小鳥遊医局長の恋

月胜 冬

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冬の居ない日常

寂しさが募る

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 小鳥遊は再び、仕事とマンションの往復だけの生活に戻った。設楽したらはあれ以来小鳥遊を避けていた。その方が都合が良かった。

 冬のことは諦めなければいけないと思いつつも、想いは未だに小鳥遊の心の半分以上を占めていて、インクの染みの様になかなか消し去ることは出来なかった。あそこまではっきり言われるとショックだった。病院では忙しさで気分が紛れて良いが、マンションに帰ってきてからの時間が辛かった。

 冬が渡米してから暫くして、今泉から食事をしないかというメールが来た。

 病院傍の行きつけの小料理屋だった。

 たびたびオペ室で一緒になったが、相変わらず人懐こく話しかけてきた。ただ、冬のことに関しては小鳥遊の前で一切話さないことから、冬から話を聞いたことは明らかだった。

「病院で顔を合わせているのに、お元気そうで何よりですという言い方もおかしいですが、お元気そうで何よりです。」

 今泉が屈託のない笑顔で言った。あなたもお元気そうでと言うと、ええ今は嵐が過ぎ去った後の様に静か過ぎて…と寂しそうに笑った。

「本当はもう少し早くにガクさんとお話したかったんです。トウコさんが居る間はお会いするのも憚られましたが、やっとその機会が出来ました。」

 今泉は席につくなり、唐突に聞いた。

「設楽さんとは…その後…。」

 今泉は最後の言葉を濁した。

「いえ…あの時の一度きりです。彼女も僕の事を避けているようで、こちらからは敢えて何も。」

 設楽は、仕事は出来たが病棟ではほぼ誰に対してもそっけなかった。病棟を移動してきて4ヶ月程経ったが、病棟の雰囲気になじんでいるようには見えなかった。




 病棟の雰囲気に馴染めないのは、今泉のことがあったからだ。病棟に突然押しかけてきて冬に別れを迫った時に、偶然近くの病室で患者の世話をしていた看護師が、話を聞いていた。その噂は一気に病棟中に流れた。冬はそんなことは無かったわ、と笑ってそれ以上の事はスタッフには言わなかった。それから設楽の部署移動が決まると、スタッフに緊張が走った。

 事実かどうかはともかくとして、小鳥遊の病棟・院内ゴシップは専ら小峠からもたらされた。小鳥遊が聞いたわけでも無いのに大抵は面白い話があれば、小峠は自分から話して聞かせた。ただ、小鳥遊が知るに至るまでには時間的にギャップがあり、約半分くらいのゴシップは事件が収束後に知る事が多かった。

 今泉はまた肉じゃが、小鳥遊は梅と卵の雑炊を食べていた。

「そうでしたか…。」

 熱燗を二人で頼みちびちびと飲んだ。

「トーコさんから聞いたと思いますが、しずさんの部屋でご飯をご馳走になった夜、僕ははっきりと彼女に振られてしまいました。」

 今泉は黙って聞いていた。

「ええ…少なくとも僕と春さんはあの日、トウコさんはあなたの部屋に泊まるものだと思ってました。あなたたち二人は、仲直りが出来るかもと。」

 後から頼んだひつまぶしを美味しそうに食べていた。

「でも…見事に振られてしまいました。あんなことをしてしまったんだから、当たり前ですね。彼女に取り付く島もありませんでした。」

 少し寂しそうに笑った。冬と離れ禁欲の日々だったことに加えて、冬と同じ香りがする設楽をつい求めてしまった。小鳥遊はその代償は大きいだろうと自覚はあった。別れを告げられた時には、冬が去った後に自分の不甲斐無さと寂しさで泣いてしまった。

「あの夜にお話ししたように、彼女はとても悩んでいました。自分から別れを告げたのに、どうしてこんなに辛いんだろうと声をあげて泣いていましたから。」

 それを聞くと胸が痛んだ。

「設楽さんことは、本当に反省してます。でも...泣きたいのは僕の方です。」

 失恋ごときで泣くなんて冬と付き合うまで小鳥遊には信じられないことだった。

 小鳥遊はもう温くなってしまった酒を飲んだ。

「彼女は自分を律してこうと決めたら綿密にそれに向かって進んじゃうんでしょうね。」

 明日はガクさんは手術日じゃないですよね?もう一本飲みませんか?と言って今泉は熱燗をもう一本頼んだ。

「トウコさんとあなたは、そんなところが良く似ていると思います。」

「頑固なところと言うことでしょうか?」

 小鳥遊は苦笑いをした。

「いいえ…特に仕事に対する姿勢というか、考え方…ですかね。患者やスタッフの前では、きわめてプロフェッショナルな所とか。」

 だからふたりともプライベートで弾けちゃったのかもと今泉は笑った。

 冬は確かにそうだった。プライベートで喧嘩をしたり、別れた後でも普段と変わりなく仕事をこなしていた。

 自分と唯一違うのは、仕事に真面目なだけでは無く、魅力的な部分を持ち合わせていることだ。容姿に目がいってしまうが、誰に対しても優しさや思いやりがあり面倒見もとても良かった。だからこそ、冬を悪く言うスタッフはいなかった。病棟や病院のゴシップが好きで、誰と寝たかを自慢するあの小峠ですら冬の事について一切言わないし、しつこく追いかけまわしていたのは、冬が惹きつける何かを持っていたからの様な気がする。

「付き合い初めの時には、主導権は僕が持っているように思っていたのですが、気が付かぬうちに彼女が持っていたんです。」

 いつの間にか自分の方が夢中になってしまっていたのだ。それがこの苦しみの始まりだった。一筋縄ではいかない冬に苛立たしさと怒りを感じつつも、それ以上に愛していた。

 冬は今まで付き合ったことのないタイプの女性だった。

 それがどうしたことだろう。
 小鳥遊は必要以上に嫉妬をし、次はいつ会えるのかばかりを気にして、傍にずっと居て欲しい、常に傍に居たい、自分だけを見て欲しい…などと、
 気が付けば今まで女性にされて鬱陶しくて、面倒だと思ってきたことを、ものの見事に片っ端から冬にしていた。

 そして極めつけは “結婚”を口に出したことだ。以前の小鳥遊なら女性に言われると幻滅し、確実に関係を終わらせていた。

 今は付き合って来た女性の気持ちが痛い程に良く分かったし、償い切れない酷いことをしてきた自分に気が付いた。

 主導権は冬にあるのだ。小鳥遊は、今まで一度もなったことが無い、逆の立場に図らずとも立たされてるように思えて仕方が無かった。

 今泉はそれを聞いて少し考えているようだった。

「ガクさんは本当にそう思っていますか?僕はそうは思いません。」

 小鳥遊の顔をじっと見てきっぱりと言った。

「僕も一瞬、設楽さんのことで…と思ったんですが、違うんですよ。彼女はあなたに選択の余地を与えたんです。主導権はあなたにあるんです。」

 小鳥遊は困惑した。

「僕にはあなたの言っていることが理解出来ません。僕は振られたんですよ?」

 …振られた。そうだ僕は冬に“振られ”たんだ。


 それも小鳥遊にとっては、ある意味“屈辱的”だった。医学部に入ってから女性に振られたことは一度も無かった。女性達が自分では無く、自分の後ろにある”医者”と言う肩書を常に見ていることも重々承知だった。今泉の様に容姿に自信があるわけでは無かったが、それでも若い頃は他の医者よりもモテていた自覚はあった。声を掛けた女性は大抵すんなりと小鳥遊のものになってきたからだ。

 どんな恋愛ゲームでも難なく攻略してきた自分に余裕があった。
 ただ、冬には今まで自分が培ってきたそういった“スキル”が全く効果が無いことが最初のうちはとても新鮮で面白く、楽しかった。しかしそのゲームに気がつかないうちに中毒になってしまい、依存し、小鳥遊の心を蝕んでいた。特に別れてからは、気持ちにあらがえば、あらがうほど悪化した。


「表面上はそうですね…。振られた…かも知れません。」

 と今泉は笑った。

「…けれど、あなたを振ったことで、あなたには“新しい恋を見つける”かトウコさんを“待つ”かの選択が出来た。以前と同じように貴方にはどちらかを選ぶことが出来たんです。」

 小鳥遊は、今泉の様に帰って来るまで待つと冬に言った覚えが無かった。ただ冬が仕事を辞め、渡米する事を誰の相談も無しに全て決めてしまったことに腹を立てていただけだ。

 …何も理由を聞かず、結婚のことも出さずに、今泉の様に単純に待っていると言えば関係は続いていたんだろうか?設楽のことがあっても?

「でなければ、彼女があんなに声をあげて泣いた理由が付かないんです。確かにあなたと設楽さんのことはショックだったと思いますけれど。」

 小鳥遊は大きなため息をついた。

「僕には彼女の気持ちや行動が複雑過ぎて良く分かりません。」

 はいこれ…忘れないうちに冬さんからですと今泉はおもむろにキンドルを渡した。アカウントがアメリカなので、日本からでも洋書がダウンロード出来るようになってるそうです。と笑った。

「僕にも同じものを送ってくれたんですが、APA書式の書き方とアメリカの治療薬の最新版などが入ってました。結構便利ですね。」

 小鳥遊が考え込んでいる姿を今泉は暫く見つめていた。

「ガクさんも僕と一緒に彼女が帰って来るのを待ちましょう。彼女は口に出さないけれど、本心では間違いなくあなたに待ってて欲しいと思っている筈です…間違いなく。」

 今泉は真面目な顔で小鳥遊に酒を勧めた。


「彼女は…今まで僕が付き合って来た女性とは全く違うんです。誰とも…違う。それが僕をいつも困惑させるんです。」

 小鳥遊は一気にお猪口を空けた。


「トウコさんは、独りで生きていく覚悟を早くから自分で決めてしまっているような気がします。」


 今泉の顔は酒で真っ赤になっていた。


「トーコさんの事をよく知る人から彼女は、その辺に居る男性よりも男らしいって言われてたんですよね。」

 今泉は声を出して笑った。

「確かに言われてみればそうですね。旨いこと言いますね。フェミニストには怒られそうですが、まさにその言葉がぴったりかも知れません。」

「今…何となくですが、その意味が判ってきたような気がします。」

 小鳥遊はカウンター越しの板前の動きを静かに見ていた。

「それに天使の様に可愛らしいかと思えば、人を惑わす小悪魔の様なふるまいをしてみたり…。」

 小悪魔トウコさんは僕は余り見たことがありませんので、それはきっとガクさん管轄の部分の様な気がしますと今泉はまた笑った。

「僕よりも大人びていると思うこともある一方で、子供っぽく無邪気だったり…。」

 小鳥遊は夏の花火の事を思い出しつい笑ってしまった。

「とても気が利くかと思えば、天然っぽいところがあったり。要するに僕たちはふたりともトウコさんのことが好きで、結局は彼女の事をほっておけないんです。」

「僕は今になって、トーコさんのことをいつまでも追いかけまわしていた小峠先生の気持ちが良く分かるようになりました。」

 小峠先生はまた女医さんに振られてから、最近はやけになっているような気がしますと今泉は笑った。

「でも…どうしてあなたはいつも余裕がある様に見えるのでしょうか?」

 少し考え込んでいた今泉は少々飲み過ぎていた。

「そのように見えますかね?あるように見えるとすれば、トウコさんが帰って来る場所が、いつも僕たちのところだと分かるから…ですかね。」

 …その余裕の根拠はどこからくるのだろうか。

「彼女がが僕たちから離れてしまう心配よりも、頑張り過ぎて無理をしてしまう方がよっぽど心配です。」

 …例えていうなら無償の愛だ。

 冬も今泉も相手からの見返りを求めないからなのかも知れない。だとしたら、いつも自分の元から居なくなってしまうかもという不安に苛まれているのはどういうことなのだろうか?小鳥遊は余計分からなくなってしまった。


4月になり新しい研修医や看護師達が病棟にもやってきた。冬の代わりに設楽が学生指導などをしていたが、しょっちゅう師長と言い合いをしていた。そのたびに師長は小鳥遊に愚痴をこぼした。設楽もそろそろ主任になる話が来ても良さそうなものだが、師長からそんな話は一向に出なかった。

数年ぶりに看護学校から脳外科看護講義の依頼が来た。学校は病院の敷地内にあり、3ヶ月程週に一度講義をしに行くことになる。小鳥遊はいつも思っていたが、医者としての知識は教えられたとしても、看護となると畑違いだと思っていた。冬が居た頃には、冬の看護知識を“横流し”する形で講義に利用していた。現場で実際に起こった出来事と知識を関連付けることで、脳外科という特殊な病棟の雰囲気を伝える良い機会だった。


春が日本に帰って来て、暫くしてからアメリカで撮って来た写真を見せてくれた。小鳥遊のマンションよりも大きな所に住んでいるとのことだった。
あれなら部屋に余裕があるし夏休みにも遊びに行けるわよ…。と笑った。

「そうだ。ガクさんも一緒に行きましょう♪トウコさんに学校が無い時を聞いて見ますから。」

今泉は笑顔で言った。

「静さん…それはちょっと。」

「僕はトウコさんは駄目と言わない様に思いますけど。そうだ♪国際免許取っとこう。そうすればどこにでも出かけられますから。」

小鳥遊は時々今泉が判らなくなった。以前今泉と話したことをずっと考えていた。

「静さん…僕、トーコさんに電話を掛けて見ようと思います。何時ごろに掛ければ彼女いますかね?」


今泉はそれを聞き嬉しそうだった。

「なら…その時にご自分で聞いて見たら如何ですか?賭けをしましょう。もしトウコさんがOKしたら、僕に1週間先生が朝食を作る。もし僕が間違えてたら、1週間僕が夕飯をガクさんに作るってのはどうでしょう。」

小鳥遊は馬鹿々々しさに思わず笑ってしまった。

「夕食を作って貰えるのはありがたいですね。いいでしょう…そうしましょう。」


ガクさんはご存知でしょうけれど、僕は人参とピーマンが嫌いで食べられませんから…と今泉は笑った。

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成田発ダレス行の最終便。今泉は春と冬を空港まで送った。

今泉と冬は手を繋いでターミナルを歩いた。3人で少し早い夕食をレストランで食べた。ふたりは食事中もずっと手を繋いでいた。

「毎日ずっと一緒に居たんですものね。寂しくなっちゃうわね。」

春はワインを飲んでいた。

「嫌だお母さん。今飲んじゃうと飛行機で酔っぱらっちゃうわよ。」

「大丈夫よ♪私本屋に寄りたいの、先に行くわ。後であいましょうね。」

そう言って春は先にレストランを出た。

「お母さんあれで気を使ってるつもりなのよ。」

冬は笑った。

「そうみたいだね。」

今泉はテーブルの上に置かれた冬の小さな手に触れながら言った。

「1年は長い…けどあっと言う間な気もするわ。」

冬はため息をついた。

「いつもアメリカに行く時には故郷に帰る様な気分になっていたんだけど、今回は違うの。」

少し寂しそうに笑った。

「僕も寂しい…よ。とっても。だけど、いつも応援してるよ。」

これ…今泉は細長い箱を取りだした。

「はい…これお守り。」

開けてみると一粒ダイヤがついたプラチナのネックレスだった。

「素敵…でも。」

冬はとても嬉しかったが、本当に貰って良いのかどうか迷っていた。

「どうか受け取って?ネックレスならいつも身に着けていられるでしょ?僕の代わりだと思って。」

今泉は笑った

「とっても嬉しいわ。大切にする…ありがとう。」

テーブル越しにお互いに暫く見つめあった後、どちらともなくキスをした。

「無事に帰って来て。」

今泉は微笑んでいたが、目が少し潤んでいるようにみえた。

「付けてあげる♪」

今泉は隣の席に移り、ネックレスを冬につけた。

鎖骨の間のくぼみでダイヤがキラキラと光った。

「良かった。とっても似合ってるし、思った通り長さもぴったりだ。」

首元に優しく触れた。

「とっても綺麗。」

今泉は微笑んだ。

さぁ そろそろ行こうか…と、今泉はゆっくりと席を立った。冬の大きなラゲージバックを持った。今泉が差し出した手を冬はしっかりと握った。

「夏休みには行くからね。」

春がゲート近くで待っていた。

「どうか気を付けて。」

今泉は冬をきつく抱きしめた。

「小鳥遊先生のことは…心配しないで。」

冬は少し寂しそうに笑っただけだった。そして二人はとても長い長い蕩けるようなキスをした。

「いってらっしゃいトウコさん。」

今泉は優しく微笑んだ。

「行ってきます。」

今泉はいつまでも冬の背中を見送った。
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ダレス空港では、ゲートを出るとシモーネが待っていた。

「春!トーコ!」

シモーネは手をあげて二人を呼んでいた。

…そんな手を挙げなくってもデカいから見えるってば。

春も苦笑いをしていた。

「なんか本当に身の危険を感じるんだけど…お母さん。責任とってよね。」

春はシモーネとハグをした。

「僕のトーコ!」

大きく手を開きハグを待っていた。

…だが…断る。

「ごめん…なんか疲れちゃって。」

冬は誤魔化した。

「あなたはいつ渡米したの?」

春が聞いた。シモーネが荷物を二人から受け取り、荷物を自分の車に乗せた。シモーネはメルセ●スGLCに乗っていた。

「1ヶ月程前かな。車も買ったばっかり♪」

…ふーん

大学の周囲には学生寮などがあるが、冬は敢えて少し離れた、大きめのセミデタッチドハウスにした。

「ここかぁ…。思ってたよりも大きいかも」

大きな家を半分に分割した左側が冬の住処になる。
間取りは2階建ての4LDKで一階にはキッチン、ダイニング、リビング、トイレがあり、2階にフルバスルームがふたつ、洗濯スペース、4ベットルームだった。

「あら 良いじゃない。誰か日本から来ても泊まれるんじゃない?」

春は早速そろえなければいけないもののメモをし出した。

「さぁ♪これから楽しいお買い物ね。まずは車を買いに行きましょう♪」

即決で小さなボル●を購入した。キッチン回りやら必要なものを春はジェットラグも何のそので、あっという間に揃えた。

「学校はいつからだい?」

シモーネが春の荷物持ちをしながら言った。

「1週間後から。」

「えーっそれじゃあ一緒に遊べない。」

…だから遊びに来てるんじゃ無いんだってば。

「しょうがないから春と遊ぼうっと♪」

…はいはいどうぞご勝手に。

シモーネのアパートが、実は冬の反対側のセミデタッチドだったと知り、
ため息が出た。

「トーコの住所調べたら、丁度隣が空いていたから迷わず借りちゃったんだ。」

「良いじゃない♪トマトソースを借りる仲になれて♪」

ボディタッチが多いシモーネに肩を抱かれながら春が言った。

「うん僕も春や冬の手料理が食べられると思うととっても嬉しいよ」

…作らんぞ。



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冬は早速大学へ手続きへ行った。既に書類上の手続きは済んでいるが、不足しているものは無いか何度も確認する必要があった。大学でアドバイザーの先生と看護学科の先生と面談をしなくてはいけなかった。

「精一杯頑張りますから、どんなスケジュールでも頑張りますから、詰め込んで下さい。」

卒業までのプランを相談して細かい調整は必要だったが、詰め込めば9ヶ月で、余裕を見て1年で終わりそうだった。春が日本に帰った後でもシモーネは毎日冬の所に当たり前のようにご飯を食べに来た。週の半分は自宅、半分は会社へ行くという生活をしているシモーネはIT関連の仕事をしていた。ネットなどの設定はお願いもしていないのにシモーネがしてくれた。

「僕は部屋の電球の交換と、PCのことだったらいつでも手伝えるからね。」

笑いながら冬の頬にキスをした。

…だからそーゆーの要らんって。

早速大学のサイトから、教育要綱をプリントアウトした。ぎっちり4教科というよりは4種類。セルフペースで論文を書いたり、病院実習などのカリキュラムだ。テストもあるが、論文がメインだ。

暫くすると今泉から荷物が届いた。医学用語辞典や梅干しと味噌、白米などが届いた。冬は毎日今泉に電話をしていた。

「静さん 忙しいのにありがとう。」

「必要なものがあったら言って。僕集めておくから。僕は留学したことが無いから、ガクさんに聞いて必要そうなものを教えて貰ったんだよ。相変わらず僕がご飯作ってる。」

…ふたりは仲良くしているんだ。良かった。

「学校は?」

「順調…かな。」

「そっか。」

「夏休みはいつから?」

「6月から8月いっぱい。だから日本に帰ろうと思えば帰れるんだよね。」

「そっかぁ…じゃあ休みが判ったら、教えるね。」

「うん」

「あれからガクさんと話して無いんでしょう?」

その名前を聞いただけで、鼻の奥がツンとして痛かった。

「うん…でも設楽さんと…。」

「ああ…ワンナイトスタンドだったみたいだよ。」

「えっ?」

「じゃあまたね」

「あ…静さんちょっと…。」

今泉はすぐに電話を切ってしまった。

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早朝、小鳥遊は冬に電話を掛けた。夏時間で時差は12時間だ。数回呼び出し音が鳴ってすぐに電話に出た。

「Hello?」

懐かしい冬の声だった。

「トーコさん…お久しぶりです。」

「あっ…。」

冬は小さく声をあげた。

「先生…。」

突然の小鳥遊からの電話に動揺していた。

「お元気ですか?」

小鳥遊の声は優しく柔らかく冬の耳に響いた。

「はい…先生は?」

「僕は元気です。学校は如何ですか?」

「一般の教科では無いので、大学に通っている感じは余りしないですね。病棟は如何ですか?」

「新しい研修医と新人看護師さんが来ました。師長さんは忙しそうです。あなたがどれだけ師長やスタッフをサポートしていたのかが、今になってわかったようで、よく愚痴をこぼしています。」

冬は笑った。

「でも…私とほぼ同期の設楽さんが居るのに?何で忙しいんでしょうかね?」

冬は設楽は表情が乏しく、何を考えているのか分からないところがあるものの仕事は出来ると聞いていたからだ。その名前が出て小鳥遊は一瞬躊躇した。

「仕事は出来るようですが、小峠先生曰く、誰に対しても愛想が無いのと、今泉先生の件であなたを呼び出したことに原因があるんじゃないかと言ってました。」

…何で あの禿がそんなこと知ってるんだ。相変わらずだな。

「そうですか…。」

少し沈黙の後で小鳥遊は言った。

「トーコさん。あなたが帰って来るまで僕は待ちます。それをどうしてもお伝えしたかったんです。夏休みもしあなたがこちらに帰って来ないのであれば、静さんとそちらに伺っても良いでしょうか?」

…業務報告的な言い方。

冬は少し戸惑った。

「ええ…良いですけれど…。突然…どうしたんですか?」

冬は笑った。

「ただ僕はあなたのことが今も好きだと伝えたかったんです。これから僕は静さんの朝ご飯を作らなければいけませんので…それでは。」



そう言って小鳥遊は電話を切った。



…ん?今、ご飯を先生が作るって言ったよね?どうしたんだろう。


朝起きてきた今泉は、小鳥遊を見て言った。

「ね?言ったでしょう。」

テーブルの上にはシリアルと野菜ジュース、スクランブルエッグとベーコンが並んでいた。

「あなたにはお世話になりっぱなしです。」

小鳥遊はとても嬉しそうだった。

「今日は夜 ご馳走でも食べに行きますか?」

今泉は席について野菜ジュースを飲むと、これスウィートポテトの味がする初めて飲んだかも…と笑った。

「いえ…今日は、夕方患者さんへの病状説明があるので遅くなりそうなんです。だから、先にご飯食べてて下さい。」

僕は適当に外で食べて来ますからと言って小鳥遊も席についた。

「ベーコン…カリカリしてて美味しいですね。」

脂をしっかりと取ったベーコンは口の中に入れるとサクサクとした食感だった。

「アメリカの友人に焼き方を教えて貰ったんです。これしか作れませんけど…。」

小鳥遊は今泉がジュースを飲んでいるのを眺めていた。

「因みにそれ人参ジュースです。市販されているものですが。」

 えっ…そうなんですか。人参の味が全くしませんけど…と今泉は驚いた。

「トーコさんに言われてから、野菜ジュースは色々と試す様になりました。美味しいのが結構ありますよ。」

「へぇ。」

「朝は僕の方が融通が利くので、これからは朝は僕が作りますよ。あなたと違って大したものは作れませんけど…。」

「別に無理しなくても…。」

「いえ…分担作業という事で、あなたは今まで通リ夕食を。」

「春さんが作ってくれたものがありますから、僕の方が楽になっちゃう気がします。」

「いいえ。これからは、作りますよ。」

と小鳥遊は微笑んだ。

今泉と小鳥遊は,出勤時間が合うと今泉の車で病院へと向かった。
歩けない距離では無いのだが、今泉はいつも車通勤だった。

駐車場に着くと,狭いシートに窮屈そうに座る小鳥遊を見て、丁度車から降りて来た麻酔科医医局長が笑いながら、声をかけて来た。

「あなた達二人は、本当に仲が宜しいんですね。」

「月性さんに間を取り持って貰ってから,マンションも同じですし,一緒にご飯を食べたりする事が増えましたね。」

と小鳥遊は笑った。

「小鳥遊医局長もお聴きになったと思いますが、災害対策委員としてお話があるので、今度お時間を頂け無いでしょうか?」

「ええ。それは構いませんけれど…。」

3人は足早に病院の裏口へと向かった。

院長に行政から地震などの災害時,小鳥遊の勤めている病院がこの地域,周辺一帯の中枢病院として機能ができる様に整備せよとの通達があった。

いつ何時災害に見舞われても対処できる様にと立ち上げられた災害対策委員会には、各部署の医局長,病棟師長達,技師部長が窓口になっていたが、今までは名ばかりで全く機能していなかった。

…大きな変化があるかも知れない。

小鳥遊は思った。


誰もまだ居ない医局に着きコーヒーを飲みながらメールをチェックしていると,院内携帯電話がなった。病棟からで患者が暴れているので、鎮静剤を使いたいとの事だった。

「今、医局なので直ぐ行きます。」

そう言うと病棟へと小鳥遊は急いだ。

「…うぉぉぉぉー!!」

 突然大きな声に小鳥遊は驚いた。数日前にオペをした高橋の患者が、抑制をされたまま、100キロ以上はあるベッドを引きずって、部屋から廊下に出ようとするのを日勤で来たばかりの設楽を含む数人の看護師が必死に抑えていた。手早く状況を聞いた後で、小鳥遊はステーションにいる看護師に向かって言った。

「鎮静剤を打って下さい。」

小鳥遊も患者を宥めながら部屋に戻そうとした。

「うぉぉぉ!何すんだぁ。俺は家に帰るんだぁ!離せ馬鹿野郎ぅ。」

患者は汗をびっしょりかき、点滴を引き抜いた腕からは血液が滴っていた。

「でも…意識レベルとか見れなく…。」

若手看護師が言うと、小鳥遊は患者を抑えながらも静かに言った。

「今は患者さん自身の安全を守る為にそんな事は言っていられません。準備して下さい。」

小鳥遊が指示した薬を看護師はすぐに準備して、持ってきた。

「抑えてますから打っちゃって下さい。」

朝来たばかりの男性看護師もやってきて4人ほどで、体を抑えた。

「お前ら…今から俺は漁に出なきゃいけ~ねんだよっ!だから、はーなーせー。」

若手看護師が躊躇しているのを,堪り兼ねて設楽が、あなたじゃあ抑えてて!と言って代わりに打とうとした時に、

「ぶっとぉばしてやるぅぅ!うおおおおおお。」

患者が物凄い力を出した。


若手が設楽に代わって抑えた腕を素早く振り払い、注射をしようとする設楽を殴ろうとした。小鳥遊は咄嗟に自分の体で設楽を守ろうとした。

ーーバチンッ!

鈍い音がしたかと思うと,患者は小鳥遊の顔を力を一杯殴りつけた。

「ちょっと!山口さん。」「あっコラ!」「何してんのっ!」
看護師が一斉に悲鳴や声をあげた。

「打ちました!」
設楽が言った。

続々と日勤者が集まってきて、夜勤者の代わりに患者を抑えた。

「小鳥遊先生大丈夫ですか?顔を見せて下さい。」

設楽が心配そうに言った。

「いえ僕は大丈夫ですから…。」

と言ったものの、みるみる赤く腫れてきた。
設楽は冷蔵庫に走り、氷と水を袋に入れタオルを巻き、小鳥遊の顔に押し付けた。看護師が小鳥遊と代わった。

「先生…ココです。しっかり抑えてて。」

お礼を言い、ナースステーションに戻り緊急のCTをオーダーした。30分ほどすると患者はウトウト寝だした為、ベッドに皆で戻し再び抑制をした。程なくしてCT室から呼ばれ,小鳥遊は看護師と一緒に検査出しに付き添った。

術後せん妄患者は,割と多く、特殊なジャケットや腕輪をして動かない様にベルトで体や手足を固定する事があった。今回の様な事も、数ヶ月に一度はあり、精神科の次に脳外科で見られる光景と言っても過言では無かった。

「あら。小鳥遊先生 殴られちゃったんですか?」

CT室の技師やスタッフにも心配された。

「大丈夫ですから。」

先生も一応顔のレントゲン撮っといた方が良いですよ…と技師は言ったが、大丈夫ですからと小鳥遊は再び言って笑った。

担当医の高橋医師がやってきた。顔を見てレントゲンを嫌がる小鳥遊にオーダーした。患者の手が少し腫れているので一緒にオーダーするように小鳥遊は言った。


「医局長…僕が代わります。済みませんでした。」

深々と頭を下げた。高橋先生が謝る事では無いですよと言いながらレントゲン技師の後について撮影室に入った。

患者のCTを確認すると、やはり脳浮腫が進んでいた。患者の付き添いは、高橋に頼み、小鳥遊は病棟へ上がり、点滴と内服内容を変更した。薬剤部へ直接自分で電話を掛けて、至急で病棟にあげて貰う様にお願いした。

自分で点滴を取りに行こうとする小鳥遊を追いかけて設楽が,閉まりかけたエレベーターに乗り込んだ。

「私が行きます。」

「あなたは朝の申し送りがあるでしょうから…。」

「先生のレントゲン出来たそうですから取りに行ってきます。」

「じゃあ僕自分で寄ります…。」

設楽は既にエレベーターの閉まるボタンを押していた。

「あの…先生。この間のコト。済みませんでした。」

設楽はエレベーターのモニターを見ながら言った。

「いえ…僕こそ。」

小鳥遊は設楽の背中を見ながら静かに言った。設楽は、やはり冬と同じ香水を付けているらしくその懐かしい香りが鼻をくすぐった。

「月性さんと今泉先生の事で、魔が差してしまって…。」

「僕こそ、あの時色々あったものですから。どうぞ気になさらずに。」

気にするなとは少々変な話だと自分で言っておいて小鳥遊は思った。

「あなたの香り…どこかで知っている様な気がします。」

暫くの沈黙の後。

「馬鹿ですよね…私。月性さんと同じCHAN●LのChanceです。こんなコトしたって駄目なのは分かってるのに。」

設楽は恥ずかしそうに笑った。

「小鳥遊先生…もし良かったら…。」

小鳥遊が言葉を遮った。

「僕には心に決めた女性が居ます。本当に申し分けありません。」

小鳥遊はきっぱりと言った。

「そうですよね…。聞かなかった事にして下さい。」

エレベーターのドアが静かに開いた。

「…レントゲン取りに行ってきます。」

設楽は降りて行った。

病棟へ戻ると設楽が小鳥遊のレントゲンを持ってきていた。
小鳥遊はシャーカステンに挟み確認した。自分のレントゲンを見るのは、変な感じがした。設楽が小鳥遊の後ろからそのレントゲンを見ていた。

「頬骨とか…大丈夫…みたいですね。眼窩骨折とかCT取らなくっても良いんですか?」

設楽が言った。

「うん…わざわざ取らなくても平気だったのに…高橋先生がオーダーしてくれました。記念撮影になりましたね。」

あとで写メ撮っておきます…と小鳥遊は笑った。

高橋がオーダーした患者の手のレントゲンで、不完全骨折が見つかり整形受診になった。

お昼頃にいつもは来る患者の妻に病状を説明した。看護師が朝の事件を既に説明していた様で、小鳥遊を見た途端、平謝りだった。

「いえいえ…。旦那さんが悪いのではありません。脳が今一番腫れる時期なので点滴や薬で調整して様子を見ます。それで...ですね…実は…僕に当たってしまった旦那さんの手がですね…折れてしまいまして、整形の先生に受診してギプスを巻いています。僕の石頭のせいで…申し訳ありません。」

小鳥遊は苦笑した。

「本当に父ちゃんは…力ばっかり強くってねぇ。先生を殴っておいて自分が骨折するなんて。先生本当に申し訳ありませんでした。」

再び深々と妻は頭を下げた。


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「その顔!一体何があったんですか?」

夕食を作っていた今泉が小鳥遊の顔を見てびっくりした。既に部分的に赤色から紫に変わり始めた小鳥遊の腫れた頬を見て言った。朝の出来事を話すと今泉は笑った。

「殴った患者さんの方が骨折するなんて…。」

ちょっと写真撮っておきましょうと言って小鳥遊の顔の写真を撮り、さっさと冬にメールをした。

「撮らなくって良いですよっ。他人事だと思って楽しんでますね。結構痛かったんですよ。」

小鳥遊は笑った。

「多分、心配してすぐ電話掛かってくると思いますよ。」

今泉が笑っているうちに冬から電話があった。

…ほらね?

「全くあなたって人は…トーコさんにメールしたんですか?」

今泉は電話を渡すと、二人は暫くの間話をしていた。小鳥遊の嬉しそうな顔を今泉はニコニコと眺めていた。














































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