弟は勇者様で、兄はみんなから愛されている聖女様

papporopueeee

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ゴブリン殲滅編

聖女様の弟と、聖女様の信徒たち

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 ひとしきり要望を聞き遂げた後、ボクは兵士長を告白室に残して教会の休憩室に向かった。

 とびきりの祝福を受けることのできる兵士長といえど、聖女の家に招くことはできない。
 少しでも家っぽい雰囲気が出る場所としては、教会の休憩室くらいしか選択肢が無かった。

「……ふう」

 椅子に腰を下ろすと、自然と吐息が漏れた。
 たぶん、少しだけほっとして、でもやっぱり不安も残っているから。

 どんな告白が飛び出すか不安だったけれども、思っていたよりは叶えやすそうで助かった。
 ボクにはルマという弟が居るから、弟とのやり取りは文字通りの日常だ。
 ボクよりもずっと大きな兵士長相手だと違和感があるだろうけれど、どうすればいいかの正解はわかる。

 ただ一つだけ、兵士長がボクに弟として甘えたいというのは、少しだけ気になった。

「……ルマへの羨望とか、あるのかな……嫉妬だったら、嫌だな……」

 ボクにとってルマは弟だ。
 信仰を寄せてくれる信徒ではなく、ただ一人だけの家族だ。

 信徒には許されていないことも、弟であれば許される。
 聖女に自由に触れることができて、
 聖女に自由に甘えることができて、
 聖女と一緒に暮らすことができる。
 聖女に対して一欠片の信仰も抱いていないのに、ボクと同じ母体から産まれたというだけで。

 ボク自身としてもルマを特別扱いをしてしまっている自覚はあるし、家族なのだから仕方ないと納得もしている。
 ただ、それを良く思わない信徒が居ることも知っている。

 ……兵士長も、そんな信徒の一人だったりするのだろうか。

「ルマ……」

 ボクとは対照的な弟。
 何を隠すこともなく、何も制限されることなく、この町での生活を謳歌している大切な弟。
 生まれ持った浄化の力で一切の魔物を寄せ付けない、本物の勇者様。

 もしもルマと信徒たちを平等に扱わないといけないのだとしたら。
 もしくはルマを信徒たちよりも下に置かないといけないのだとしたら。

 そんな時が来たとしたら、ボクは――

「ん……来た……」

 ノックの音で思考の糸が解けていく。
 今はルマのことを想う時間じゃない。
 兵士長を弟として甘やかす時間だ。

 その武勲に褒賞を。
 その優しさに誠意を。
 命を助けていただいたお礼に、ボクの身体を捧げます。

 今だけは、ボクは貴方を大切な弟として――

「た、ただいま戻りました! 聖女さっ――お姉ちゃん!!」
「……お、おかえり、ヨリッグ……」

 ――扉を開けてみたら彼は全力で敬礼しているけれど――

 ――姉と呼ぶ相手を前にしてパンパンにズボンを膨らませているけれど――

 ――今だけは、彼は紛れもないボクの弟であるわけで――

 ――とにかく、とびきりの祝福の幕は上がったのだった。

 ……大丈夫かな、ボク。
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