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出会いの痴漢編

痴漢から和姦へ

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「あら♪ こうやって見比べちゃうと大きさの差が如実に現れちゃうねー。ふふふ、キミのが大きいのか、それとも……どうなんだろうね?」
「ボクは小さくてもいいんです。その方が着れる服の幅も広がるので」
「ミミちゃんのそういうところ、お姉さん好きだなー。キミもこれくらい素直に振り切っていいんだよ?」

 親し気に話す痴女と、見た目だけは間違いなく少女だったはずの少年。

『大丈夫、他の人には君が男の子だってバレてないから。私がそういうのに特別敏感なだけ』

 脳裏に思い起こされる痴女の言葉。最初からそういうことだった。痴漢という犯罪行為を犯しているにも関わらず、あまりにも強気だった痴女。痴女が隠していた切り札が、目の前に立っている。

「ごめんなさい、巻き込んで。本当はボクがされる予定だったんですけど、キミが気になっちゃったみたいで。リサさんは動き出したら止まらない人で、ボクもキミと似た感じで事故みたいな出会い方をしたんです。だから、わかります。とても気持ちよくて、悪くない気分でしたよね?」
「っ……」
「今まではね、リサさんのことを自制のできないダメな大人って思ってたんです。だって、ボクみたいな年端のいかない子供に手を出して、キミみたいなすれ違いの他人にもちょっかいを出すのですから。大人としては最低です。でも、今は違います。リサさんにイジめられているキミを見て、考えが変わりました。こんなの、興奮しない方がどうかしてるって」
「えっなっ!?」

 ぐいっとミミと呼ばれていた少年の顔が視界一杯に広がる。焦点が合っていないかのように瞳がぼやけている。少年の吐く荒い吐息が翔斗の口内に入ってきて生暖かい。距離が近すぎて、あとどれくらいで唇が触れ合うのかもわからない。

「こらこら。それはダメでしょミミちゃん」

 背後から伸びた手が少年の額を押さえている。まだ、唇に何かが触れている感触はない。興奮が混じる息が顔を撫でているだけだ。

「はーっはーっ……そう、ですね……」
「もう、いつもはクールなのに、えっちなことになるとすぐこうなんだから。ミミちゃん、キスはダメだよ」
「うん、そう……その通りです。ごめんなさい、えと……キミの名前は?」

 言葉が出ない。状況を飲み込めなくて、そもそも名前を教える気なんてなくて。少女と思っていた人物は翔斗と同じ女装少年で、極度の興奮状態にあるようで、そして翔斗は同性にファーストキスを奪われかけた。

「そう……教えてくれないんですね。いいですよ。名前がわからなくても、ちゃんと気持ちよくしてあげますから。うん、自分が気持ちよくなることは我慢して、キミのことに集中しないと。だから、さっきみたいによがった顔を見せてくださいね?」
「うっ」

 少年の小さな手が硬くなった性器の先端を撫でる。

「さっきは裏をちょっと撫でただけでイッちゃいましたね。敏感なんですか? ねえ、今もただ先端を撫でてるだけなのに、どうしてそんな気持ちよさそうに……ボクを悦ばせてくれるんですか?」

 煽る様に、少年は懐から見上げてくる。見てもいないのにその手つきは正確で、翔斗の敏感な急所を爪先で弄り回している。

「や、やめろよ……。別に、お前を悦ばせるつもりなんて、あぐっ」
「ウソばっかり。止めてほしくなんてないですよね? もっと続けてほしいですよね? キミのここは、そう言っていますよ」
「さ、触られて勝手に反応してるだけだ……んっ」
「そんなはずはないですよ。キミは汚いおじさんに触られてもこんなに熱く固くしてしまうのですか? 違いますよね。ボクが可愛いから。ボクのことを好ましいと思っているから、ボクが男だとしてもイジられて悦んでしまう。ボクは自分が可愛いと思えればそれでいいと思っていましたけれど、男の人に可愛いと思ってもらうのも案外嬉しいものですね」

「べ、別に可愛いなんて……」
「思ってませんか?」

 翔斗の顔をきゅるんとした瞳が覗き込んだ。大きな瞳が頬を赤くした翔斗の顔を映している。

「っ……」
「正直ですね。キミもとっても可愛いです。例えばこのお腹。キミとボクでは理想とする可愛いの方向性が違うようですけど、素敵だと思います。でも、くすっ……やっぱりちょっとエロ過ぎますね、キミの趣味は。嫌いではないですけど」
「くっ……!」

 恥ずかしさで顔が火照るのを感じる。痴女と違い、同年代に面と向かって性癖を指摘されるのは心にクるものがある。

「いいと思いますよ、エロ可愛い。むしろ、男でその方向性を目指せる才能は少しだけ羨ましい。ボクの理想は……キミの真逆ですから」

 めくられたスカートから露出している少年のお腹は、女性らしい丸みを帯びたフォルムだ。太っているわけではなく、柔らかさを主張するようになだらかな曲線を描いている。

 確かに、翔斗の方向性がエロカワなのだとしたら、愛くるしいを趣旨としている少年は真逆なのだろう。

「だからこそ、嬉しいんです。女装の苦労を知っているからこそ。このくびれの価値がわかるからこそ。キミに出会えて本当に嬉しい……!」
「あんっ……!」

 自分の声が信じられない。無意識にではなく、無理やりに。翔斗は女性のような声を出させられた。

「いい声……。ねえ、キミは今まで一人でしたか?」
「は? な、なにが、んぅっ!」
「ボクは一人でした。女装に後ろめたさはないけれど、異常だということはわかっているつもりです。だから、ボクは一人だった。学校に仲間なんているわけない。作れるはずもありません。リサさんは理解者ですけど、本物の女性です。感謝はしているけれど、でも同類ではない。やっぱり、ボクは一人だった。キミが現れるまでは……」

 熱っぽい視線が翔斗に絡みつく。少年の瞳は、視線を重ねるように翔斗をじっと見つめている。

「ふふ、リサさんにイジめられるキミを見て、ボクが何を感じていたかわかりますか? 嫉妬です。リサさんがボクに飽きてしまったのかもしれない。唯一の理解者をキミに取られてしまうかもしれないって。でも、今はその逆です。短い間とは言え、キミを独り占めしていたリサさんがずるくて仕方がありません♡」
「んっ、な、なにを……?」

 翔斗の性器の上に少年のスカートが覆い被せられる。性器は翔斗の視界から隠れ、少年の衣服の中にしまい込まれてしまった。先端にふかふかとした柔らかいお腹が当たっている。

「これでキミの服は汚れません。ドロワーズも履き直したので、キミの肌にボクのモノが直接当たることもありません。これから行う行為の都合上、キミの太ももには擦れてしまうかもしれませんが……どうかご容赦くださいね?」
「? ……あっ!」

 腰に手を回され、ぴったりと少年が翔斗に抱き着いてくる。硬く反りあがった翔斗の性器がふたりの腹に圧迫され、まるで何かに挿れているような感覚だ。

「では、失礼いたします」
「やっあっ、つぅ!」

 腰に回された腕がぎゅっと締められる。ふたりの胸が、お腹が、腰が密着して、男性器が強く圧迫される。少年のお腹は熱く柔らかい。少年が強く抱きしめるままに、そのまま一体化してしまうんじゃないかと思えるほどに翔斗の性器を受け止めて、火傷しそうなくらいに熱く包み込んんでくる。

「熱い……キミのココ、とっても熱いですね。それに硬くて、ボクの中身がゴリゴリと押されています。まるで侵されているみたいに……」
「あ、熱いのは、お、お前の方だろ……うっ」
「そうですか? くす、そうかもしれませんね。すみません、ボクのせいで……こんなに汗が出てしまっていますね♡」
「んっ!」

 少年の指が服の上から亀頭を擦る。まるで泣きじゃくる幼子の頭を撫でるように、自らの服に鈴口から出た液を染み込ませていく。

「もう、お腹がヌルヌルです。こんなに漏らされてしまったら、もっと張り切らないといけないですね」
「っ!? あ、だ、だめっだぁっ!」

 腰を打ち付けるように、少年は上下の動きを加え始めた。圧迫と摩擦。ヌルヌルとした液体が充満する空間はまるで生物の中だ。さらさらとした生地が性器の表を擦って、粘液に塗れた肉が裏を擦る。まるで咀嚼でもされているかのように、性器をしごかれている。

「ふっ……はあっ、ね、ねえ、ミミって呼んでくれませんか?」
「な、なにをっ……?」

 ミミというのは少年の愛称なのだろう。痴女にそう呼ばれていたのを覚えている。

「ねえ、ミミって呼んでください。はっ、あっ、ボ、ボクの名前を……!」

 少年の呼吸は荒い。動きが激しくなったからだろう。息切れを起こしている。

 少年の瞳が翔斗の瞳にどんどんと近づいてくる。翔斗の視界を独占するように、そのまま脳内まで入り込まんと言わんばかりに。顔に当たる呼気は熱くて、どこか粘ついているようにも思えた。

「お、お願い……み、ミミって……ねえ!」
「あっ……くっ。みっ……み、ミミ……?」
「あ――」

 背後から、痴女の驚きの声が聞こえた。驚きというより、それは呆れにも近かったかもしれない。

 翔斗も驚いていたが、声を挙げることはなかった。塞がれていて、声を出せなかったから。

「んっちゅっんむっ……はっあむっ」

 初めてのキス。そんなことを意識する余裕もなく、口の中を侵される。翔斗の体内で、異物が暴れまわっている。まるで自分の物だと言わんばかりに、我が物顔で好き勝手に。

「んっくっふっ、はぁっ、ん!」
「…………!!」

 声を挙げているのはミミだけだ。濡れた音を漏らして、荒い呼気を漏らして、気持ちよさそうな声を漏らして。

 翔斗は息苦しくて声を挙げることもできない。息継ぎのタイミングはミミが握っていて、キスに慣れているのかその時間も短い。だから、翔斗はミミの呼気に頼るしかない。ミミの吐く息を、体内に入れ込むしかない。ミミも、きっとそれをわかっているのだろう。

「ふーっ、んちゅ、はーっむん、あっ……くす……」

 一瞬だけの空白。ミミがほんの少しだけ離れて、翔斗の顔を見て、満足げにほほ笑んだ。そして、また食らいついてきた。

「! ……!」
「んーっちゅ、じゅ、あふっはむっ!」

 ミミの下半身がまた動き始めた。激しく腰を打ち付けるように、翔斗の性器をお腹で圧迫して、柔らかい肌と布地で擦ってくる。

「んっんーーー! んー!」

 喋れない。舌を絡めとられて自由が利かない。唾液も掠め取られて、湿っているのは音だけで口の中はカラカラだ。快感に耐えようという意思も折れるほどの快楽の波。イクのを我慢しようという力も湧いてこないほどの幸福感。

 全てを奪われて、ただ幸せだけが与えられる状況に、もう心が屈服してしまいそうだ。

「ひ、み……み、み……」
「! も、もっと呼んで……! んっちゅ……っあ、な、名前を……!」
「みっ……んっくっぁふぁっ、みみ……、イ、いっく……!」
「んっ、い、いいです、よ……! ちゅ、ん……イッて……イってください……!」
「んっふぁ、あっん、んぅっ……い、イきそっ……」
「んっ、ちゅる、れろ……あっ、あっ、イっ、あぁっ!」
「へ……!?」

 びくびくとミミの体が痙攣した。足ががくがくと震えて、今にもへたり込んでしまいそうな様子で、翔斗にすがりついてくる。

「はぁっ……はぁっ……んぅっ!」
「み、ミミ……?」
「あれ? もしかいてミミちゃんイッちゃった?」

 事態を見守っていた痴女が翔斗の背後から覗き込んでくる。ミミの様子を見ると、確かにそれは射精の後のように見える。

「はっ……ふぅっ……す、すみませ……」
「えーっと、キミは大丈夫? 多分、体のどっかにミミちゃんのが擦れてたと思うんだけど……」
「……あ」

 そういえば、太ももに擦れてしまうかもしれないとミミは言っていた。翔斗はミミのスカートの端をつまみ上げ、中身を確認した。

「あらー」

 ミミのドロワーズには見事な染みが出来ていた。染みの大きさと形状から、やはり射精をしたのは間違いなさそうだ。

 そして、翔斗の太ももにも白濁液が少し付着している。量からして、ドロワーズから染み出たものだろう。自身の快感に夢中で、ミミのが擦れていたなんて気づかなかった。

「ごめんねー、ミミちゃんが汚しちゃって。これ、良かったら使って?」
「あっ……」

 痴女から差し出されたハンカチを受け取って、少しお礼を言うかどうか迷った。このふたりは、結局なんなんだ。

 痴漢なのは間違いない。だから、間違いなく犯罪者だ。でも、悪と言い切れるかは怪しい。翔斗はこのふたりに対して嫌悪感を抱いていない。むしろ、先ほどは親し気に名前まで呼んでしまった。イカせてほしいと、懇願でもするかのように。

「っ!」
「ん? どうしたの? 顔が赤いけど」
「う、うるさい! ほ、ほらこれ!」

 思い出してしまったことによる恥ずかしさを隠すようにハンカチを突き返す。

「……キミもこれ舐めてみる? そしたらミミちゃんとお揃いだけど」
「だ、誰がそんな汚いものを……っ!」

 ミミと目が合った。ミミは放心しているようで、ただとろんとした瞳で翔斗を見つめている。翔斗の発言に対して何を思ったのかはわからない。

「ふふ、それじゃあこれからどうしよっか。キミは、まだイケてないよね?」

 射精をこらえる気も起きないほどの快感だったが、ミミが先に果ててしまった。おかげで、翔斗の射精間は宙ぶらりんのままだ。硬く反りあがったまま、刺激を催促するようにびくびくしている。

「お姉さんがお世話してあげよっか?」
「い、いや、別に……オレはイキたいわけじゃ――」
「でも残念。もうすぐこの電車の超満員タイムが終わってしまうのです。だから、キミともお別れになるんだけど……」

 ぐいっと、ミミにカットソーの端を掴まれた。服にしわが出来るほどに強く。先ほどとは一転、ミミの瞳は感情を一杯に湛えていた。

「キミさえ良かったら、この縁を続けてみない?」
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