お兄ちゃんと最強から最弱に成り下がった弟

papporopueeee

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聖剣に仇なす者たち

人のこと乱暴に扱っておいて……その言い草は酷いよ

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「ひぃ~っ……ひぃ~っ……」

 煌びやかな金髪の先端を地面に擦りながら、老人のような姿勢で歩みを進めるチェル。足を満足に持ち上げることもできておらず、ほとんどすり足に近い歩き方だった。

「はぁーっ……はぁーっ……ね、ねえ……もう、いいでしょ? カイナ兄、おんぶして?」

 街外れの小高い丘の上にある墓地まで続く坂道。街とは違って舗装も行き届いていない歩きにくい道はチェルには余程辛いのだろう。墓地まであと半分程度まで来たところで、ついにチェルは弱音を吐き始めた。

「あともう少しだ。ここまで来たら最後まで自分の足で歩いたらどうだ?」

「な、なんで……もう帰るぅ~……」

「ここまで来たら進んだ方が楽だろう。上まで辿り着けば、ベンチで休めるぞ」

「ベンチじゃなくていいもん……休もうと思えば、どこだって休めるし……」

 そう言うとチェルは地べたに尻もちをついてしまった。白くひらひらとした衣服を土で汚し、だらしなく足を広げて座り込んでしまう。駄々をこねる振舞いは、チェルの精神年齢の幼さを如実に表していた。

 聖剣による戦果で褒められ甘やかされ、聖剣による恐怖で我儘放題をしてきた結果なのだろう。軽い登山すらもできないような体たらくでも、チェルは問題なくこの年まで生きてこれてしまった。おそらく、この先もチェルは変わらないのだろう。

「まったく……ほら、こっちに来い」

 カイナは背負っていたクレイモアを手に持つと、しゃがみこんでチェルに背を向けた。

「え~? カイナ兄がこっちに来てよ……お墓参りに無理矢理連れ出したのはそっちでしょ?」

「ダメだ。誘ったのは俺だが、チェルも快諾しただろう。その責任を取って、頑張ってここまでは来て見せろ」

「快諾なんてしてない……うぅ~……」

 しばらく唸っていたものの、観念したチェルは四つん這いになり、膝と手を土で汚しながらもカイナの元へと近寄った。そして弱々しい手つきでカイナの背中をよじ登ると、細い腕を首にしっかりと回した。

「ふぅーっ……ふぅーっ……もう、動けない……死んじゃう……」

 チェルを背負い歩き出すカイナ。その背の上で揺られながら、チェルは深呼吸を繰り返している。カイナの背に伝わる鼓動も、まるで小動物のように小さく速かった。

「冗談になっていないな。このままでは死にかねない。少しは運動して、食生活も改善したらどうだ。偶には肉を食え」

「やだ……お肉とか硬いし。それに、運動なんてしなくてもカイナ兄よりも強いし……必要無いよ」

「贅沢なことだ」

 質の良い肉など、食べたくとも食べられない者が多い。伸びしろしかない虚弱な肉体を伸ばす意思も無い。それでもチェルは日々を何不自由なく過ごせてしまっている。ただ一つ、聖剣の加護だけを頼りにして。

「だって、僕王子様だよ? カイナ兄こそ、何をそんなに頑張ってるの? 僕が居れば、敵なんて居ないでしょ?」

「慢心はよせ。現に、今のチェルは死にかけているだろう」

「カイナ兄のせいじゃん。人のこと乱暴に扱っておいて……その言い草は酷いよ」

「その誤解を招くような言い方はやめろ。チェルに対して暴力など、振るいたくても振るえないだろう」

「……暴力、振るいたいの?」

「身体を鍛えてくれるのなら、涙を呑んで振るうだろうな。チェルが生きていくためだ」

「だから、これくらいじゃ死なないって。疲れてるだけで聖剣は動くし。今この状態でも、僕のことを殺せる人なんて居ないよ?」

 チェルを背負うカイナの周囲に浮かぶ8本の聖剣。今この瞬間も鉄壁は有効であり、チェルを背負っているカイナまでついでに守られている状況だ。

「あっ……でも、今のカイナ兄なら僕のこと殺せる?」

「……」

「え……どうして黙るの? カイナ兄、僕のこと殺す気なの?」

「そんなわけないだろう……。冗談でも、あまりそういうことは言うな」

「ありえないんだったら、別に冗談で言ってもいいんじゃないの? だって、ありえないんでしょ?」

「それでもだ。家族とは、そういうものだ……」

「ふーん……よくわかんないね?」

 それ以降、チェルとカイナはお互いに口を閉じた。疲労のためか、チェルはカイナの背中に何度も頭をぶつけながらも船を漕いでいて。カイナはチェルとの他愛の無い会話のやり方を忘れてしまっていた。
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