浮気したあなたたちのことなんて、もう知りません。私は幸せになりますけどね。

月橋りら

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一章

第7話 淑女教育

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「背筋が曲がっております。本を追加しましょうか」
「い、いやぁ!そんなに乗せられたら私の頭が潰れちゃうでしょ!」
「ご安心を、大丈夫です。私が習った時には、これの倍を乗せられていましたよ」
「へ…!?」

私がお教えすることになったのは、子爵令嬢レイラ。結構な遊び人だそうだ。
だけど、彼女は平民(という設定になっている)の私を貶めたりはしない。蔑んだり、侮辱したりしない。一応「先生」と「生徒」という関係は保てている気がする。

「お次はダンスです。私が男性パートをいたしますので、それに合わせてください。まずは一番簡単なワルツからいきましょう」
「ふ、ふぁい…」
「返事をきちんと」
「はい…」

疲れ切っているのだろうか。
だけど、妃教育の時はこれプラスで経済学を学ばされたりとかしたから、マシなはずだ。

「そこ、足は左!」
「手を離さないで!」
「回り方がぎこちない!」

修正を叫ぶたびにレイラ嬢はひぃ、と音を上げていたが、だんだん慣れてきたようだ。

私は条件を追加したのだ。
〈1日のノルマが終われば、好きに遊んで良い〉
これはつまり、遊び人のレイラ嬢にとってご褒美だ。

レイラ嬢の両親ははじめ、反対していた。

「その夜遊びをなくしたいんです!」
「…そうですわ。ですが、私はノルマをだんだん増やしていくつもりなのです。その度にノルマが終わる時間も遅くなる。でも、初めの頃はできていたのだから、と自分で期待しながら一生懸命勉強するでしょう。しかし、終わっても疲れ果てていたり、時間が遅く夜遊びに適さない時間帯かもしれません。すると、自然と夜遊びはなくなります」

なるほど、と彼らは頷いた。
夜遊びを生き甲斐にし、癒しにしていたならこれは効かないが、見ているうちにそうではないことがわかってきたので、この案を採用したのだ。

そして教えること三ヶ月。

レイラ嬢は、美しい淑女になっていた。

「さすがですわ。レイラ様は飲み込みが早うございました。誠に嬉しい限りです」
「ふふ、ありがとう。でもーーセシリア…先生も、教え方がすごく上手くて…」
「家庭教師として、そのような褒め言葉をいただけるなど…恐縮ですわ」

これで夜遊びも全くなくなった。

「最終確認を一週間して、授業は終わりです」

「レイラ様。婚約者様がお見えですよ」

侍女が呼びにくる。
もちろんレイラは気分が良くなったようで、このドレスがいいかしら、あのドレスがいいかしらと迷っている。
でも、そのお顔は晴れやかだ。

しかし、その華やかな顔は長くは続かずーー。



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