死の間際、あなたは親友ですか?

papporopueeee

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最終日:朝焼けの中、涙を拭って微笑んで

死者にかける思い

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 死ね神のセンサーに引っかかったボクだけの特別。
 これは重要ではあるが、時間をかけてもわからないのでは意味がない。

「はぁー……」

 手がかりが早々に一つ潰れてかけて、否が応にも気分が沈む。

 考えることは重要だ。
 ボクが生き残る為には考えることが必要だ。
 しかし、考えたからといって報われるとは限らない。
 対象が難解であれば殊更だ。

 思考に時間を割けば真実に辿り着けるなんて保証はない。
 真実に辿り着いたからといって生き残れる確信もない。

 熱意を持って開始したばかりの作戦会議は、早くも座礁して意気消沈し始めていた。
 情緒不安定だと自嘲するが、置かれている状況を考えれば仕方がないのかもしれない。

「……ネガティブになってるのかもな、ボク」

 元々がポジティブだったと思っているわけじゃない。
 ただここ最近、人の生と死に振り回され過ぎている。

 人の生と死について思考を重ねて。
 実際の生と死に触れて。
 なんだか一気に年を取ったような気分だ。

「だったらいっそ、死んでもいい理由について考えてみるとか……」

 視点を変えれば見えてくるものも変わる。
 一度、死ね神に殺されても構わないという理由を考えてみるのはどうだろうか。

「人間は必ず死ぬ生き物だよな……」

 どうせ人間はいつか死ぬ。
 今日を生き延びたボクが、事故か何かで明日死ぬ可能性だってある。
 だから今日殺されたって、ボクの人生としては大差ないかもしれない。

 それは極端な考えだが、可能性は否定できない。
 そもそも、ボクが生きていることのメリットとはなんなのか。

 今は夢も目標もないボクが、未来でも今のボクのままなのだとしたら。
 ボクは何かに貢献することもなく、資源を消費して生きていくだけだ。
 人類という大きな視点では、ボクは必要ないどころか害虫とそう変わらないのではないか。

「なんか、やけにスラスラと出てくるな……死んでもいい理由」

 生きる理由を探すよりもよっぽど考えやすい。

 死んでもいい理由を考えやすいから、生きる理由を探せないのだろうか。
 逆に死んでもいい理由が考えられない人間は、生きる理由がすぐに出てきたりするのだろうか。

「ショウは……多分そっち側なんだろうな」

 理由がなくても生きていてもいいと易々と言い切れる抄は、間違いなくボクとは逆側だ。
 自身が死んでもいい理由なんて、抄は寿命以外では考えられないのかもしれない。

 そして、そんな抄がボクに生きろと言ってくれている。

「ショウのために生きる……か……。でもな……」

 一時はその言葉に生きる活力を見出したこともあった。
 しかし、抄はもういない。

 今のボクに言葉をかけてくれているのは、ボクに寄り添ってくれているのは、あくまで抄の記憶を持った少女だ。
 ボクにできる選択は、あの少女に尽くして生きることになる。

「別にそれが嫌なわけじゃないけど……」

 親友の遺した少女の為に生きる。
 それはなんて甘美な字面だろうか。
 生きる目的のないボクに、文字通り生きる理由を与えてくれる。

 しかし、その行いは本当に親友に報いることができているのだろうか。

 ボクには少女と抄を完全な別人として扱うことはできない。
 その中身があまりにも抄だから。

 少女を抄として接することもできない。
 少女と抄を同一視することは、親友への不義理だとボクは思っているから。

『死んでるからだよ、タク。俺はもう死んで、この世にはいないんだ』
『親友が楽しく生きてくれるならそれでいいんだよ、俺は。傍にいるのが誰であれ、例え本物のことを忘れたとしてもな』

 それは少女が口にした抄の言葉。
 抄はボクが何をしても怒らないし傷つかないと、抄の記憶が言っている。
 何故なら、抄はもう死んでいるから。

 死んだら何も残らない。
 魂なんて幻想で、ただこの意識が途絶えるだけ。

 だから抄はボクが何をしても気にしない。
 そもそも気にすることができないのだから。

 それを理解していても尚、ボクは抄の心情を思わずにはいられない。

「本当に、なんにも残ってないのかよ……ショウ……」

 弔いが死者の為ではなく、残された生者の為の行為であるのなら。
 死んだ親友の事を慮っているボクは、その死を直視できていないということだ。

 もういない人間の為に心を痛めているボクを、あの少女はどんな気持ちで見ているのだろうか。
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