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聖剣使いの王子様
どっちにせよ、そんな大きな剣で殴られたら死んじゃわない?
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城の1階にある兵士たちの修練場。多くの兵士が集って剣を振るうことのできる広い空間と、剣の打ち込みができる木人が並ぶ、兵たちが日々己を鍛える場所。チェルが聖剣の加護を得てからは、熱気が薄れてしまった場所でもある。
「カイナ様、チェル様! おはようございます!」
チェルを修練場に連れ込んだ途端に、カイナは髪を金髪に染めた若い兵士に声をかけられた。
「ラノイか。おはよう」
カイナに掴まれていない方の手をヒラヒラと振って、チェルもラノイへと挨拶を返した。
「修練場を使わせてもらってもいいか? いつもの模擬戦をしたいんだが」
「はい、それはもちろん問題ありませんが……チェル様、お怪我でもなされたのですか?」
「なんだって?」
ラノイの言葉に振り返って見ると、チェルの衣服に赤い染みが出来ていた。大方、食べ終わったトマトの汁を服で拭ったのだろう。きょとんとしているチェルの様子からも、特に痛みを感じているようには見えなかった。
本来ならば王族であるチェルにはそれなりのマナーが求められ、衣服で手を拭うなどあってはならない。しかし本人にマナーを修める気が無く、私刑による殺人を繰り返すチェルに対してマナーの注意ができる人間など皆無だ。
カイナであれば注意することはできるが、当のチェルがカイナを舐め切っているために効果が無い。明日からもチェルの衣服はハンカチ代わりに使われてしまうのだろう。
「……気にしないでくれ。訓練用のクレイモアを持ってきてもらえるか?」
「承知しました。チェル様、頑張ってくださいね!」
ラノイはチェルに激励の言葉をかけると走り去って行った。カイナの目の前で堂々と弟であるチェルに肩入れしていたが、ラノイに悪気はない。ラノイは普段からあの調子であり、同じようにチェルを慕う兵士も少なくない。聖剣による圧倒的な強さと、チェルの感情の薄い振舞いが若い兵士からの人気を集めているらしい。
「……頑張るって、何を?」
一方のチェルにはラノイの熱意は伝わっていなかったようだ。チェルからすればこの模擬戦もただのイジメであり、頑張るようなことでもないのだろう。
カイナがラノイから模擬戦用の大剣を受け取る頃には、周囲に話を聞きつけた兵士が集まってきていた。兄弟での模擬戦は何度も行っているが、それでも見飽きるものではないのだろう。それほどにチェルの操る聖剣は華麗であり、そして容赦が無い。
兵士たちの中にはカイナの剣捌きに期待している者もいるが、数でいえば聖剣に期待している者が大多数だ。
「前から気になってたんだけど、その訓練用の剣って何が違うの?」
「刃を潰してある。このブレードの上で指を滑らせても、決して斬れることはない。訓練で腕を切り落とすわけにもいかないだろう」
「……どっちにせよ、そんな大きな剣で殴られたら死んじゃわない?」
「無防備な状態の人間を思い切り殴れば死ぬだろうな。訓練中は気を張って防御するから、死ぬようなことはない。仮に体勢を崩して隙を晒したとしても、振るう側が手を抜く。殺し合いではなく、あくまで訓練だからな」
「ふーん……」
チェルが納得できたのかどうかは、その気だるげな無表情からは窺いしれなかった。
「チェルは準備はいいか?」
「なんか準備しないといけないことがあるの?」
無いのだろう。常日頃から聖剣を侍らせているチェルはいつだって臨戦態勢だ。次の瞬間にだって、目の前の人間をその聖剣で刺し貫くことができる。
カイナは棒立ちのチェルから10メートルほどの距離を取って大剣を構えた。周囲の兵士たちも静まり返り、模擬戦の始まりを待っている。
そんな静寂の中で、チェルはいつもの調子でカイナに話しかけた。離れているカイナが聞き取りやすいようにという配慮が微塵も感じられない、全く張りの無い話し声であった。
「いつものことだけど、どうしてそんなに離れるの? どうせ始まったらカイナ兄は僕に近づいてくるんでしょ? 二度手間じゃない?」
「至近距離から始まったら訓練にならないだろう。すぐに終わってしまう」
一瞬で負けるのがどちらかというのは、言うまでもないだろう。
「? ……すぐに終わるかどうかは、僕の匙加減でしょ」
チェルの左腕付近に浮いていた1本の聖剣が矢のような速度で射出され、カイナはそれをクレイモアで防ぎ、それが開始の合図となった。
「カイナ様、チェル様! おはようございます!」
チェルを修練場に連れ込んだ途端に、カイナは髪を金髪に染めた若い兵士に声をかけられた。
「ラノイか。おはよう」
カイナに掴まれていない方の手をヒラヒラと振って、チェルもラノイへと挨拶を返した。
「修練場を使わせてもらってもいいか? いつもの模擬戦をしたいんだが」
「はい、それはもちろん問題ありませんが……チェル様、お怪我でもなされたのですか?」
「なんだって?」
ラノイの言葉に振り返って見ると、チェルの衣服に赤い染みが出来ていた。大方、食べ終わったトマトの汁を服で拭ったのだろう。きょとんとしているチェルの様子からも、特に痛みを感じているようには見えなかった。
本来ならば王族であるチェルにはそれなりのマナーが求められ、衣服で手を拭うなどあってはならない。しかし本人にマナーを修める気が無く、私刑による殺人を繰り返すチェルに対してマナーの注意ができる人間など皆無だ。
カイナであれば注意することはできるが、当のチェルがカイナを舐め切っているために効果が無い。明日からもチェルの衣服はハンカチ代わりに使われてしまうのだろう。
「……気にしないでくれ。訓練用のクレイモアを持ってきてもらえるか?」
「承知しました。チェル様、頑張ってくださいね!」
ラノイはチェルに激励の言葉をかけると走り去って行った。カイナの目の前で堂々と弟であるチェルに肩入れしていたが、ラノイに悪気はない。ラノイは普段からあの調子であり、同じようにチェルを慕う兵士も少なくない。聖剣による圧倒的な強さと、チェルの感情の薄い振舞いが若い兵士からの人気を集めているらしい。
「……頑張るって、何を?」
一方のチェルにはラノイの熱意は伝わっていなかったようだ。チェルからすればこの模擬戦もただのイジメであり、頑張るようなことでもないのだろう。
カイナがラノイから模擬戦用の大剣を受け取る頃には、周囲に話を聞きつけた兵士が集まってきていた。兄弟での模擬戦は何度も行っているが、それでも見飽きるものではないのだろう。それほどにチェルの操る聖剣は華麗であり、そして容赦が無い。
兵士たちの中にはカイナの剣捌きに期待している者もいるが、数でいえば聖剣に期待している者が大多数だ。
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「……どっちにせよ、そんな大きな剣で殴られたら死んじゃわない?」
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「ふーん……」
チェルが納得できたのかどうかは、その気だるげな無表情からは窺いしれなかった。
「チェルは準備はいいか?」
「なんか準備しないといけないことがあるの?」
無いのだろう。常日頃から聖剣を侍らせているチェルはいつだって臨戦態勢だ。次の瞬間にだって、目の前の人間をその聖剣で刺し貫くことができる。
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