3 / 84
プロローグ:日常が変革された日
死後の願望
しおりを挟む
「遺言を言え」
「し、死んだらどうなる?」
「お前が知る必要はない」
「だ、だったら死にたくない。死んだらどうなるのかわからない状態で殺されるのは嫌だ!」
「では、死後の願望を叶えよう」
「……は?」
「汝の死後の願望を言え」
骸骨はまたも友人へと問いかけた。
自分が死した後に叶えられる願い。
もし天国に行きたいと答え、それが実現するのだとしたら。
死を拒む決意が揺るがない人間はどれくらいいるのだろうか。
「ショ、ショウ……」
きっと、友人はまたボクへの証のために殺される。
そして、また蘇生されるのだろう。
「……」
友人の様子を窺うと、目を伏せぶつぶつと呟きながら真剣に考えている様子だ。
骸骨が話の通じる存在だとわかり、少し落ち着きを取り戻しているようにも見える。
実際に友人を蘇生させたことから、骸骨は大抵の願いを実現できるに違いない。
殺されてもどうせすぐに蘇生させられて、感想を訊かれることもわかってる。
ボクにできるのは、友人がこの場を切り抜けるような願いを言ってくれることを望むだけだ。
数分後、友人は意を決したように骸骨に顔を向けた。
「美少女に転生した――」
ゴドン、という重い音は、友人の言葉を遮るように響き渡った。
首切り死体も二回目だからか、それとも蘇生されるとわかっているからか、先ほどよりもショックは小さかった。
それでもあまり見たいものではないことには変わりなく、ボクは床を転がるそれから目を背けた。
友人は死後の願いを美少女に転生することとした。
現代の技術では完全な性転換は難しい。
超常の力を持った骸骨への願いとしては見合っているのかもしれない。
しかし、イケメンな風体をしている友人がそんな願望を秘めていることは知らなかった。
自身の性別に人知れず悩んでいたのか、それとも女好きが高じたが故の欲望なのか。
その真意を訪ねたら、友人は教えてくれるだろうか。
「……」
骸骨とふたりきりの空間に重い沈黙が降りる。
友人の遺体が側にあるというのはあまり気持ちのいいものではない。
「……」
友人は今ごろ来世で美少女として人生を楽しんでいるのだろうか。
そういえば、蘇生をした後は転生した友人はどうなるのか。
パラレルワールド的に転生後は転生後としてそのまま生き続けるのか。
それとも、転生して寿命を全うしてから蘇生させるのか。
「……」
思考を巡らせていたって仕方がない。
すべては友人に直接尋ねればわかる話だ。
したがって、骸骨にはさっさと友人の蘇生をしてもらいたいのだが……。
「……」
ボクの思いとは裏腹に、骸骨はいつまでたっても身動きひとつせず、友人の首を拾い上げる素振りも見せなかった。
「ま、まだ生き返らせないのか?」
「その必要はない」
「え……熱っ?」
何の前触れもなく燃え上がる炎。
発火元はボクのすぐ近く。
首を落とされた友人の遺体だった。
「お、おい、なんだよこれ……! おい、早く火を消せよ!」
「……」
呼びかけても骸骨の反応はなく、そうしてる間にも友人の遺体は燃えていく。
「くそっ!」
テーブルの上にあったペットボトルをひっくり返し、遺体に水をかける。
しかし水は炎に呑まれ、じゅわじゅわと音を立てながら消えていくばかりだった。
「なっ、なんだよ、これ!」
「無駄だ。黙って見ているがいい」
遺体が急に燃えるなんて普通はありえない。
どう考えたって骸骨の仕業だ。
骸骨の力によって生じた炎がボクに消せるはずもなく。
炎は遺体全体を包み込み燃え盛る。
「っ……なんなんだよ……」
遺体が燃えているのは間違いない。
炎の熱さも感じる。
しかし、不思議なことに燃えるのは友人の体と服だけで、何かに燃え移るような様子はない。
人が燃えているというのに、なんの匂いもしない。
蘇生方法は首を繋げることではなかったのか。
わざわざ遺体を燃やす理由はなんなのか。
この後にも友人を蘇生させることはできるのか。
思考が廻っている間にも遺体は燃え続け、友人はさらさらとした灰の山に成り果ててしまった。
「……こ、ここから蘇生させるんだよな?」
「否」
骸骨は重く低い声で、明確に否定した。
「っ……だ、だって、生き返らせてまた証言させるんだろ? そうじゃないと、死後の願いを叶えた証拠がないだろ?」
「否」
それは、薄々感じていたことだった。
「だ、だって、ショ、ショウの願望を叶えるって……」
「死後の願望だ」
殺されてもどうせ蘇生してくれるなんて。
この骸骨が、そんな都合の良い存在なわけがなかった。
「で、でも――」
あまりも唐突すぎる離別。
親友が目の前で殺されて、今際の言葉も満足に交わせなかった。
鼻の奥がきゅぅっと痛み、目の淵に涙が溢れだす。
「ショウ……っ。嘘だろ、ショウ……!」
その時、部屋の中に声が響いた。
ボクの呼びかけに応じるかのように。
甲高く、煩わしく、それでいて保護欲を煽られる。
人間の赤ん坊の声が聴こえた。
「し、死んだらどうなる?」
「お前が知る必要はない」
「だ、だったら死にたくない。死んだらどうなるのかわからない状態で殺されるのは嫌だ!」
「では、死後の願望を叶えよう」
「……は?」
「汝の死後の願望を言え」
骸骨はまたも友人へと問いかけた。
自分が死した後に叶えられる願い。
もし天国に行きたいと答え、それが実現するのだとしたら。
死を拒む決意が揺るがない人間はどれくらいいるのだろうか。
「ショ、ショウ……」
きっと、友人はまたボクへの証のために殺される。
そして、また蘇生されるのだろう。
「……」
友人の様子を窺うと、目を伏せぶつぶつと呟きながら真剣に考えている様子だ。
骸骨が話の通じる存在だとわかり、少し落ち着きを取り戻しているようにも見える。
実際に友人を蘇生させたことから、骸骨は大抵の願いを実現できるに違いない。
殺されてもどうせすぐに蘇生させられて、感想を訊かれることもわかってる。
ボクにできるのは、友人がこの場を切り抜けるような願いを言ってくれることを望むだけだ。
数分後、友人は意を決したように骸骨に顔を向けた。
「美少女に転生した――」
ゴドン、という重い音は、友人の言葉を遮るように響き渡った。
首切り死体も二回目だからか、それとも蘇生されるとわかっているからか、先ほどよりもショックは小さかった。
それでもあまり見たいものではないことには変わりなく、ボクは床を転がるそれから目を背けた。
友人は死後の願いを美少女に転生することとした。
現代の技術では完全な性転換は難しい。
超常の力を持った骸骨への願いとしては見合っているのかもしれない。
しかし、イケメンな風体をしている友人がそんな願望を秘めていることは知らなかった。
自身の性別に人知れず悩んでいたのか、それとも女好きが高じたが故の欲望なのか。
その真意を訪ねたら、友人は教えてくれるだろうか。
「……」
骸骨とふたりきりの空間に重い沈黙が降りる。
友人の遺体が側にあるというのはあまり気持ちのいいものではない。
「……」
友人は今ごろ来世で美少女として人生を楽しんでいるのだろうか。
そういえば、蘇生をした後は転生した友人はどうなるのか。
パラレルワールド的に転生後は転生後としてそのまま生き続けるのか。
それとも、転生して寿命を全うしてから蘇生させるのか。
「……」
思考を巡らせていたって仕方がない。
すべては友人に直接尋ねればわかる話だ。
したがって、骸骨にはさっさと友人の蘇生をしてもらいたいのだが……。
「……」
ボクの思いとは裏腹に、骸骨はいつまでたっても身動きひとつせず、友人の首を拾い上げる素振りも見せなかった。
「ま、まだ生き返らせないのか?」
「その必要はない」
「え……熱っ?」
何の前触れもなく燃え上がる炎。
発火元はボクのすぐ近く。
首を落とされた友人の遺体だった。
「お、おい、なんだよこれ……! おい、早く火を消せよ!」
「……」
呼びかけても骸骨の反応はなく、そうしてる間にも友人の遺体は燃えていく。
「くそっ!」
テーブルの上にあったペットボトルをひっくり返し、遺体に水をかける。
しかし水は炎に呑まれ、じゅわじゅわと音を立てながら消えていくばかりだった。
「なっ、なんだよ、これ!」
「無駄だ。黙って見ているがいい」
遺体が急に燃えるなんて普通はありえない。
どう考えたって骸骨の仕業だ。
骸骨の力によって生じた炎がボクに消せるはずもなく。
炎は遺体全体を包み込み燃え盛る。
「っ……なんなんだよ……」
遺体が燃えているのは間違いない。
炎の熱さも感じる。
しかし、不思議なことに燃えるのは友人の体と服だけで、何かに燃え移るような様子はない。
人が燃えているというのに、なんの匂いもしない。
蘇生方法は首を繋げることではなかったのか。
わざわざ遺体を燃やす理由はなんなのか。
この後にも友人を蘇生させることはできるのか。
思考が廻っている間にも遺体は燃え続け、友人はさらさらとした灰の山に成り果ててしまった。
「……こ、ここから蘇生させるんだよな?」
「否」
骸骨は重く低い声で、明確に否定した。
「っ……だ、だって、生き返らせてまた証言させるんだろ? そうじゃないと、死後の願いを叶えた証拠がないだろ?」
「否」
それは、薄々感じていたことだった。
「だ、だって、ショ、ショウの願望を叶えるって……」
「死後の願望だ」
殺されてもどうせ蘇生してくれるなんて。
この骸骨が、そんな都合の良い存在なわけがなかった。
「で、でも――」
あまりも唐突すぎる離別。
親友が目の前で殺されて、今際の言葉も満足に交わせなかった。
鼻の奥がきゅぅっと痛み、目の淵に涙が溢れだす。
「ショウ……っ。嘘だろ、ショウ……!」
その時、部屋の中に声が響いた。
ボクの呼びかけに応じるかのように。
甲高く、煩わしく、それでいて保護欲を煽られる。
人間の赤ん坊の声が聴こえた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる