元カレの小悪魔ムーブに逆らえない

papporopueeee

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唇はダメです

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 君の大きな瞳。水晶のように光を反射させてきらきらと輝くその中に、僕が映っている。今だけは、君の中には僕しかいない。どんな時も僕の心を独占している君の心を、今は僕が独占できている。その事実を僕がどれほど喜んでいるか、君の純真な瞳は知らないのだろう。

「……やっぱりダメ、ですか?」

 君がしゅんと項垂れる。八の字になった眉と、少しだけ尖らせた唇。嘘の吐けない、嘘を知らないその表情は、本当に僕を求めてくれていることの証だ。例え欲求不満の捌け口だとしても。どうして僕に、君に心身を捧げた僕に断ることができるだろうか。

「ダメなわけ……ないじゃないか。君のお願いを、僕が蔑ろにしたことが一度でもあったかい?」
「……やっぱり、優しいです。いつでも優しくて、だから、ボク竜胆会長のこと大好きです」

 優しい僕であれば、こうして君の柔らかな笑顔を差し向けてもらえる。一時の至福を享受させてもらえる。だから、僕はいつだって優しく在るよ。君の望む僕を演じ続けるよ。

 でももしも、もしも僕が獣のような欲望を君にぶつけて、強引に君を求めたのならば。彼から君を奪えないかなんて、そんな馬鹿なことを考えずにはいられないんだ。

「さ、顔を上げて」

 僕を見上げる君の前髪を指先で撫でる。これが、始めの合図だった。君はこれが好きで、いつもこれをねだっていた。

 僕の唇に硬い感触が当たり、軽やかな口づけの音が部屋の中に響いた。

「はぁ……♡」

 吐息と共に君の体が震える。この癖も変わっていない。スイッチを入れるように、額の快感を体全体に行き渡らせるような仕草。変わらず僕のキスで感じてくれることが、こんなにも嬉しいなんて。こんなにも、僕の体が昂ってしまうなんて。

「あっ……だ、だめです!」

 唇を重ねようとした直前で、君の指に阻まれた。人差し指をバツ印に交差させるそれは、完全な拒絶を示していた。

「く、唇はダメです……れ、レン君が……!」

 言い淀む君の姿だけで十分だった。それだけで、僕は今の自分の役割を思い出せたから。愛玩道具が主人に愛を伝えるなんて傲慢、許されるはずがなかった。
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