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爵位授与式

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 爵位授与式から一週間後、レオン・フォン・ヌッツェンマン男爵の叙勲式と「王の騎士団」への入団式がお城で執り行われた。この「王の騎士団」とは軍事集団ではなく、王室への多大なる貢献が認められて勲章と騎士の称号を授けられた者だけで構成される友愛団体である。レオンがお城へ参上する際には、騎士の称号を持つ執事のマイヤー卿が従者として随行した。

 レオンは叙勲式で王族たちを前に、未来の王太子妃への多大なる功績を称えられ、国王さまから「騎士」という栄誉称号と金でできたピカピカの栄誉勲章を賜ったのだ。
 こうしてレオンは、一度も馬に乗ることもなく一度も剣を振るうこともなく、騎士の称号を持つ男爵となった。騎士の名に恥じぬ男らしい男でありつづけよう。レオンは晴れがましくも身の引き締まる思いがした。

 続く「王の騎士団」の入団式は、国王さまの礼拝室付きの司祭によって執り行われる。司祭は事前にエラ嬢から聴いておいたレオンの立派な行状を列席者に対して感動的に語り、「この感心な少年男爵が『王の騎士団』に入団することは、神も是認なさるでしょう」とスピーチした。
 レオンは国王さまの前に両膝でひざまずいてこうべを垂れ、国王さまへの忠誠を誓う。国王さまはレオンの右肩に厳かに長剣の平を当てると軽くその肩を叩き、レオンの「王の騎士団」への入団を承認する旨を厳かに宣言された。
 司祭が「王の騎士団」へ入団したレオンへの祝福を神に祈り求め、全員で「アーメン」を唱える。最後に司祭は、「王と王国と王の騎士団が末永く栄えんことを」と祝福の言葉を述べると退出した。
 その一部始終を見届けた騎士団のメンバーたちは、拍手でレオンを歓迎する。「王の騎士団」のメンバーには、王弟を始めとして大貴族や小貴族たちがいた。全員、レオンと同じピカピカの栄誉勲章を胸につけ、「騎士」の栄誉称号を持つ騎士たちだ。彼らは、「未来の王太子妃を助けた少年男爵は真の騎士であり、我々の仲間入りをするにふさわしい」とレオンを熱烈に歓迎した。
 王弟は、「まだ剣術学校で学ぶ前の少年なのに、『信仰』と『レディへの献身』と『弱者への親切』という騎士道精神を持った立派な騎士だ」と感服する。貴族たちは、「ぜひうちにもお越しください。エラ嬢に対する騎士ナイトぶりを、もっと詳しくお聞かせいただきたい」とレオンをお茶会や晩餐会へ招待するのだった。

 騎士の称号を持つ貴族たちの間のレオンブームが一段落した頃、レオンは城外の森にある剣術学校へ入学した。
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