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親睦偏
映画館に来ました
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「んで? 今日はどこに出かけるんだ?」
朝食を終えて。
身支度も終えて。
後は出かけるだけという段階になって、ようやく今日の本題に意識が回り始めた。
朝っぱらからツキの性欲に振り回されっぱなしだけれど、今日はツキとデートをするのだ。
今までの比ではなく、おそらくはジャイアントスイング並みに振り回されることになるのだろう。
いったい、これからどこに連れていかれるのだろうか。
「まずは映画を観に行きましょう」
「映画か……意外とテンプレなんだな」
「王道と言ってください。清楚な女の子が好きな童貞脳のアキラさんもそういうデートがお好みでしょう?」
「……余計な枕詞は付けないでくれ」
「否定はされないんですか?」
「……」
「えへへっ、すみません。否定したくても、できないんですもんね♡」
「ぐっ……」
「あっ、その悔しそうな目……♡ もしかして私わからせられちゃいますか……♡」
ツキの色欲脳に付き合っていては一向に話が進まない。
デートを持ち掛けたのはツキの方なのに、さっきからベッドインを狙うチャンスを窺っているように思えてならなかった。
「……出かけるならさっさと行こう」
「あーっ、ちょっと待って! コートを着るまで待っててください! 一人で外出ちゃイヤです! 一緒に出ましょうよー!」
人でごったがえしたエントランス。
上映スケジュールの表示された巨大ディスプレイ。
賑やかな物販スペースと、人の列を形成している売店。
照明は薄暗いのに活気に溢れているここは、少し特殊な雰囲気がある。
誰かと映画館を訪れるなんて学生時代以来だ。
青春真っ盛りの当時だってむさくるしい男友達としか来た事が無かったというのに、今は――
「んー、どれ観ましょうかねー……。アキラさんはどれか観たいのありますか?」
壁に並んだ映画ポスターを吟味していたツキがくるっと振り返る。
コートで着膨れしていて、中に着ているのもパーカーとジーンズな今のツキは決して可愛らしい格好ではない。
それでもその仕草が愛らしいのは、ツキが可愛いに本気で向き合って来た成果なのかもしれない。
メディアで美少女と持て囃される少女たちと遜色ないビジュアルを持つツキ。
そんなツキといっしょに映画館に居るというのは、正直同性であっても悪い気分ではなかった。
「これとかどうですか?」
そう言ってツキが指さしたのは、ブロンドの男女が裸で抱き合っている映画ポスターだった。
知らないタイトルだが、それが濃厚で過激なラブロマンスなのは十分に伝わってくる。
「……あからさまなのを勧めてくるな」
「観ている最中に催して来ちゃったら合図してくださいね♡」
ツキの戯言は無視するとして、映画選びは重要だ。
ふたりともが退屈していれば途中で抜ければいいが、
片方が熱中してしまうとそういうわけにもいかない。
面白いかどうかは博打としても、せめて互いに興味のあるジャンルを選ぶくらいはしておきたいものだけれど。
「んー……悩むな……」
普段は映画館に来てから映画を選ぶなんてことはしない。
映画館に来るのは、観たい映画があるからだ。
こうしてポスターを前にして選ぶのは悩ましくはあるが、新鮮でもあった。
「あっ、これなんてどうだ?」
「どれですか? …………ホラー……ですか……」
それは今ネットで話題のホラー映画だった。
なんでもただのオカルトホラーではなく、
人間模様を濃密に描いたサスペンスと、
爽快なミステリーが融合しているとかなんとか。
「これ、今話題になってるだろ? わざわざ映画館に来てまで観ようとは思ってなかったけど、せっかくの機会だからちょっと観てみたいな」
「…………」
「ツキ? どうした?」
「いえ…………。アキラさんが観たいなら、私はこれでもいいですよ?」
「んじゃ、これにしようか」
映画が決まったところで、さっそくチケットを買いに売り場へと向かった。
直近の上映の席がまだ残っていると都合がいいのだが。
「…………ばか」
朝食を終えて。
身支度も終えて。
後は出かけるだけという段階になって、ようやく今日の本題に意識が回り始めた。
朝っぱらからツキの性欲に振り回されっぱなしだけれど、今日はツキとデートをするのだ。
今までの比ではなく、おそらくはジャイアントスイング並みに振り回されることになるのだろう。
いったい、これからどこに連れていかれるのだろうか。
「まずは映画を観に行きましょう」
「映画か……意外とテンプレなんだな」
「王道と言ってください。清楚な女の子が好きな童貞脳のアキラさんもそういうデートがお好みでしょう?」
「……余計な枕詞は付けないでくれ」
「否定はされないんですか?」
「……」
「えへへっ、すみません。否定したくても、できないんですもんね♡」
「ぐっ……」
「あっ、その悔しそうな目……♡ もしかして私わからせられちゃいますか……♡」
ツキの色欲脳に付き合っていては一向に話が進まない。
デートを持ち掛けたのはツキの方なのに、さっきからベッドインを狙うチャンスを窺っているように思えてならなかった。
「……出かけるならさっさと行こう」
「あーっ、ちょっと待って! コートを着るまで待っててください! 一人で外出ちゃイヤです! 一緒に出ましょうよー!」
人でごったがえしたエントランス。
上映スケジュールの表示された巨大ディスプレイ。
賑やかな物販スペースと、人の列を形成している売店。
照明は薄暗いのに活気に溢れているここは、少し特殊な雰囲気がある。
誰かと映画館を訪れるなんて学生時代以来だ。
青春真っ盛りの当時だってむさくるしい男友達としか来た事が無かったというのに、今は――
「んー、どれ観ましょうかねー……。アキラさんはどれか観たいのありますか?」
壁に並んだ映画ポスターを吟味していたツキがくるっと振り返る。
コートで着膨れしていて、中に着ているのもパーカーとジーンズな今のツキは決して可愛らしい格好ではない。
それでもその仕草が愛らしいのは、ツキが可愛いに本気で向き合って来た成果なのかもしれない。
メディアで美少女と持て囃される少女たちと遜色ないビジュアルを持つツキ。
そんなツキといっしょに映画館に居るというのは、正直同性であっても悪い気分ではなかった。
「これとかどうですか?」
そう言ってツキが指さしたのは、ブロンドの男女が裸で抱き合っている映画ポスターだった。
知らないタイトルだが、それが濃厚で過激なラブロマンスなのは十分に伝わってくる。
「……あからさまなのを勧めてくるな」
「観ている最中に催して来ちゃったら合図してくださいね♡」
ツキの戯言は無視するとして、映画選びは重要だ。
ふたりともが退屈していれば途中で抜ければいいが、
片方が熱中してしまうとそういうわけにもいかない。
面白いかどうかは博打としても、せめて互いに興味のあるジャンルを選ぶくらいはしておきたいものだけれど。
「んー……悩むな……」
普段は映画館に来てから映画を選ぶなんてことはしない。
映画館に来るのは、観たい映画があるからだ。
こうしてポスターを前にして選ぶのは悩ましくはあるが、新鮮でもあった。
「あっ、これなんてどうだ?」
「どれですか? …………ホラー……ですか……」
それは今ネットで話題のホラー映画だった。
なんでもただのオカルトホラーではなく、
人間模様を濃密に描いたサスペンスと、
爽快なミステリーが融合しているとかなんとか。
「これ、今話題になってるだろ? わざわざ映画館に来てまで観ようとは思ってなかったけど、せっかくの機会だからちょっと観てみたいな」
「…………」
「ツキ? どうした?」
「いえ…………。アキラさんが観たいなら、私はこれでもいいですよ?」
「んじゃ、これにしようか」
映画が決まったところで、さっそくチケットを買いに売り場へと向かった。
直近の上映の席がまだ残っていると都合がいいのだが。
「…………ばか」
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