死の間際、あなたは親友ですか?

papporopueeee

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プロローグ:日常が変革された日 

死後の願望

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「遺言を言え」
「し、死んだらどうなる?」
「お前が知る必要はない」
「だ、だったら死にたくない。死んだらどうなるのかわからない状態で殺されるのは嫌だ!」
「では、死後の願望を叶えよう」
「……は?」
「汝の死後の願望を言え」

 骸骨はまたも友人へと問いかけた。

 自分が死した後に叶えられる願い。
 もし天国に行きたいと答え、それが実現するのだとしたら。
 死を拒む決意が揺るがない人間はどれくらいいるのだろうか。

「ショ、ショウ……」

 きっと、友人はまたボクへの証のために殺される。
 そして、また蘇生されるのだろう。

「……」

 友人の様子を窺うと、目を伏せぶつぶつと呟きながら真剣に考えている様子だ。
 骸骨が話の通じる存在だとわかり、少し落ち着きを取り戻しているようにも見える。

 実際に友人を蘇生させたことから、骸骨は大抵の願いを実現できるに違いない。
 殺されてもどうせすぐに蘇生させられて、感想を訊かれることもわかってる。
 ボクにできるのは、友人がこの場を切り抜けるような願いを言ってくれることを望むだけだ。

 数分後、友人は意を決したように骸骨に顔を向けた。

「美少女に転生した――」

 ゴドン、という重い音は、友人の言葉を遮るように響き渡った。

 首切り死体も二回目だからか、それとも蘇生されるとわかっているからか、先ほどよりもショックは小さかった。
 それでもあまり見たいものではないことには変わりなく、ボクは床を転がるそれから目を背けた。

 友人は死後の願いを美少女に転生することとした。
 現代の技術では完全な性転換は難しい。
 超常の力を持った骸骨への願いとしては見合っているのかもしれない。

 しかし、イケメンな風体をしている友人がそんな願望を秘めていることは知らなかった。
 自身の性別に人知れず悩んでいたのか、それとも女好きが高じたが故の欲望なのか。
 その真意を訪ねたら、友人は教えてくれるだろうか。

「……」

 骸骨とふたりきりの空間に重い沈黙が降りる。
 友人の遺体が側にあるというのはあまり気持ちのいいものではない。

「……」

 友人は今ごろ来世で美少女として人生を楽しんでいるのだろうか。
 そういえば、蘇生をした後は転生した友人はどうなるのか。
 パラレルワールド的に転生後は転生後としてそのまま生き続けるのか。
 それとも、転生して寿命を全うしてから蘇生させるのか。

「……」

 思考を巡らせていたって仕方がない。
 すべては友人に直接尋ねればわかる話だ。
 したがって、骸骨にはさっさと友人の蘇生をしてもらいたいのだが……。

「……」

 ボクの思いとは裏腹に、骸骨はいつまでたっても身動きひとつせず、友人の首を拾い上げる素振りも見せなかった。

「ま、まだ生き返らせないのか?」
「その必要はない」
「え……熱っ?」

 何の前触れもなく燃え上がる炎。

 発火元はボクのすぐ近く。
 首を落とされた友人の遺体だった。

「お、おい、なんだよこれ……! おい、早く火を消せよ!」
「……」

 呼びかけても骸骨の反応はなく、そうしてる間にも友人の遺体は燃えていく。

「くそっ!」

 テーブルの上にあったペットボトルをひっくり返し、遺体に水をかける。
 しかし水は炎に呑まれ、じゅわじゅわと音を立てながら消えていくばかりだった。

「なっ、なんだよ、これ!」
「無駄だ。黙って見ているがいい」

 遺体が急に燃えるなんて普通はありえない。
 どう考えたって骸骨の仕業だ。

 骸骨の力によって生じた炎がボクに消せるはずもなく。
 炎は遺体全体を包み込み燃え盛る。

「っ……なんなんだよ……」

 遺体が燃えているのは間違いない。
 炎の熱さも感じる。

 しかし、不思議なことに燃えるのは友人の体と服だけで、何かに燃え移るような様子はない。
 人が燃えているというのに、なんの匂いもしない。

 蘇生方法は首を繋げることではなかったのか。
 わざわざ遺体を燃やす理由はなんなのか。
 この後にも友人を蘇生させることはできるのか。

 思考が廻っている間にも遺体は燃え続け、友人はさらさらとした灰の山に成り果ててしまった。

「……こ、ここから蘇生させるんだよな?」
「否」

 骸骨は重く低い声で、明確に否定した。

「っ……だ、だって、生き返らせてまた証言させるんだろ?  そうじゃないと、死後の願いを叶えた証拠がないだろ?」
「否」

 それは、薄々感じていたことだった。

「だ、だって、ショ、ショウの願望を叶えるって……」
「死後の願望だ」

 殺されてもどうせ蘇生してくれるなんて。
 この骸骨が、そんな都合の良い存在なわけがなかった。

「で、でも――」

 あまりも唐突すぎる離別。
 親友が目の前で殺されて、今際の言葉も満足に交わせなかった。

 鼻の奥がきゅぅっと痛み、目の淵に涙が溢れだす。

「ショウ……っ。嘘だろ、ショウ……!」
 
 その時、部屋の中に声が響いた。
 ボクの呼びかけに応じるかのように。

 甲高く、煩わしく、それでいて保護欲を煽られる。
 人間の赤ん坊の声が聴こえた。
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