死の間際、あなたは親友ですか?

papporopueeee

文字の大きさ
2 / 84
プロローグ:日常が変革された日 

立てられた証

しおりを挟む
「喧しい」

 骸骨が鎌の柄で床を叩いた。
 その衝撃で刃から血の雫が零れ落ちる。

「ぁっ! ふぅっ ……ぐ! あ、あぐ、うぅ……」

 静かにしたくても嗚咽は簡単には止まってはくれない。
 怒鳴られた子供のように、ボクは必死に涙を止めようと努力しながらも咽び泣いた。

「げほっ! うぐぅっ、ぁ、はぁ、うぅ……」
「……」

 必死の努力が功を奏したのか。
 それとも哀れと思われたのか。
 骸骨は鎌をボクに向けることはなく、友人の遺体へ向き直ると落ちていた頭を白い手で拾い上げた。

 どうするつもりなのか。
 まさかまだ友人に惨い仕打ちをするつもりなのか。
 そうだとしても、ボクには何もできない。
 大人しくしていようと殺されるとわかっていても、この骸骨に反抗する気力が少しも湧いてこない。

 必死に呼吸を整えながら挙動を窺っていると、骸骨はその手に持った頭を座り込んでいる首無し遺体の上にポンと置いた。

「…………え?」

 その意図も、意味も、なにもかもがわからない。

 積み木のように遺体の上に首を積んだところで、そんなことをしたって何が起こるって――

「うおおおぉぉっ! 俺死んだああぁぁぁっ!」
「……は?」

 それはありえないことだった。
 骸骨の出現もありえる事ではなかったが、これは殊更にありえない。

「あれ、生きてるっ?」
「な、なんで? し、ショウ? ショウなのか?」
「え、そ、そうだけ……ど? あれ、いま俺死ななかった?」

 友人の首は繋がっていた。
 その首に繋ぎ目は存在しない。
 触って確かめても、不自然な箇所はどこにもない。

 零れていた血の跡は床に染み付いていることから、ボクの見間違いではない。
 友人の首は一度落とされていることは確かで、ボクの目の前でうろたえているのが本物の友人だということも事実だった。

「私が殺し、そして蘇生させた」

 骸骨が重く低い声でショウに向かって話し出した。

 友人は生き返った。
 骸骨によって一度殺され、そして殺した張本人によって蘇生された。

 なぜだ。
 どうしてそんなことをこの骸骨はしたのか。

「答えよ。汝が死した時、痛みはあったか? 苦しみはあったか? 恐怖は感じたか?」
「え……? いや、そういうのは特に……一瞬すぎて、何も感じなかったけど……」

 友人の言葉を聞いた骸骨は、向き直ってその仮面をボクに向けた。

「この言葉を以て証とする。遺言を言え」
「……」

 言葉が出ない。
 安寧なる死を与えるという証明のために友人を殺し、そして蘇生したと、この骸骨は言っているのだ。

「む、無茶苦茶だ……」
「遺言を言え」

 この骸骨は異常だ。
 部屋に現れた方法も、友人を殺し蘇生したことも、どれも人知を超えている。

 でも、希望は見えた。
 この骸骨は理不尽ではあっても不条理ではない。
 その気になれば人を殺すのなんて一瞬で終わらせることができるのに、遺言とか死を拒む理由とかを訊いては、その返答に律儀に応じている。

「……」

 もしかしたら、ボクは生き延びることができるかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...