7 / 65
一章
第7話 淑女教育
しおりを挟む
「背筋が曲がっております。本を追加しましょうか」
「い、いやぁ!そんなに乗せられたら私の頭が潰れちゃうでしょ!」
「ご安心を、大丈夫です。私が習った時には、これの倍を乗せられていましたよ」
「へ…!?」
私がお教えすることになったのは、子爵令嬢レイラ。結構な遊び人だそうだ。
だけど、彼女は平民(という設定になっている)の私を貶めたりはしない。蔑んだり、侮辱したりしない。一応「先生」と「生徒」という関係は保てている気がする。
「お次はダンスです。私が男性パートをいたしますので、それに合わせてください。まずは一番簡単なワルツからいきましょう」
「ふ、ふぁい…」
「返事をきちんと」
「はい…」
疲れ切っているのだろうか。
だけど、妃教育の時はこれプラスで経済学を学ばされたりとかしたから、マシなはずだ。
「そこ、足は左!」
「手を離さないで!」
「回り方がぎこちない!」
修正を叫ぶたびにレイラ嬢はひぃ、と音を上げていたが、だんだん慣れてきたようだ。
私は条件を追加したのだ。
〈1日のノルマが終われば、好きに遊んで良い〉
これはつまり、遊び人のレイラ嬢にとってご褒美だ。
レイラ嬢の両親ははじめ、反対していた。
「その夜遊びをなくしたいんです!」
「…そうですわ。ですが、私はノルマをだんだん増やしていくつもりなのです。その度にノルマが終わる時間も遅くなる。でも、初めの頃はできていたのだから、と自分で期待しながら一生懸命勉強するでしょう。しかし、終わっても疲れ果てていたり、時間が遅く夜遊びに適さない時間帯かもしれません。すると、自然と夜遊びはなくなります」
なるほど、と彼らは頷いた。
夜遊びを生き甲斐にし、癒しにしていたならこれは効かないが、見ているうちにそうではないことがわかってきたので、この案を採用したのだ。
そして教えること三ヶ月。
レイラ嬢は、美しい淑女になっていた。
「さすがですわ。レイラ様は飲み込みが早うございました。誠に嬉しい限りです」
「ふふ、ありがとう。でもーーセシリア…先生も、教え方がすごく上手くて…」
「家庭教師として、そのような褒め言葉をいただけるなど…恐縮ですわ」
これで夜遊びも全くなくなった。
「最終確認を一週間して、授業は終わりです」
「レイラ様。婚約者様がお見えですよ」
侍女が呼びにくる。
もちろんレイラは気分が良くなったようで、このドレスがいいかしら、あのドレスがいいかしらと迷っている。
でも、そのお顔は晴れやかだ。
しかし、その華やかな顔は長くは続かずーー。
「い、いやぁ!そんなに乗せられたら私の頭が潰れちゃうでしょ!」
「ご安心を、大丈夫です。私が習った時には、これの倍を乗せられていましたよ」
「へ…!?」
私がお教えすることになったのは、子爵令嬢レイラ。結構な遊び人だそうだ。
だけど、彼女は平民(という設定になっている)の私を貶めたりはしない。蔑んだり、侮辱したりしない。一応「先生」と「生徒」という関係は保てている気がする。
「お次はダンスです。私が男性パートをいたしますので、それに合わせてください。まずは一番簡単なワルツからいきましょう」
「ふ、ふぁい…」
「返事をきちんと」
「はい…」
疲れ切っているのだろうか。
だけど、妃教育の時はこれプラスで経済学を学ばされたりとかしたから、マシなはずだ。
「そこ、足は左!」
「手を離さないで!」
「回り方がぎこちない!」
修正を叫ぶたびにレイラ嬢はひぃ、と音を上げていたが、だんだん慣れてきたようだ。
私は条件を追加したのだ。
〈1日のノルマが終われば、好きに遊んで良い〉
これはつまり、遊び人のレイラ嬢にとってご褒美だ。
レイラ嬢の両親ははじめ、反対していた。
「その夜遊びをなくしたいんです!」
「…そうですわ。ですが、私はノルマをだんだん増やしていくつもりなのです。その度にノルマが終わる時間も遅くなる。でも、初めの頃はできていたのだから、と自分で期待しながら一生懸命勉強するでしょう。しかし、終わっても疲れ果てていたり、時間が遅く夜遊びに適さない時間帯かもしれません。すると、自然と夜遊びはなくなります」
なるほど、と彼らは頷いた。
夜遊びを生き甲斐にし、癒しにしていたならこれは効かないが、見ているうちにそうではないことがわかってきたので、この案を採用したのだ。
そして教えること三ヶ月。
レイラ嬢は、美しい淑女になっていた。
「さすがですわ。レイラ様は飲み込みが早うございました。誠に嬉しい限りです」
「ふふ、ありがとう。でもーーセシリア…先生も、教え方がすごく上手くて…」
「家庭教師として、そのような褒め言葉をいただけるなど…恐縮ですわ」
これで夜遊びも全くなくなった。
「最終確認を一週間して、授業は終わりです」
「レイラ様。婚約者様がお見えですよ」
侍女が呼びにくる。
もちろんレイラは気分が良くなったようで、このドレスがいいかしら、あのドレスがいいかしらと迷っている。
でも、そのお顔は晴れやかだ。
しかし、その華やかな顔は長くは続かずーー。
749
あなたにおすすめの小説
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。
火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。
しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。
数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。
愛は全てを解決しない
火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。
それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。
しかしデセルバート家は既に没落していた。
※なろう様にも投稿中。
【完結】王妃を廃した、その後は……
かずきりり
恋愛
私にはもう何もない。何もかもなくなってしまった。
地位や名誉……権力でさえ。
否、最初からそんなものを欲していたわけではないのに……。
望んだものは、ただ一つ。
――あの人からの愛。
ただ、それだけだったというのに……。
「ラウラ! お前を廃妃とする!」
国王陛下であるホセに、いきなり告げられた言葉。
隣には妹のパウラ。
お腹には子どもが居ると言う。
何一つ持たず王城から追い出された私は……
静かな海へと身を沈める。
唯一愛したパウラを王妃の座に座らせたホセは……
そしてパウラは……
最期に笑うのは……?
それとも……救いは誰の手にもないのか
***************************
こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。
愛してくれないのなら愛しません。
火野村志紀
恋愛
子爵令嬢オデットは、レーヌ伯爵家の当主カミーユと結婚した。
二人の初対面は最悪でオデットは容姿端麗のカミーユに酷く罵倒された。
案の定結婚生活は冷え切ったものだった。二人の会話は殆どなく、カミーユはオデットに冷たい態度を取るばかり。
そんなある日、ついに事件が起こる。
オデットと仲の良いメイドがカミーユの逆鱗に触れ、屋敷に追い出されそうになったのだ。
どうにか許してもらったオデットだが、ついに我慢の限界を迎え、カミーユとの離婚を決意。
一方、妻の計画など知らずにカミーユは……。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる