死の間際、あなたは親友ですか?

papporopueeee

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一日目:いつものふたりで、いつもどおりに

変わる、変える

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「……イケメン様の考えることはボクにはよくわからないな」
「元な。今は美少女だぞ」
「どうせだったら中身も美少女であって欲しかったな、ボクは」
「中身か……例えばなんだが、タク。この見た目に一番マッチするのはどんな性格だと思う?」
「性格? なんの話?」
「タクと話すだけなら素のままでもいいけど、この外見でずっとこの話し方なのもおかしいだろ?」

 抄の話し方は完全に男性のそれだ。
 女性が男性口調で話してはいけないなんてルールはないが、違和感を持たれることは避けられないだろう。

「まあ、事情を知ってるボクですらちょっと違和感があるくらいだし……他の人は間違いなく怪訝な目で見るな」
「そうだろ? だから、何か演じるようの性格でも決めておいた方がいいかもと思ってな」
「女性の格好を恥ずかしがってたのに、女性の真似なんてできるのか?」

 胸を押し付けてきたりしていたし、案外そういうのは平気なのかもしれない。

「うん、できることならあからさまな女性言葉は避けたいな! 恥ずかしい!」

 どうやら嫌らしい。
 本当に、抄の中の恥ずかしい基準はどうなっているのだろうか。

「だったら敬語でいいんじゃないか? 敬語だったら男女でそう変わらないし、あとは一人称を変えれば大丈夫だろ」
「……」

 抄は急に俯いて黙りこくってしまった。
 眉間にシワが寄り、如何にも問題があるといった風だ。

「どうした?」
「……敬語は問題ないです」
「っ!?」

 レストランで受け付けに話しかけていたのと同じ、ボクの知っている高伊勢抄を全く感じさせない話し方。
 見た目も、声も、話し方も。
 今ボクの目の前には、見目麗しく物腰穏やかな女性が居る。

「敬語は男性の時にも使ってましたから、こうやってすぐにでも使えます。ただ、一人称となると少し問題がありまして……」

 その声はまるで性質の悪いアイドルソングのように。
 耳から脳へ侵入して、ボクの中身を侵していくようだ。

「タクさん?」
「あっ、ああ……いや、なんでもない。続けてくれ」
「一人称を変えるというのは難しいと思うんです。慣れが必要というか……油断すると普段使用している”俺”という言葉が出てしまう危うさがあります」
「そこは割り切るしかないんじゃないか? もしくは普段から一人称と言葉遣いを変えて練習しておくとか……」
「それもありだとは思うんですけど……んーっと……」

 抄はクレープをモクモクと食べながら考え込み始めてしまった。
 なんだか、その所作までもが丁寧になったかのように感じてしまう。

「……実は、タクさんは知らないと思うんですけど、”俺”以外にも使い慣れてる一人称があるんです。年上の女性の方をナンパする時に、一人称が”俺”だと失礼かなと思い使用しているものがあって……」

 年上の女性にセックス前提のナンパを持ちかけるのも十分失礼だと思うのだが。

「じゃあそれでもいいんじゃないか? ”俺”よりも違和感があるなんてことないだろうし」
「……ボク」
「え?」
「……ボクのことを、ボクって言ってもおかしくないですか?」
「……」
「目上の女性と話す時は、いつも”ボク”だったんです。自己分析なんですけど、男性の時の姿は、”私”より”ボク”の方が似合う見た目だと思っていたので……。でも、今のこの姿でボクというのは、どうなんでしょうか……?」
「……」
「……」
「……」
「……あっ」

 照れ隠しのようにクレープを食べ進めていた抄は、突然その動きを止めた。
 そしてすっかり量の減ったクレープをボクに差し出すと、こう言ったのだった。

「あの、クレープ……今更ですけど、食べますか?」
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