死の間際、あなたは親友ですか?

papporopueeee

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最終日:朝焼けの中、涙を拭って微笑んで

殺す者

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「死ね神……」

 それはずっと其処に居たかのように佇んでいた。

「……」

 声を発さず。
 ピクリとも動かず。
 ただその仮面をボクに向けている。

「……お前を呼んだのは、ボクなのか?」
「然り」

 どうやらボクの出した解答は正解だったようだ。
 ちっとも嬉しくもないけれども。

「自ら幕を引けぬ者の代わりに幕を下ろす。それが私だ」
「……だから、ボクの前に現れたのか?」
「然り」

 死ね神は答える必要がないとは言わなかった。

 伊那西拓は夢もなければ目標もない、ただ生きているだけの人間だった。
 自分がどのように生きて、そして死ぬのか。
 それを明確にする努力もせずに、曖昧に生き続ける日々を過ごしていた。

 その場しのぎの進学を繰り返して、主体もないまま勉強をする日々。
 きっと未来でもそれは変わらなくて、勉強が労働に変わるだけ。
 そうやって今と変わらないままに生を浪費し続けて。
 その果てに無意義に人生を終える。

 そんな人生に不安を感じて悩むことはあった。
 日常のふとした瞬間に。
 成功者と自身を比較して。
 寝る前のベッドの中で。
 将来に思いを巡らせ、心を暗く沈ませる日が全く無かったわけじゃない。

 しかしそんな不安を抱いていた時間が人生に影響を与えていたかと問われれば答えはNoだ。
 一度寝て起きてしまえば将来の不安なんて消え失せて、また無為に時間を浪費するだけ。
 なぜならそれが普通だから。
 多くの人間はそうやって無為に生きて、そして死んでいく。

 ボクはそんな大衆側だった。
 何も成せず、何かを為そうとも思えない。
 どこにでも居る、熱意を持てない普通の凡人の一人。

 ボクの深層心理はその普通を許容出来なかった。

 意味のない人生を送ることの意義を。
 夢も目的も無いボクが生きる必要性を。
 ボク自身が認めることができなくて。

 死ね神がその矛盾を見つけ出した。

「……こんなボクをわざわざ殺すだなんて、ご苦労なことだな」
「それが私の存在理由だ」

 死ね神がどういう存在なのかはわからない。
 自然的に発生した生き物なのか。
 どこかの魔女だか錬金術師だかが生み出したのか。
 いつから存在するのか。
 ボクには何もわからない。

 でも、死ね神を引き寄せたのはボクだった。
 自身に生きる意味がないという評価を下しておきながら、それでも尚死ねない者。
 そんな人間を殺すのが死ね神であり、ボクとこの化け物の関係だ。

 生きている意味が無いと嘆きながらも。
 その嘆きを自覚することもできずに生きていたボクを殺す為に、こいつは現れた。
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