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いっぱいしてください
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「……ごめんね。つい、昔の癖のままに動いてしまった」
お詫びのつもりで、また額に口づける。ふるふると体を震わせ、きゅっと僕の胸の中で君が縮こまった。こんなにも近いのに、こんなにも近づいてくれるのに、その心を僕の傍に寄せてはくれないんだね。
「それじゃあ、どうして欲しいか教えてくれるかい? 僕は君の望む通りに動いてみせるから」
君の望む僕を、今度こそ演じてみせるから。
「……い、いっぱいしてください!」
思わず笑みが零れてしまった。あまりにも、以前から何一つ変わっていなかったから。体育のない日の前日、君はよくその言葉を口にしていたね。頬を赤く染めて、目を伏せて、僕におねだりしてくれたね。ふたりだけの秘密を、君の体にたくさん作ったね。
どれだけ無邪気に傷つけられようと、やっぱり僕は君から離れられない。こんなにも愛しい君から、離れることなんてできそうにない。
「いいのかい?」
「多分、明日の夜には消えてるから……大丈夫です」
「そういえば、君はそういう体質だったね……」
思う存分君を愛せることが嬉しい一方、僕の愛がすぐに消えてしまうことが少しだけ残念だ。
「それでは、たくさんしてあげよう。覚悟はいいね?」
こくんと、目を瞑ったまま君が頷いた。小さな手で、その唇を覆いながら。それは僕を信用していないということなのか。それとも、ただ不安で口元に手を置いているだけなのか。どちらでもいい。そんなことは、些末事なんだ。こうして君の間近で、君の手を取れる。それだけで、僕の心臓は喜びで跳ね回るのだから。
「あっ……」
左手を取られた君が不安気な声を漏らす。そんなに怯えなくても大丈夫。僕が君との約束を反故にすることなんてありえないのだから。君と初めて素肌を重ねたあの日に、こうして君に誓ったことを、どうか思い出してほしい。
「んっ……」
手の甲に口唇を当てると、君が悩まし気な声を漏らした。君の手の甲の柔らかさを唇に感じる。ふっくらとした、まだ幼さを残した肉付き。指の先まで伸びるコツコツとした骨に沿うように、舌を這わせる。
「はっ……はっ……」
君の呼吸が少し早くなったのに応じて、指先がじんわりと熱くなる。その熱を味わっていると、僕まで熱に浮かされてきた。
「そ、そんな、指ばっかり……♡」
「嫌なのかい?」
「い、嫌じゃないです……で、でも指ばっかりじゃ嫌です……」
「ふふっ、君はわがままだね。悪い子だ」
「はぅっ……♡」
首元に顔を寄せると君が身をよじった。蠢く君を押さえつけて首筋に狙いを定める僕は、さながら吸血鬼だろうか。君を僕の眷属にできるというのなら、化生に身を落とすのも悪くない。
「んぅっ……♡♡」
君の首を走る血管を弾くと魅惑的な音色が鳴った。こりこりとした弦は弾き心地が良く、僕は夢中で君の首に口付けを捧げた。
お詫びのつもりで、また額に口づける。ふるふると体を震わせ、きゅっと僕の胸の中で君が縮こまった。こんなにも近いのに、こんなにも近づいてくれるのに、その心を僕の傍に寄せてはくれないんだね。
「それじゃあ、どうして欲しいか教えてくれるかい? 僕は君の望む通りに動いてみせるから」
君の望む僕を、今度こそ演じてみせるから。
「……い、いっぱいしてください!」
思わず笑みが零れてしまった。あまりにも、以前から何一つ変わっていなかったから。体育のない日の前日、君はよくその言葉を口にしていたね。頬を赤く染めて、目を伏せて、僕におねだりしてくれたね。ふたりだけの秘密を、君の体にたくさん作ったね。
どれだけ無邪気に傷つけられようと、やっぱり僕は君から離れられない。こんなにも愛しい君から、離れることなんてできそうにない。
「いいのかい?」
「多分、明日の夜には消えてるから……大丈夫です」
「そういえば、君はそういう体質だったね……」
思う存分君を愛せることが嬉しい一方、僕の愛がすぐに消えてしまうことが少しだけ残念だ。
「それでは、たくさんしてあげよう。覚悟はいいね?」
こくんと、目を瞑ったまま君が頷いた。小さな手で、その唇を覆いながら。それは僕を信用していないということなのか。それとも、ただ不安で口元に手を置いているだけなのか。どちらでもいい。そんなことは、些末事なんだ。こうして君の間近で、君の手を取れる。それだけで、僕の心臓は喜びで跳ね回るのだから。
「あっ……」
左手を取られた君が不安気な声を漏らす。そんなに怯えなくても大丈夫。僕が君との約束を反故にすることなんてありえないのだから。君と初めて素肌を重ねたあの日に、こうして君に誓ったことを、どうか思い出してほしい。
「んっ……」
手の甲に口唇を当てると、君が悩まし気な声を漏らした。君の手の甲の柔らかさを唇に感じる。ふっくらとした、まだ幼さを残した肉付き。指の先まで伸びるコツコツとした骨に沿うように、舌を這わせる。
「はっ……はっ……」
君の呼吸が少し早くなったのに応じて、指先がじんわりと熱くなる。その熱を味わっていると、僕まで熱に浮かされてきた。
「そ、そんな、指ばっかり……♡」
「嫌なのかい?」
「い、嫌じゃないです……で、でも指ばっかりじゃ嫌です……」
「ふふっ、君はわがままだね。悪い子だ」
「はぅっ……♡」
首元に顔を寄せると君が身をよじった。蠢く君を押さえつけて首筋に狙いを定める僕は、さながら吸血鬼だろうか。君を僕の眷属にできるというのなら、化生に身を落とすのも悪くない。
「んぅっ……♡♡」
君の首を走る血管を弾くと魅惑的な音色が鳴った。こりこりとした弦は弾き心地が良く、僕は夢中で君の首に口付けを捧げた。
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