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出会い
いいえ……この身に相応しい罰だと考えます
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ルカテの身体が震えている。レイス王が来てからずっとだ。小さく縮こまって怯えている。俺の腕に抱かれながらも、まるで俺から離れたがっているようにも見える。
「ルカテが重罪人……?」
レイス王はそう言った。その険しい顔から冗談には聞こえないし、冗談で言えるような内容でも無い。
この国の王は本気で言っているのだ。ルカテは、斬首という重刑に処されるほどの罪を犯しているのだと。
「申し訳ありません、ガル……」
ルカテも認めている。レイス王の言葉を肯定して、俺に謝罪をしている。
「ルカテ……っ」
それは真実なのかもしれない。ルカテは罪人なのかもしれない。しかし俺に謝罪する必要なんて何処にもない。
それに、俺にはルカテが罪人だなんて思えない。本人が認めていても、斬首されるほどの罪を犯したなどとは到底考えられない。
「レイス王、斬首はこの国においても極刑に類するものではないのですか。ルカテはまだ子供であり、その未来を考えれば極刑は重すぎます。どうか考え直してはいただけないでしょうか」
「旅人に諭される謂れは無いな。何も知らない外の人間が国の内情に口出しなど、かの大帝国は余程外部に頼った統治をしていると見える」
「しかし、私もルカテとは無関係ではありません。短い時間ではありますが、共に過ごすことでその善性を目にしています。斬首されなければならない程の罪を犯すなど考えられません!」
「ガル、もう大丈夫です……僕は……っ」
離れようとするルカテを、力づくで抱き寄せた。絶対にルカテを離してはいけないという強い意志で、レイス王から守るように。
「ルカテが何をしたと仰るのですか? こんな優しい子が重罪を犯すなど、何かの間違いで――」
「王子殺しだ」
「っ!?」
「2か月ほど前、ルカテは我が国の王子である息子を殺害している。処刑の理由としては十分だろう」
レイス王の低い声が告げたのは、あまりにも重い罪状だった。
命の重さに差は無いが、殺人の罪はそうじゃない。国の中心人物である王族の殺害は、虐殺を除けば最も重い罪だろう。
ルカテは回復魔法を修めるほどの優しい性根の子だ。それが殺人など、それも王族の人間を殺したなど信じられない。
しかし、ルカテ自身がそれを真実だと語っていた。俺の胸の中で、レイス王の言葉をただ無言で肯定していた。
「旅人がルカテと過ごした時間は余程短かったらしいな。よりにもよって殺人者を優しいなどと形容するとは……大帝国の武具携行証とやらは、人を見る目は保証してくれないようだ」
もはや皮肉を受け止めることすらできない。ルカテが殺人などするわけがないという思いと、ルカテ自身がそれを否定しないという現実に挟まれて、頭が上手く回らない。
「まだ不服があるのなら、ルカテ自身に聞けばいい。そうだな?」
「っ……はっ、はい……」
「ルカテ、我が息子であるドゥノーラ・レイスを殺したのはお前か?」
「はい……僕がドゥノーラ様を殺害致しました」
「ルカテ……っ」
「ルカテ、お前は斬首に不服か?」
「いいえ……この身に相応しい罰だと考えます」
「ルカテっ!!」
「以上だ、旅人よ。さあ、罪人をこちらに渡したまえ」
「しかし……しかしっ……」
本人が認めている以上、俺が口を挟む余地は無い。この国の誰もが、王子を殺した人間の処刑を願っているのだろう。
それでも、子供が処刑されるのを見過ごしたくは無い。何より、俺はまだ納得できていない。
「もういいんです、ガル……」
「何がいいんだ、ルカテ! せっかく生き残ったんだろ!? それなのに、これでいいわけないだろう!」
「いいえ、いいんです。最後に、ガルと出会えたから……僕は、それだけで満足です」
ルカテは笑っていた。その可憐な顔を歪ませて、笑顔を作っていた。その全身が、死への恐怖に怯えていた。
「さようなら、星のような人……どうか、僕のことは忘れてください……所詮は、星が流れるような一瞬の逢瀬だったのですから……」
「まだ諦めるなルカテ! 本当にお前が王子を殺したのか!? 何かの間違いなんじゃ――」
「ふっ、くくっ……」
レイス王は嘲笑っていた。子供の命がかかっている話し合いの最中には不釣り合いな、不細工な笑みを浮かべていた。
「ルカテが重罪人……?」
レイス王はそう言った。その険しい顔から冗談には聞こえないし、冗談で言えるような内容でも無い。
この国の王は本気で言っているのだ。ルカテは、斬首という重刑に処されるほどの罪を犯しているのだと。
「申し訳ありません、ガル……」
ルカテも認めている。レイス王の言葉を肯定して、俺に謝罪をしている。
「ルカテ……っ」
それは真実なのかもしれない。ルカテは罪人なのかもしれない。しかし俺に謝罪する必要なんて何処にもない。
それに、俺にはルカテが罪人だなんて思えない。本人が認めていても、斬首されるほどの罪を犯したなどとは到底考えられない。
「レイス王、斬首はこの国においても極刑に類するものではないのですか。ルカテはまだ子供であり、その未来を考えれば極刑は重すぎます。どうか考え直してはいただけないでしょうか」
「旅人に諭される謂れは無いな。何も知らない外の人間が国の内情に口出しなど、かの大帝国は余程外部に頼った統治をしていると見える」
「しかし、私もルカテとは無関係ではありません。短い時間ではありますが、共に過ごすことでその善性を目にしています。斬首されなければならない程の罪を犯すなど考えられません!」
「ガル、もう大丈夫です……僕は……っ」
離れようとするルカテを、力づくで抱き寄せた。絶対にルカテを離してはいけないという強い意志で、レイス王から守るように。
「ルカテが何をしたと仰るのですか? こんな優しい子が重罪を犯すなど、何かの間違いで――」
「王子殺しだ」
「っ!?」
「2か月ほど前、ルカテは我が国の王子である息子を殺害している。処刑の理由としては十分だろう」
レイス王の低い声が告げたのは、あまりにも重い罪状だった。
命の重さに差は無いが、殺人の罪はそうじゃない。国の中心人物である王族の殺害は、虐殺を除けば最も重い罪だろう。
ルカテは回復魔法を修めるほどの優しい性根の子だ。それが殺人など、それも王族の人間を殺したなど信じられない。
しかし、ルカテ自身がそれを真実だと語っていた。俺の胸の中で、レイス王の言葉をただ無言で肯定していた。
「旅人がルカテと過ごした時間は余程短かったらしいな。よりにもよって殺人者を優しいなどと形容するとは……大帝国の武具携行証とやらは、人を見る目は保証してくれないようだ」
もはや皮肉を受け止めることすらできない。ルカテが殺人などするわけがないという思いと、ルカテ自身がそれを否定しないという現実に挟まれて、頭が上手く回らない。
「まだ不服があるのなら、ルカテ自身に聞けばいい。そうだな?」
「っ……はっ、はい……」
「ルカテ、我が息子であるドゥノーラ・レイスを殺したのはお前か?」
「はい……僕がドゥノーラ様を殺害致しました」
「ルカテ……っ」
「ルカテ、お前は斬首に不服か?」
「いいえ……この身に相応しい罰だと考えます」
「ルカテっ!!」
「以上だ、旅人よ。さあ、罪人をこちらに渡したまえ」
「しかし……しかしっ……」
本人が認めている以上、俺が口を挟む余地は無い。この国の誰もが、王子を殺した人間の処刑を願っているのだろう。
それでも、子供が処刑されるのを見過ごしたくは無い。何より、俺はまだ納得できていない。
「もういいんです、ガル……」
「何がいいんだ、ルカテ! せっかく生き残ったんだろ!? それなのに、これでいいわけないだろう!」
「いいえ、いいんです。最後に、ガルと出会えたから……僕は、それだけで満足です」
ルカテは笑っていた。その可憐な顔を歪ませて、笑顔を作っていた。その全身が、死への恐怖に怯えていた。
「さようなら、星のような人……どうか、僕のことは忘れてください……所詮は、星が流れるような一瞬の逢瀬だったのですから……」
「まだ諦めるなルカテ! 本当にお前が王子を殺したのか!? 何かの間違いなんじゃ――」
「ふっ、くくっ……」
レイス王は嘲笑っていた。子供の命がかかっている話し合いの最中には不釣り合いな、不細工な笑みを浮かべていた。
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