上司に連れられていったオカマバー。唯一の可愛い子がよりにもよって性欲が強い

papporopueeee

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親睦偏

気を遣っていました

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「別に気にしなくていいと思いますよ? というか、気にする要素がどこにもないですよ?」
「そう言ってくれるのはありがたいけど……でもやっぱ気にはするよ」
「それじゃあ、逆にアキラさんは何をそんなに気にしてるんですか? 今日の私はアキラさんに合わせて中性的なボーイッシュコーデですし、今時は男性が化粧をしてもおかしくないです。あの店員さんだって、私の格好は女装じゃなくてファッションの一つとして受け取ってたと思いますよ?」

 それはそうかもしれない。
 店員はツキの性別を間違えて焦りはしていたものの、そこに奇異を見る目は混ざっていなかった。

 ツキの発言が聴こえていた周囲の人間たちもきっと同じだ。
 そもそもとして女装をしていたとしても、ツキにはそれが似合うのだから。
 驚きはするかもしれないが、ツキを見る目に負の感情は入る余地がない。
 ツキも言っていた通り、最近は性の在り方に寛容な時代でもある。

 でもそこじゃない。
 翠が気にしているのは、あくまでツキの内面のことで――

「だから、いっしょに居たアキラさんだって変な目で見られたりしてないですよ」
「いや、そんなことは最初から気にしてない。俺が気にしてるのは……」
「気にしてるのは?」
「……ツキに、自分の口から、私は男だって言わせたことだよ」
「……? それの何が気になるんですか? 引っかかる要素無くないですか?」

 ツキは得心がいかないという様子だ。
 この様子だと本当に何も気にしていないらしく、杞憂だったらしい。

 後悔が薄れて心が軽くなっていく心地だが、気にしていなさすぎるのもそれはそれで気になった。

「私が可愛い可愛い男の子なことなんて、アキラさんの前で何度も言ってるじゃないですか」
「そうだけど……でも、今日は公共の場で知らない人相手だっただろ……。少しは気にするかもなって……」
「んー? それはつまり、アキラさんが特別なだけで、他の人相手だと自分の性別も言えない人見知りだと思われてます、私? 初対面のは演技だったって、まだ信じてくれてない感じです?」
「そうじゃなくて……っ。ツキは、色々と内面が複雑だろ……?」
「ふく、ざつ……? 私がですか? 私、自分の脳内は真っピンクだと自負しているんですけど……複雑って、濃淡的な意味ですか?」
「そうじゃなくて…………っ、ツキは、体と心の性別が、合っていないから……」

 それはできる事なら口にしたくはなかった。
 ツキもそれには触れてこなかったから。

 自分から触れないのは、触れられたくないからかもしれない。
 性に開放的なツキでも、そういう部分があってもおかしくない。

 だから翠も触れてこなかった。
 触れないようにしてきたけれど、しかしツキの嗜好と思考を考えればそれは明らかだ。

 男性を愛し、女装を好むツキは、どう考えたって性同一性障害で――

 ――それは名前の通り障害として認知されていて――

「心の性別…………えっ!? もしかして私の心が女の子だって言ってるんですか?」
「……」

 もしかしたら、ツキは触れてこなかったのではなく、自覚していなかったのかもしれない。
 そう思わせるような、そんな素っ頓狂な声だった。
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