエッチな気分にさせられちゃったのっ。」
冬をひょいと抱えてベッドへ連れて行った。そこには、黒革の手錠と特大ディルドが置いてあった。
「あれ?この前のより大きく無いですかこれ?」
小鳥遊のものよりも明らかに太かった。
「うん…限界に挑戦してみようと思って♪」
…挑戦するのはお前じゃない…私だ。
「えーっ。これちょっと無理っぽいですよ。」
「ゆっくり試すから…お願いしますトーコさん。今泉先生のご協力に感謝します♪」
小鳥遊はあっという間に冬の服を脱がせると、手首に手錠をはめた。
長い夜が始まる…。
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