上司に連れられていったオカマバー。唯一の可愛い子がよりにもよって性欲が強い

親睦偏

ツキは強く思われたいようです？

「どういう意味だ？　ツキが好きなのは童貞だけなんだろ？」

　童貞じゃなくなった途端に興味を失くしてしまう。
　それはついさっきツキ自身が明言したばかりだ。

　それなのに、翠だけはそうじゃないなんて都合が良すぎる。
　ホテルに連れ込むために甘言を吐いているだけとしか思えない。

「それは間違いないです。今の私が抱いているアキラさんへの熱望が、初夜を迎えた後の朝にもあるとは思えません。やっぱり、それはアキラさんの童貞くささがあってこそですので……♡」
「初夜とか言うな……それはまた別の意味だ」
「同じですよ♪　３０近くになるまで童貞さんだった人は、初めてを捧げた相手のことをそれくらい強く思ってしまうって、私知ってるんですから♡」

　今までに数多の童貞を食ってきたモンスターの発言だからだろうか。
　納得したくはなかったが、ツキの言葉には説得力があった。

「でも、それじゃあダメなんです。ツキちゃんの事をお嫁さんと同じくらいに思うだけじゃ、全然足りてないんですよ……♡」
「そういうことか……」

　ツキが童貞のみを好むのは承認欲求が満たされるからだ。
　同性愛者ではない人間に初めてを捧げさせることでしか得られない快感の中毒になっているから、ツキは童貞ではなくなった人間への興味を失くしてしまう。

　逆に言えば、それに代わるほどの承認欲求をツキに与えられればいいわけだ。
　童貞を貪るよりもツキを充実させることができるのなら、ツキを振り向かせ続けられるだろう。

　しかし――

「……それなら、やっぱり俺もツキを抱けばその他大勢になるんじゃないか？」
「どうしてですか？　私、アキラさんには結構期待してるんですよ？」
「なんでだよ……」
「フィーリングです♡」
「……なら、ツキの感覚はポンコツなんだろうな」
「えーっ？　でも、ツキちゃんのレーダーはちゃんとアキラさんに反応してますよ？　もう股間がビンビンに反応しちゃって……大変なんですから♡」
「……まあ、下ネタは置いておくとして」
「ネタじゃなくてガチですよ……ガッチガチです……♡」
「……百歩譲ってツキの言う通りだとしてもだ。今までにツキに童貞を捧げてきた男たちよりも、俺の方が強い感情を抱いているとは到底思えないんだよ。……正直、ホテルに行ったとしてもツキを抱けるかは微妙だしな」

　ツキに惹かれているのは事実だ。
　ツキの外見には魅力を感じているし、ツキと過ごす時間にも心地良さを感じている。

　しかしそれでも、同性と性行為をする壁は高い。
　絶対にツキを抱きたくないとは思わないが、躊躇なく抱くことも絶対に無理だ。

　したがって、こんな翠よりも強くツキを思う人間が居なかったはずがないのである。

「そうやって躊躇してる人の方が、童貞じゃなくなった後の昂りが凄かったりするんですよ……もう、ツキちゃんがギブしちゃうくらい離してくれなかったりとか……♡」
「……悪いけど、そんな期待に応えられるとは思えないな」
「そんなこと言わないで、自信持ってください！　アキラさんならきっと、私のことを性奴隷にしてくれるって信じてるんですから！」
「いや、そんなこと言われても…………ちょっと待て、今なんて言った？」