重槍士は褐色毒ショタに出会う

papporopueeee

文字の大きさ
4 / 55
出会い

男です、僕……

しおりを挟む
「っ……本当に洗ってくださるのですか? 僕の足を……っ」

「ああ、詫びの気持ちも込めて手伝わせて欲しい」

「詫びる必要など……では、お願いいたします」

「心得た。優しくするが、傷が痛むなどあれば適宜言ってくれ」

「はっ、はいっ……優しく……」

 緊張しているのだろう。ルカテの身体は強張り、俺の首に回す腕も硬くなっている。

 奥ゆかしい国で育ったのであれば、他人に肌を触られる機会も少ないことは想像に難くない。怪我だけでなく、その心まで気遣うつもりで、俺は手袋をつけたまま軽くルカテの足先に触れた。

「んっ」

「痛いか?」

「大丈夫、です……少し驚いただけなので……っ」

「爪に泥が残るといけないからな、もうちょっと我慢してくれ」

「はい……っ」

 衛生的であるに越したことはなく、わざわざ泥を残しておく必要も無い。しかし手袋を着けたままでは爪に入り込んだ泥を上手く流せず、ルカテが痛みに悶える声ばかりが耳に響くばかりだった。

「はっ、ふぅっ……んぅっ!」

「す、すまない。イジめるつもりは無いんだが、どうにも手袋を着けたままだと……外して、素手でも大丈夫か?」

「素手っ、ですか……」

「やはり嫌か。いや、申し訳ない。阿呆なことを聞いた」

「っ……傷は?」

「ん?」

「指や手に傷はありませんか? 無いのなら、素手でも問題ありません」

「それなら心配無い。戦闘の度に手のマメを潰していたのも昔の話だ」

「それでしたら、手袋を外していただいて問題ありません」

「すまないな」

 口で指先を咥えて手袋を外す。子供とはいえ、男が直接足を触るのは良くないと考えていたが、魔物が棲む森の泥で汚したままなのも好ましくは無い。

「爪に入り込んだ泥を掻き出す。少し痛むかもしれんが、辛抱してくれ」

「覚悟は出来ています……んぅっ!」

 素手で触るとよくわかった。ルカテの足の裏はボロボロで、直接見なくともその痛ましさが想像できてしまうほどに傷だらけだ。

 小石が転がる道を裸足で逃げるのはさぞ痛かったことだろう。恐ろしい魔物に追いかけられるのは恐ろしかったことだろう。

 あの場に居合わすことが出来て良かった。この子を助けることができて良かった。小さな足に触れているだけで、そんな感情が溢れて止まらなかった。

 それと同時に、もっと早く見つけることができればと思わずにはいられなかった。

「んっ……ふっ、ぅっ……っ」

「痛むか?」

「い、いえ、しみるのは少し慣れてきたのですがっ……くすぐったくて……んぅっ」

 ルカテが身をよじり、パシャリと水飛沫が上がった。心からの笑顔では無いものの、その口元が緩んでいる姿を見れたことは嬉しかった。

「あっ、はぅっ……んぅっ……っ」

「もう少しだけ我慢してくれ……よし、終わった。大丈夫か?」

「はっ、はい……優しくしていただいたおかげで……」

「それなら良かった。このまま足を洗っていくから、また痛んだら教えてくれ」

「ありがとうございます……んぅっ」

 足先から身体を登るように、指先を丸く動かしならこびりついた泥を水に流していく。指先が傷に当たる度に子供が苦悶の吐息を漏らすのが心苦しいが、楽しそうにくすぐったがる様子も見られた。

「ふっ、ふふっ……んっ、ふっ……んふっ……」

 少し高い声と、柔らかい吐息に耳がくすぐられる。

 足首からふくらはぎ。膝裏から膝頭。そして脛から太ももまで洗い、足の付け根を触れるのは止めておこうと考えたところで気づいた。

「入れ墨……?」

「ひゃぁっ!?」

「あっ、ああ、すまん。つい擦ってしまった」

「いっ、いえっ……鼠径部を触られるなんて初めてで……少し驚いてしまっただけなので……」

 川の水が泥で濁っている間は気づけなかったが、ルカテの下半身には入れ墨が入っていた。下腹部から太ももを流れて、足の指先まで。文字や絵の類ではなく、まるで複数のヘビが下半身に巻き付いているような紋様だった。見えてはいないが、腰から臀部にかけても彫られているのだろう。

「ここまで大きいのは珍しいな。何か意味があるのか?」

「いえ……どうでしょうか。これも母様がくれたものなので、詳しくは知らないんです……」

 慰撫するようにルカテの指先が下腹部の入れ墨を撫でる。またもセンシティブな話題に触れてしまったようだ。

「そんな顔をなさらないでください。そうだ、足を洗ってくださったお礼をさせてください」

「お礼なんて、子供が気にすることじゃない」

「もらってばかりでは気が済まないんです。こういうのはいかがですか?」

 子供は川の水を掬うと、俺の頬を撫でた。

「顔に泥が付いているの、ずっと気になってたんです」

「そうだったか。気づかなかったな」

「足を洗っていただけたお礼に、洗わせてください。僕が泥を着けてしまった首もいっしょに」

「そこまで言うなら、お願いしよう」

「ありがとうございます」

 子供であろうとも、世話になりっぱなしでは気まずいのだろう。嬉しそうに水を掬っては、何度も素手で顔と首を拭ってくれた。

「その甲斐甲斐しさ、将来は嫁の貰い手には困らないだろうな」

「え……?」

「む……しまった。これも失言か。見知らぬ男に婚姻の話などされても、不快なだけだな」

「いえ……その……男ですよ?」

 その言葉の意味がわからず、思わず首を傾げてしまった。頭の中で言葉を反芻し、文章に直して解釈し、それでも理解できずに顔を見つめてしまった。水に濡れて肌に張り付く布に包まれた胸部と、水に濡れて股間に食い込んでいる前垂れを、思わず確認してしまった。

「男です、僕……」

 何ということか。ルカテのように幼い体躯では身体で性別を判断することは難しい。だからこそ、その顔つきから少女だと判断していたのだが。

「可憐な男児というのも居るんだな……悪かった……」

 自身の幼少期の経験からルカテのような淑やかな少年がいるなど露にも思わず、またも失言を重ねてしまった。

「かっ、可憐っ!?」

「……少年を可憐と表現するのも、失礼だったか?」

「ちっ、ちがっ……そういうわけでは、ないのですがっ……おっ、お顔を洗う続きを致しますね?」

 ルカテはお前の顔など見たくないとばかりに顔を背けてはいるが、その手つきの優しさから嫌われてはいないようだ。

 子供に特別好かれたいというわけではないが、特別に嫌われるのは心にくる。国に送るまでの短い付き合いとはいえ、発言にはより一層気を付けることとしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...