お兄ちゃんと最強から最弱に成り下がった弟

papporopueeee

文字の大きさ
39 / 67
弱者の日常

ほんとに脱ぐの……?

しおりを挟む
「っ……~~っ!」

 そして、チェルはシャツを一思いにめくりあげた。鎖骨が見えるか見えないかのその瀬戸際まで。夜の森で焚火に照らされながら、当然のように膨らんでいるはずも無い己の胸をチェルは露出した。

「……少年……か?」

 服をめくりあげるチェルに対し真剣な眼差しを向ける追手。焚火の火の粉に炙られているかのように、露出した腹部が羞恥心で熱くなっているのをチェルは感じていた。

「いや、少女だ。成長していないだけだな」

「判断がつかないな……下を見せてくれ。その方がはっきりする」

「当然の要求だな。さあ、さっさと下も脱ぐんだ。今更恥ずかしがる必要も無いだろう。言っておくが、ズボンだけでなく下着も脱ぐんだぞ」

 胸を見せたのはチェルなりに考えての行動であった。下半身を見せては言い訳のしようが無いが、上半身であれば誤魔化せる可能性がある。チェルなりにカイナの意図を汲み、胸を見せれば口八丁で何とかしてくれるという希望があっての露出であった。

 しかし現実はそうではなかった。カイナはチェルに救いの手を差し伸べるばかりか、全てを晒すように追い立てている。言葉通りに下半身を露出しない限り、追手どころかカイナまで諦めそうにない。

「いっ、いいの? カイナ兄? ほんとに脱ぐの……?」

 涙で滲むチェルの視界に映っていたのは、やはり黙って脱ぐように促すカイナの姿であった。

 下半身を晒してしまえば性別は隠しきれず、追手の捜し人であるチェル本人ということも知られてしまう。近くに居るという仲間まで呼ばれてしまえば、チェルとカイナは絶体絶命だ。聖剣の加護が無い今、多勢に襲われてはひとたまりも無い。

 そして何より、知らない人を前にして下半身を露出などしたくはない。イクスガルドでは普段から寝間着のような薄っぺらい私服で出歩いているチェルではあったが、決して露出狂では無い。腕や脚であればいくら見られようとも何も思わないが、晒してはいけない場所に対する羞恥心は人並みに持ち合わせていた。

 恐怖と羞恥心に煽られて加速していく心臓の鼓動が耳の中で鳴り響く中、チェルは両手の親指をおずおずと下腹部へと滑りこませる。親指が下着と鼠径部に挟まれ、あとほんの少しでも下してしまえば真実がまろび出てしまう。

「ふーっ……ふーっ……――~~っ!!」

 外套を咥える口から荒い吐息が漏れ出していく。緊張と恥じらいで何も考えられなくなり、瞼が勝手にぎゅっと閉じられ、ついにチェルは半ば自暴自棄に下着ごとズボンをずり下し――

 ――その時、背中からパチンと留め具を外す音が聴こえた。

「っ!? やっぱり少年じゃないか――っ!?」

 聴こえたのは短い風切音と、追手の断末魔。

 恐る恐るチェルが目を開けてみれば、追手の首には聖剣が突き刺さっていた。

「え……え?」

 呆けるチェルの背後から、カイナが勢いよく飛び出した。

 死の間際の血走った瞳でカイナを睨みつける追手。膝をつきながらも右手を腰に回して何かを手に取ろうとしていたが、カイナの大剣によって腕を切り落とされ、血飛沫を上げながら絶命した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...