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聖剣に仇なす者たち
俺が居るからだ
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ダズを正面から見据え、同情するでもなく、慰めるでもなく、カイナはただ淡々と告げた。
「……貴公の処遇について長いこと会議が行われていたんだが、ようやく決着したようでな。イクスガルド王、並びに元老院は、貴公の公開処刑を明日行うことで決定した。街中を引き回し、裏切り者の末路を民に見せつけながら、貴公の首は落とされる」
カイナとラノイが退室した後、あの部屋でどのような話し合いが行われたのかは定かではない。ただ事実としてわかるのは、この国の最高権力者たちがラノイの案を採用したということだけだ。カイナとしては遺憾ではあるものの、受け入れる他なかった。
「そうですか。そうでしょうね」
死刑を告げられたダズの反応はそれだけだった。暗殺に協力した時点で、既に死を覚悟していたのだろう。
「処刑について何か言いたいことは無いのか? 弟の手綱も握れない情けない王子ではあるが、聞くことだけならできる」
「言いたいことなど、何もありはしません。実に、今のイクスガルドらしい決定だと思います。ああ、ただ……強いて申し上げるならば……珍しく、仕事が早いですな」
「……返す言葉も無いな」
チェルのことは数年以上放置しているのに、チェルに楯突いた人間は次の日には処刑する。ダズの皮肉はイクスガルドの現状を良く表していた。
「カイナ様こそ、私に聞きたいことは無いのですか? 今のところ、ただ私の両親についてしか話しただけですが」
「元よりそのつもりで此処に来た。尋問も拷問も得意では無い。兵たちが情報を引き出せなかったのなら、諦める他あるまい」
「他の裏切り者の所在……知りたくは無いのですか?」
「誘うような口ぶりは止めてもらおうか。喋る気など無いのだろう。早計な処刑も、貴公の忍耐強さが原因の一端であることは間違いあるまい。弱みを見せる振りでもしていれば、もう少し生き長らえたであろうにな」
「……そうであれば……強がった甲斐もあったというものです」
大きく息を吐くダズ。その口からは痛みや疲労だけでなく、安堵も漏れ出しているようにカイナには感じられた。
「処刑には私も立ち会う。もう話すことは無いだろうが、明日また会おう」
「王子様に最期を見届けていただけるとは、まるで忠臣のような死に方ですな。裏切って命を狙った甲斐もあったというものです」
「それは何よりだ。当然ながら、同じ王子として処刑にはチェルも立ち会う。命を狙った相手に対して、その散り際を見せつけるのはさぞ愉快なことだろうな」
「ああ……それは止めた方がいいでしょうな。チェル様は私の処刑には立ち会わせないことをお勧めいたします」
「なぜだ?」
カイナからの問いかけに対し、勿体振るように間を取るダズ。明日処刑される人間とは思えない軽い態度からは、ダズの本来の人間性が感じられた。裏切り者になる前は、お喋り好きの兵士だったのだろう。
「簡単な話ですよ。私は守るべき家族を持ちながらも、主である王子に刃を向けた人間です。そんな私の死に際にチェル様の姿など見せたら、きっと死に物狂いになって殺してしまうでしょうから」
もはやダズは殺意を隠すどころか見せつけていた。失う物が無くなった今となっては、歯に着せる衣も失くしてしまったようだ。
当然ながら、ダズが一国の王子であるチェルを殺すことなどありえない。処刑の最中には拘束されて兵士に見張られているはずであり、そうでなくとも聖剣に守られているチェルを殺すことなどダズには不可能だ。
カイナはそのことをダズに丁寧に教えることにした。
「それは無理な話だな。チェルを殺すことは、ダズ・ブラウンには不可能だ」
「聖剣があるからですか? それとも、私が処刑される人間だから? そんなものは障害にはなりえ――」
「俺が居るからだ」
「……貴公の処遇について長いこと会議が行われていたんだが、ようやく決着したようでな。イクスガルド王、並びに元老院は、貴公の公開処刑を明日行うことで決定した。街中を引き回し、裏切り者の末路を民に見せつけながら、貴公の首は落とされる」
カイナとラノイが退室した後、あの部屋でどのような話し合いが行われたのかは定かではない。ただ事実としてわかるのは、この国の最高権力者たちがラノイの案を採用したということだけだ。カイナとしては遺憾ではあるものの、受け入れる他なかった。
「そうですか。そうでしょうね」
死刑を告げられたダズの反応はそれだけだった。暗殺に協力した時点で、既に死を覚悟していたのだろう。
「処刑について何か言いたいことは無いのか? 弟の手綱も握れない情けない王子ではあるが、聞くことだけならできる」
「言いたいことなど、何もありはしません。実に、今のイクスガルドらしい決定だと思います。ああ、ただ……強いて申し上げるならば……珍しく、仕事が早いですな」
「……返す言葉も無いな」
チェルのことは数年以上放置しているのに、チェルに楯突いた人間は次の日には処刑する。ダズの皮肉はイクスガルドの現状を良く表していた。
「カイナ様こそ、私に聞きたいことは無いのですか? 今のところ、ただ私の両親についてしか話しただけですが」
「元よりそのつもりで此処に来た。尋問も拷問も得意では無い。兵たちが情報を引き出せなかったのなら、諦める他あるまい」
「他の裏切り者の所在……知りたくは無いのですか?」
「誘うような口ぶりは止めてもらおうか。喋る気など無いのだろう。早計な処刑も、貴公の忍耐強さが原因の一端であることは間違いあるまい。弱みを見せる振りでもしていれば、もう少し生き長らえたであろうにな」
「……そうであれば……強がった甲斐もあったというものです」
大きく息を吐くダズ。その口からは痛みや疲労だけでなく、安堵も漏れ出しているようにカイナには感じられた。
「処刑には私も立ち会う。もう話すことは無いだろうが、明日また会おう」
「王子様に最期を見届けていただけるとは、まるで忠臣のような死に方ですな。裏切って命を狙った甲斐もあったというものです」
「それは何よりだ。当然ながら、同じ王子として処刑にはチェルも立ち会う。命を狙った相手に対して、その散り際を見せつけるのはさぞ愉快なことだろうな」
「ああ……それは止めた方がいいでしょうな。チェル様は私の処刑には立ち会わせないことをお勧めいたします」
「なぜだ?」
カイナからの問いかけに対し、勿体振るように間を取るダズ。明日処刑される人間とは思えない軽い態度からは、ダズの本来の人間性が感じられた。裏切り者になる前は、お喋り好きの兵士だったのだろう。
「簡単な話ですよ。私は守るべき家族を持ちながらも、主である王子に刃を向けた人間です。そんな私の死に際にチェル様の姿など見せたら、きっと死に物狂いになって殺してしまうでしょうから」
もはやダズは殺意を隠すどころか見せつけていた。失う物が無くなった今となっては、歯に着せる衣も失くしてしまったようだ。
当然ながら、ダズが一国の王子であるチェルを殺すことなどありえない。処刑の最中には拘束されて兵士に見張られているはずであり、そうでなくとも聖剣に守られているチェルを殺すことなどダズには不可能だ。
カイナはそのことをダズに丁寧に教えることにした。
「それは無理な話だな。チェルを殺すことは、ダズ・ブラウンには不可能だ」
「聖剣があるからですか? それとも、私が処刑される人間だから? そんなものは障害にはなりえ――」
「俺が居るからだ」
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