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朝、目が覚めるとそこはラブホテルの一室だった。
ラブホテルに宿泊することになった経緯はわからない。
昨日の記憶がないことから、酒を飲み過ぎたことは間違いない。
酔っ払いすぎて自宅まで帰れず、止むを得ずラブホテルに泊まったと考えるのが自然だろうか。
おそらく、ツキが世話を買って出てくれたのだろう。
店で介抱をしてくれて、
閉店の時間になったから外に出ないといけなくて、
とりあえずの宿泊先としてラブホテルを選択しただろうことは想像に難くない。
現にあのラブホテルはオカマバーから遠くない位置にあった。
問題は、起きた時に隣にツキがいたことだ。
隣でツキが寝ていたのだから、ふたりで同じ部屋に泊まったことは動かしようのない事実だ。
酔っ払いなんてホテルの部屋に押し込んだら放っておけばいい。
看病するにしても、同じベッドで寝る必要なんて微塵もない。
それなのにどうして――
ツキは隣で、
あんな近くで、
しかも裸で、
いっしょに寝ていたのか。
事実だけを見て考えれば、真実は一つだけだ。
酔った勢いで、ツキと一夜を共にしたとしか考えられない。
しかし、酔っていたのは片方だけだ。
ツキはお酒が飲めないと言っており、記憶にある限りではツキは牛乳しか飲んでいなかった。
ツキの性格を考えると、出会ったばかりの人間に体を許すとは思えない。
しかもツキは経験が無いと言っていた。
あの純真無垢なツキが、
どれだけ好意を抱いてくれていたとしても、
酔っ払い相手に処女を捧げるなんて考えられない。
残っている可能性としては、酔った俺がツキにホテルでの同衾を強要したというものだ。
しかし仮にそうだったとしても、やはりツキは酔っていなかったのだから抵抗できたはずだ。
記憶を無くすほどヘベレケになっている男なんて、どれほど体格差があってもツキなら抵抗できたはずだし、抵抗をしたはずだ。
だからきっと、ふたりは何もなかったのだ。
例えば、
ツキはホテルに酔っ払いを格納して帰ろうとしたところでドレスを汚してしまって、
そのためにドレスを脱いで泊まらざるをえなくなって、
自分だけ裸では恥ずかしいから同室者の服も脱がした。
これなら、ふたりが裸でいっしょのベッドで寝ていたことにも理由がつく。
ふたりの間には何もなかったと信じられる。
『どうしてって……アキラさんは、私の初めての人なんですから――』
『責任、取ってくださいね……♡』
脳裏に浮かんだのは、今朝のツキの言葉と、その表情だった。
「…………いや、初めて一緒のベッドで寝たってだけかもしれないし」
それは、我ながらなんて虚しい言い訳なのかと思う。
本当は最初から全部わかっている。
記憶なんて無くても、ツキの様子を見た時からわかっていた。
だから、俺はツキから逃げるようにしてホテルを飛び出してしまったのだ。
だって、そうだろう。
もしも、本当にそういうことをしてしまったのなら。
ツキと体を重ねたのだとしたら。
それなのに、俺が何も憶えていないだなんて。
そんなのは残酷すぎる。
ツキの初めての瞬間も。
自分の初めての瞬間すらも。
全部知らない間に終わっていただなんて。
そんな現実に耐えられるわけがない。
だから、望み薄だとしても、俺とツキの間には何もなかったんだと思いたい。
『お店で待ってますね……♡』
それは去り際の背中にかけられたツキからの言葉。
俺はそれに、何も返すことができずにただ逃げ出した。
でも、やっぱりこのまま逃げたままではいられない。
曖昧にしたままでは、いつまでも苦しいだけだから。
俺はまた、オカマバーエンジェルへと行かなければならない。
ラブホテルに宿泊することになった経緯はわからない。
昨日の記憶がないことから、酒を飲み過ぎたことは間違いない。
酔っ払いすぎて自宅まで帰れず、止むを得ずラブホテルに泊まったと考えるのが自然だろうか。
おそらく、ツキが世話を買って出てくれたのだろう。
店で介抱をしてくれて、
閉店の時間になったから外に出ないといけなくて、
とりあえずの宿泊先としてラブホテルを選択しただろうことは想像に難くない。
現にあのラブホテルはオカマバーから遠くない位置にあった。
問題は、起きた時に隣にツキがいたことだ。
隣でツキが寝ていたのだから、ふたりで同じ部屋に泊まったことは動かしようのない事実だ。
酔っ払いなんてホテルの部屋に押し込んだら放っておけばいい。
看病するにしても、同じベッドで寝る必要なんて微塵もない。
それなのにどうして――
ツキは隣で、
あんな近くで、
しかも裸で、
いっしょに寝ていたのか。
事実だけを見て考えれば、真実は一つだけだ。
酔った勢いで、ツキと一夜を共にしたとしか考えられない。
しかし、酔っていたのは片方だけだ。
ツキはお酒が飲めないと言っており、記憶にある限りではツキは牛乳しか飲んでいなかった。
ツキの性格を考えると、出会ったばかりの人間に体を許すとは思えない。
しかもツキは経験が無いと言っていた。
あの純真無垢なツキが、
どれだけ好意を抱いてくれていたとしても、
酔っ払い相手に処女を捧げるなんて考えられない。
残っている可能性としては、酔った俺がツキにホテルでの同衾を強要したというものだ。
しかし仮にそうだったとしても、やはりツキは酔っていなかったのだから抵抗できたはずだ。
記憶を無くすほどヘベレケになっている男なんて、どれほど体格差があってもツキなら抵抗できたはずだし、抵抗をしたはずだ。
だからきっと、ふたりは何もなかったのだ。
例えば、
ツキはホテルに酔っ払いを格納して帰ろうとしたところでドレスを汚してしまって、
そのためにドレスを脱いで泊まらざるをえなくなって、
自分だけ裸では恥ずかしいから同室者の服も脱がした。
これなら、ふたりが裸でいっしょのベッドで寝ていたことにも理由がつく。
ふたりの間には何もなかったと信じられる。
『どうしてって……アキラさんは、私の初めての人なんですから――』
『責任、取ってくださいね……♡』
脳裏に浮かんだのは、今朝のツキの言葉と、その表情だった。
「…………いや、初めて一緒のベッドで寝たってだけかもしれないし」
それは、我ながらなんて虚しい言い訳なのかと思う。
本当は最初から全部わかっている。
記憶なんて無くても、ツキの様子を見た時からわかっていた。
だから、俺はツキから逃げるようにしてホテルを飛び出してしまったのだ。
だって、そうだろう。
もしも、本当にそういうことをしてしまったのなら。
ツキと体を重ねたのだとしたら。
それなのに、俺が何も憶えていないだなんて。
そんなのは残酷すぎる。
ツキの初めての瞬間も。
自分の初めての瞬間すらも。
全部知らない間に終わっていただなんて。
そんな現実に耐えられるわけがない。
だから、望み薄だとしても、俺とツキの間には何もなかったんだと思いたい。
『お店で待ってますね……♡』
それは去り際の背中にかけられたツキからの言葉。
俺はそれに、何も返すことができずにただ逃げ出した。
でも、やっぱりこのまま逃げたままではいられない。
曖昧にしたままでは、いつまでも苦しいだけだから。
俺はまた、オカマバーエンジェルへと行かなければならない。
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