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親睦偏
怒らせてしまいました
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「……」
「……」
動画が終わって――
スマホがスリープモードに入って――
暗い画面に写り込むふたりの顔を黙って眺めていたら――
「あーあー……」
突然、ツキは心底残念そうな溜め息を漏らした。
「なんだよ……」
「ついに知られちゃったな―って……」
「知られたって、何をだよ?」
「だからー……メイクでどれだけ可愛くなれるのかってことをですよ……。わかりましたよね? メイクさえできれば、いくらでも可愛くなれちゃうんだって……」
「それがなんだって言うんだよ」
「だーかーらー……今は超絶可愛いツキちゃんも、メイクを落としたら……そうでもないかもって話ですよ……」
弱々しく吐き出されるツキの声。
いつものような元気は無く、見た目通りのか弱い乙女のような話し方。
おそらく、これは演技ではないのだろう。
今まで散々ツキには翻弄されてきたけれども。
今だけは、きっとツキは本心を見せてくれている。
ずっと隠していた本音/弱音を晒してくれている。
「別に、それはツキに限った話じゃないだろ。化粧をしている人全員に言える事だ」
「そうですけど……そうですけどー……!」
「な、なんだよ……!」
ツキの後頭部がぐりぐりと胸を押し上げてくる。
「……私は、男性ですから」
「知ってるよ」
「いいえ……知りませんよ」
ツキは首を横に振りながら言った。
「アキラさんは知らないんです。アキラさんだけじゃなくて、みんな……私に女性的な可愛さを見出している人は全員知らないんですよ……。女性は、メイクを落としたって女性です。でも、私は……メイクを落としたら……」
「……」
「私はたくさんの男の人たちに愛されています。みんなが可愛い可愛いって求めてくれます。でも、それは全部……メイクをばっちり決めた、男の娘としてのツキちゃんに対してなんですよー……。みんなみーんな……私のすっぴんを知ったら……どうせ……」
弱音を吐き出し始めたことによって、ようやくアルコールが回り出したのだろうか。
まるで泣き上戸のように、今のツキはネガティブ全開なようだ。
「もしかしたら、すっぴんのツキも愛してくれるかもしれないだろ?」
「ふーんだ……見たこともないクセに、そんな上辺だけの言葉じゃ慰めにもなりませんよーだ」
「それなら、すっぴんを見せてくれよ」
「見せるわけないじゃないですか! バカなんですか!?」
挙句の果てには逆切れである。
なんだか、普段よりも今のツキの方が女性的な様な気がした。
「それなら、ツキはどうすれば満足なんだ?」
「だから……抱いてくださいよ……。めちゃくちゃに抱いて、愛して……死んじゃうくらい可愛いって言ってくださいよ……」
「メイクをしたツキにか?」
「~~っ! それを忘れるくらいめちゃくちゃにしてって言ってるんですよ!!」
「っ!?」
それは、突然のことだった。
そんな雰囲気でもなかったのに。
ムードも最悪だったのに。
気付けば視界いっぱいにツキの顔が広がっていて――
――唇は、柔らかい何かで塞がれていた。
「……」
動画が終わって――
スマホがスリープモードに入って――
暗い画面に写り込むふたりの顔を黙って眺めていたら――
「あーあー……」
突然、ツキは心底残念そうな溜め息を漏らした。
「なんだよ……」
「ついに知られちゃったな―って……」
「知られたって、何をだよ?」
「だからー……メイクでどれだけ可愛くなれるのかってことをですよ……。わかりましたよね? メイクさえできれば、いくらでも可愛くなれちゃうんだって……」
「それがなんだって言うんだよ」
「だーかーらー……今は超絶可愛いツキちゃんも、メイクを落としたら……そうでもないかもって話ですよ……」
弱々しく吐き出されるツキの声。
いつものような元気は無く、見た目通りのか弱い乙女のような話し方。
おそらく、これは演技ではないのだろう。
今まで散々ツキには翻弄されてきたけれども。
今だけは、きっとツキは本心を見せてくれている。
ずっと隠していた本音/弱音を晒してくれている。
「別に、それはツキに限った話じゃないだろ。化粧をしている人全員に言える事だ」
「そうですけど……そうですけどー……!」
「な、なんだよ……!」
ツキの後頭部がぐりぐりと胸を押し上げてくる。
「……私は、男性ですから」
「知ってるよ」
「いいえ……知りませんよ」
ツキは首を横に振りながら言った。
「アキラさんは知らないんです。アキラさんだけじゃなくて、みんな……私に女性的な可愛さを見出している人は全員知らないんですよ……。女性は、メイクを落としたって女性です。でも、私は……メイクを落としたら……」
「……」
「私はたくさんの男の人たちに愛されています。みんなが可愛い可愛いって求めてくれます。でも、それは全部……メイクをばっちり決めた、男の娘としてのツキちゃんに対してなんですよー……。みんなみーんな……私のすっぴんを知ったら……どうせ……」
弱音を吐き出し始めたことによって、ようやくアルコールが回り出したのだろうか。
まるで泣き上戸のように、今のツキはネガティブ全開なようだ。
「もしかしたら、すっぴんのツキも愛してくれるかもしれないだろ?」
「ふーんだ……見たこともないクセに、そんな上辺だけの言葉じゃ慰めにもなりませんよーだ」
「それなら、すっぴんを見せてくれよ」
「見せるわけないじゃないですか! バカなんですか!?」
挙句の果てには逆切れである。
なんだか、普段よりも今のツキの方が女性的な様な気がした。
「それなら、ツキはどうすれば満足なんだ?」
「だから……抱いてくださいよ……。めちゃくちゃに抱いて、愛して……死んじゃうくらい可愛いって言ってくださいよ……」
「メイクをしたツキにか?」
「~~っ! それを忘れるくらいめちゃくちゃにしてって言ってるんですよ!!」
「っ!?」
それは、突然のことだった。
そんな雰囲気でもなかったのに。
ムードも最悪だったのに。
気付けば視界いっぱいにツキの顔が広がっていて――
――唇は、柔らかい何かで塞がれていた。
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