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二章
第28話 なくなった祝福の真珠
しおりを挟むアメリアと王太子の婚約は破棄されない。
王太子にとっては「隠し子」と婚約させられる屈辱、アメリアにとっては、自分を決して愛してくれなくなったことへの悲しみと、後ろ指を指される毎日。彼らは「浮気した」ことの罰として、婚約を続けることになったのだ。
この結果に、異議を唱えるものはいなかったーー。
でももう、知らないけれど。
私には関係ない。
「浮気」したのはあなたたち。家族としてのアメリアと罰を受けた未来の王太子妃であるアメリアは、違う人物として捉えることにした。
母親に裏切られた仲間。でも、彼女だって私を裏切ったのだから。
アメリアは、もう私に何もできない。
だって、浮気したんだものーーね?
「セシリア嬢、今度、休暇に行ってはどうかしら」
「…それは良い提案ですわ。前向きに検討させていただきます」
皇妃は休暇ーー別荘に行くことを提案してきた。
癪だが、ここは断ることは、できればあまりしたくない。
これにはアレクシス様も同感だったようで、私たちは別荘であるクレア邸に行くことにした。
いまや、ミランダ皇妃は皇帝の寵愛を独占する寵妃。宮中の全てを牛耳っているのだ。
「すごいですね…!」
「ああ」
母国、コーネリアは透明度の高い美しい海として有名だが、それにも負けないくらいの絶景だ。
見慣れているはずなのに、すごく新鮮だった。
邸では、仕事をしようとするアレクシス様を必死に止めて、街を回ったり、邸内を歩いたりーーと楽しんだ。
「大変!クレア邸の宝「祝福の真珠」がないそうよ!」
帰ってきて早2日、それは起こった。
「祝福の真珠」というのは、昔、女神ルアーが授けたとされる帝国の証の一つ。女神の名に預かって、「祝福の真珠」と名付けられたのだ。
そして、それを無くしたということはーー。
疑われるのは私か、アレクシス様か。
これが、皇妃の目論見だろうかーー。
「捜索に入ります」
だけど、私の部屋から見つかることは絶対にない。
◇◇◇
「どういうこと!?」
見つかりませんでした、じゃないわ!なんで…確かに、セシリアの部屋に置いたのに!
よくものこのこと帰って来られるわね。
「…他の場所は!?」
「アレクシス皇太子殿下のお部屋にもございませんでした。皇帝陛下のお部屋にも。この皇宮内で、今動員させた者たちが捜索にあたっていますが、それらしい報告はありません…」
なんでっ!?
セシリアは思った以上に早く回復しちゃったし、これじゃ失脚の計画が失敗だわ!
「…クレア邸をもう一度調べなさい」
「はっ…」
絶対に、絶対にーー邪魔なお前らは消してやるんだから!
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