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親睦偏
朝食を食べました
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「アキラさん、朝はパンとご飯のどっち派ですか?」
「別にこだわりはないけど……でも確か食パンは切らしてた気が……」
「はい。ですので、ちゃんと買ってきてありますよ♪」
そう言って、ツキはテーブルの上に置かれているコンビニの袋を指し示した。
もはや当然のように食料の備蓄も把握されてしまっていることについては、もうツッコミを入れるタイミングは来ないのだろう。
「ごはんは今から炊飯すると時間がかかってしまうので、パックご飯を買ってきてあります。どっちにしますか?」
「……じゃあ、パンで。なんか、色々買って来てくれたみたいで申し訳ない」
コンビニの袋にはパンとご飯以外にも色々と入っているようだ。
確認できるだけでも、卵のパックとベーコンが透けて見えている。
「いえいえ。私の朝食もついでに買っていますので」
「いくら? ツキの朝食の分も払うけど」
「気になさらなくていいんですよ。後で体で払ってもらえたら、私はそれで満足ですから……♡」
「1000円前後の借りで体を要求されるとか、割に合ってなさすぎる……」
とりあえず、無理やりツキのパーカーのポケットに2000円をねじ込んでおいた。
ねじ込む際、ツキがわざとらしく嬌声を上げていたが、さっさと忘れることとする。
「はい、どうぞ召し上がれ♪」
きつね色のトースト。
パリッと焼かれたウインナー。
カリカリのベーコン。
両面を焼いた目玉焼き。
彩鮮やかなコンビニサラダ。
洋風の朝食としては満点と言っても差し支えない献立だろう。
既製品だったり調理法がシンプルだったりはするものの、買い物から準備までしてもらえたというだけで感謝の極みだ。
「いただきます」
両手を合わせて、しっかりとツキに向かって感謝を示す。
そして、バターが溶け出しているトーストに口を付けた。
「どうですか?」
「うん、すごく美味しい」
「……今、アキラさんがどんな顔をしてるか言ってあげましょうか?」
「え?」
「私が作ったカルーアミルクを大げさに褒めてくれた時と同じ顔をしてますよ」
「っ!」
ツキの突然の発言に、思わずむせてしまった。
「なっ、いきなり何を……!」
「私がお世辞に気付いていないと思ってました? あんな混ぜただけの飲み物が、特別美味しくなるわけないじゃないですか。そのトーストも、ウインナーも、目玉焼きだって、ぜーんぶ焼いただけなんですから。不味くはなくても、普通の味しかしないってわかってますよ」
「それは……」
ツキの言葉を否定することはできない。
ツキの料理を翠が大げさに褒めたのは変えようのない事実だ。
「無理に褒められるのは嫌なんです。嘘を混ぜられると、本当に褒めてもらえたとしても不安になってしまうので」
「……すみませんでした」
「いえ。こっちこそ、食事中に小うるさいこと言ってしまってすみません」
ツキは申し訳なさそうにはにかんだ。
それは無理に笑って誤魔化そうとしているのが伝わってくるような、そんなかたい笑みだった。
「……でも、誇張してしまったのは、料理を作ってもらえた感謝をちゃんと伝えたかったからで……まあ、それを料理の感想に上乗せしてしまったのは、ツキの指摘通り良くなかったけれども……」
「……」
「つまりは……味は普通だけれども、朝ごはんを用意してもらえてとても嬉しいです……」
「……私も、アキラさんに喜んでもらえてとても嬉しいですよ」
「……」
「……」
何故、急にこんな空気になってしまったのだろうか。
まさか貞操を奪われかけた相手と、青春の1ページのような甘酸っぱい空間を共有することになるなんて。
こんなこと、神様も予想できなかったことだろう。
「それと、ちゃんとわかってますからね?」
「わかってるって……何が?」
「アキラさんが私のこと可愛いって褒めてくれた時は、ちゃんと本気だったってこと……♡」
そう言ってツキはペロリと唇を舐めながら、
先ほどのぎこちない笑みが信じられなくなるような、
生意気で淫靡的な微笑みを浮かべた。
やっぱり甘酸っぱくなんてなかったし、朝っぱらから発情するのは本当に止めていただきたい。
「別にこだわりはないけど……でも確か食パンは切らしてた気が……」
「はい。ですので、ちゃんと買ってきてありますよ♪」
そう言って、ツキはテーブルの上に置かれているコンビニの袋を指し示した。
もはや当然のように食料の備蓄も把握されてしまっていることについては、もうツッコミを入れるタイミングは来ないのだろう。
「ごはんは今から炊飯すると時間がかかってしまうので、パックご飯を買ってきてあります。どっちにしますか?」
「……じゃあ、パンで。なんか、色々買って来てくれたみたいで申し訳ない」
コンビニの袋にはパンとご飯以外にも色々と入っているようだ。
確認できるだけでも、卵のパックとベーコンが透けて見えている。
「いえいえ。私の朝食もついでに買っていますので」
「いくら? ツキの朝食の分も払うけど」
「気になさらなくていいんですよ。後で体で払ってもらえたら、私はそれで満足ですから……♡」
「1000円前後の借りで体を要求されるとか、割に合ってなさすぎる……」
とりあえず、無理やりツキのパーカーのポケットに2000円をねじ込んでおいた。
ねじ込む際、ツキがわざとらしく嬌声を上げていたが、さっさと忘れることとする。
「はい、どうぞ召し上がれ♪」
きつね色のトースト。
パリッと焼かれたウインナー。
カリカリのベーコン。
両面を焼いた目玉焼き。
彩鮮やかなコンビニサラダ。
洋風の朝食としては満点と言っても差し支えない献立だろう。
既製品だったり調理法がシンプルだったりはするものの、買い物から準備までしてもらえたというだけで感謝の極みだ。
「いただきます」
両手を合わせて、しっかりとツキに向かって感謝を示す。
そして、バターが溶け出しているトーストに口を付けた。
「どうですか?」
「うん、すごく美味しい」
「……今、アキラさんがどんな顔をしてるか言ってあげましょうか?」
「え?」
「私が作ったカルーアミルクを大げさに褒めてくれた時と同じ顔をしてますよ」
「っ!」
ツキの突然の発言に、思わずむせてしまった。
「なっ、いきなり何を……!」
「私がお世辞に気付いていないと思ってました? あんな混ぜただけの飲み物が、特別美味しくなるわけないじゃないですか。そのトーストも、ウインナーも、目玉焼きだって、ぜーんぶ焼いただけなんですから。不味くはなくても、普通の味しかしないってわかってますよ」
「それは……」
ツキの言葉を否定することはできない。
ツキの料理を翠が大げさに褒めたのは変えようのない事実だ。
「無理に褒められるのは嫌なんです。嘘を混ぜられると、本当に褒めてもらえたとしても不安になってしまうので」
「……すみませんでした」
「いえ。こっちこそ、食事中に小うるさいこと言ってしまってすみません」
ツキは申し訳なさそうにはにかんだ。
それは無理に笑って誤魔化そうとしているのが伝わってくるような、そんなかたい笑みだった。
「……でも、誇張してしまったのは、料理を作ってもらえた感謝をちゃんと伝えたかったからで……まあ、それを料理の感想に上乗せしてしまったのは、ツキの指摘通り良くなかったけれども……」
「……」
「つまりは……味は普通だけれども、朝ごはんを用意してもらえてとても嬉しいです……」
「……私も、アキラさんに喜んでもらえてとても嬉しいですよ」
「……」
「……」
何故、急にこんな空気になってしまったのだろうか。
まさか貞操を奪われかけた相手と、青春の1ページのような甘酸っぱい空間を共有することになるなんて。
こんなこと、神様も予想できなかったことだろう。
「それと、ちゃんとわかってますからね?」
「わかってるって……何が?」
「アキラさんが私のこと可愛いって褒めてくれた時は、ちゃんと本気だったってこと……♡」
そう言ってツキはペロリと唇を舐めながら、
先ほどのぎこちない笑みが信じられなくなるような、
生意気で淫靡的な微笑みを浮かべた。
やっぱり甘酸っぱくなんてなかったし、朝っぱらから発情するのは本当に止めていただきたい。
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