死の間際、あなたは親友ですか?

papporopueeee

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二日目:生まれて生きて、その先に

転生者の同一性乖離論

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「どした、タク。急に黙り込んで」

 少しだけ悩んだ後に、ボクは全てを話すことにした。
 ボクが思っていることを。
 目の前の少女に対して。

「……死ね神と話していたこと、なんだけどさ」
「ん?」

 ボクの顔を覗き込んでいる少女。
 彼女は正確には抄じゃない。
 ボクの親友である、高伊勢抄本人ではない。

 死ね神による転生とは、記憶を植え付けるだけだ。
 彼女は抄の遺灰の山から生まれたが、肝心の記憶が後付けで、人格もその記憶を基としている。

 そんなことはあの日から。
 抄が転生した日からわかっていたはずなのに。
 ボクはその事実から目を背けていた。

 でももう逃げる事はしない。
 抄と向き合わないのは不誠実であると思うから。

 目の前に居るのが本物ではないからこそ。 
 ボクは抄とは正面から向き合いたい。

「ショウ、お前は少女に転生した。それは間違いない」
「美少女な。しかも巨乳の」
「でも、お前は本当にショウなのか?」
「……どういう意味?」
「死ね神の施す転生って、記憶を引き継がせることなんだよ。遺灰から新しい体を作り出して、そこに記憶を植え付けるのが転生なんだ」
「ほう?」
「……ショウの時もそうだった。ショウ、最初のお前はただの女の子だったんだよ。記憶も何もなくて、自分が何者なのかも知らなくて、ボクのこともわからなかった。そこに、死ね神が記憶を与えた。それが、死ね神の言う転生だった。……記憶だけなんだよ、今のショウは。お前は、少女が記憶を頼りにショウのフリをしているだけなんじゃないのか?」
「……」

 大きな目が見開いている。
 瞳はまっすぐにボクを見ているようで。
 同時に何も見ていないようで。
 朧げな瞳は、何を見つめているのだろうか。

 小さな口が開いている。
 けれど声を漏らすことはなく。
 それでいて呼吸の音もしなくて。
 まるで人形のように固まっている。
 
 呆けている少女を、ボクは正面から無言で見つめ続けた。

 残酷なことを言った自覚はある。
 お前は偽物だなんて、そんなことまで言わなくても良かったのかもしれない。
 ただ事実だけを伝えるべきだったのかもしれない。

 少なくとも彼女の中では、自身は高伊勢抄以外の何者でもないはずなのだから。

「…………ああ」

 それは肯定ではなく。
 それは同意でもなく。
 納得を示す声だった。

「言われてみると、確かに……。転生ってのはそういうものか。なるほどな」

 大きく頷くと、彼女はうんうんと一人で考え始めてしまった。
 あっけらかんとした様子は、少し意外な反応だ。

「思ったよりも落ち着いてるんだな……。ボクはもっと取り乱すと思ってたんだけど」
「いや、驚いてるぞ。言われてみれば転生なんて記憶くらいしか引き継ぐようなものがない。だから俺は少女の体に記憶を引っ付けただけの偽物で、少なくとも本物ではないのかもしれない。それはまあまあショックだ。うん……俺はここに生きてるけど、本物じゃないっていうのは少し寂しいな」

 ボクにとっては目の前の少女が抄の偽物でも。
 彼女にとってはボクは長年連れ合った親友だ。

 そんなボクにお前は偽物だと告げられたら……心を揺さぶられないわけがない。

「でも納得できることも多いんだよな。いろんな違和感に対する回答をもらえたと言うか……妙に頭がしっくりと納得してるというか……」

 少女に特に落ち込んでいるような様子はない。
 口ぶりではショックだとか言っていたが、ボクにはそうは見えない。
 まるでテストの自己採点をしているような、軽い印象を受けてしまう。

「っ……」

 どうしてか、そんな彼女にボクはショックを受けていた。

 少しだけ。
 ほんの少しだけでも。
 偽物であることに落ち込んでほしかっただなんて。

 これがどこから来た感情なのか。
 わからないし、知りたくもないけれど。
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