重槍士は褐色毒ショタに出会う

papporopueeee

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出会い

これで、このギロチンでルカテを処刑することはできませんね

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「何が可笑しいと言うのですか、レイス王よ!」

「ああ、失礼。ルカテの言葉が可笑しくてな。まさか、人を星に形容するとは……気味の悪い夜空のような肌をした者が吐く言葉としては、実にピッタリじゃあないか」

「?」

 レイス王はルカテの褐色肌について言及しているらしい。おそらく揶揄しているのだろうが、どういう意味なのかが全くわからない。

 しかし、呆けていたのは俺だけだった。レイス王に付き添っている兵士も、いつの間にか周囲を囲んでいた民衆も、皆がルカテを嘲笑っていた。

「それにしても、人間離れした身体だとは思っていたが、ついに証明されたわけだ。その肌を見せれば、魔物は簡単に情けをかけてくれたことだろう。同族を殺すのは忍びないとな」

 ルカテは、皆からの恥辱に耐えるように身体を震わせていた。耳まで真っ赤にして、目じりに涙を溜めて、少しでもその肌を隠そうと外套の中で縮こまっていた。

 ようやくわかった。ルカテが、この国でどんな扱いを受けてきたのかを。魔法を褒められることもなく、その容姿を褒められたことも無いその意味を。

 褐色肌はこの地方では珍しい。旅人でも無ければ生涯目にすることも無いだろう。それ故に、ルカテは差別を受けてきた。この閉鎖的な国に生まれてしまったがばかりに、屈辱を常として育ってきた。両親を失い、信頼できる人間が誰一人存在しないこの国の中で、この子は一人で生きてきたのだ。

「そもそもの始まりから罪人なのだ、この子供は。我が父である先代に媚びを売って取り入った妾の子……その気色の悪い黒き肌で尊き王の血を汚した罪人よ。今まで生かされていただけでもありがたいと思うべきなのだ……そうだな?」

「はい……仰る通りでございます……」

「もういい、ルカテ……もういいんだ……」

「ガル……?」

 ルカテの頭を撫でてやる。その苦難に満ちた人生を、少しでも労えるように。

「そういう意味では、旅人の働きは見事であったな。お前のおかげで、ルカテをそのギロチンで処刑することができるのだから。国賊を魔物に喰われるなど、それこそ国の恥だ」

「もう結構です、レイス王よ」

「……何だと?」

「どうか、一時の無礼をお許しください」

「おい、何をする気――」

 ルカテを片手で抱いたまま、背中に背負っていたランスを振り上げる。そして兵士がボウガンを構えるよりも早く、力いっぱいに叩きつけた。

「が、ガル!?」

「っ……どういうつもりだ!」

「……これで、このギロチンでルカテを処刑することはできませんね」

 ランスに潰され、ギロチンの土台は木っ端微塵だ。刃の部分はかろうじて残っているが、処刑器具としては機能しない。

「お前っ! 旅人の分際でこのような蛮行、許されると思うのか!?」

「レイス王よ、どうか私とルカテに贖罪の機会をいただけないでしょうか」

「与えると思うのか! こんなことをしておいて!」

「私は魔物の討伐を生業としている狩人です。この槍と盾を以て、数多くの魔物を討伐してきました。この国の近隣には魔物が多く棲む森があるようですが、何かお困りではありませんか?」

「っ……お前、魔物ハンターだったかっ……むぅっ……」

「その反応だと、お役に立てることがありそうだ」

 レイス王の顔からは即座に怒りが引き、冷静な為政者としての顔が出てきた。その頭の中では、国としての損得を計算しているのだろう。

「…………グリフォンは狩れるか」

「可能です」

 猛禽類の上半身に獅子の下半身を持つ、空を駆ける魔物グリフォン。決して弱い魔物ではなく、単独で狩ったことは無かったが即答してみせた。

「よかろう、お前の口車に乗ってやる。最近森にグリフォンが棲みついた。そいつはこの国の付近まで獲物を探しに来ることも多く、襲われた兵士も少なくない。討伐できた暁には、ルカテの処遇も考え直してやる」

「寛大な処置に感謝いたします、偉大なるレイス王よ。では、グリフォンの討伐にあたってはルカテをお借りいたします」

「え?」

 驚きの声を上げたのはルカテだった。ここで自分の名前が出てくるとは少しも思っていなかったのだろう。

「馬鹿な。罪人を国外へ連れ出すなど許すと思うか?」

「ルカテは回復魔法を使える優秀な魔導士ですから、グリフォン狩りのサポート役としてはこれ以上なく適任です。それともまさか、旅人である私を単独でグリフォン討伐へと向かわせるおつもりですか? 贖罪の為とはいえ、彼の大帝国から正式なハンターライセンスを発行されているこの私を、たった独りで死地に向かわせると仰りますか?」

 本当はルカテをこの国で一人にしたくないだけだ。ルカテに討伐を手伝わせる気は無いし、危険に晒す気もない。

 その思惑はレイス王にも見透かされているようだった。

「ふん、どの口が言うか。……まあ、いいだろう。もしもお前がルカテを連れて逃げれば、帝国の人間が我が国の罪人を逃がしたことになる。国際問題となれば、お前もただでは済むまいな」

「その心配は無用です。必ずやルカテと共にグリフォンを討伐し、その首をレイス王に捧げましょう」

「いいだろう。ルカテの同行を許可してやる」

「ありがとうございます。ルカテも、それでいいか?」

「僕は嬉しいですけど……でも、本当にいいんですか? 僕ではガルの足を引っ張ってしまうかも……」

「大丈夫だ、自信を持て。それに、俺がルカテに近くに居て欲しいんだ」

「っ……それなら……はい……」

 このままルカテを処刑させるわけにはいかない。例え本当にルカテがドゥノーラ王子を殺していたのだとしても、その贖いの機会まで奪っていいはずがない。

「ふん、契約は成立だな。出発は明日の明朝とし、ルカテはその時に引き渡そう」

「なぜルカテを一度そちらに渡す必要が? 明日共に出立するのであれば、このまま私と共に宿に泊まればよいでしょう」

「忘れるでない。ルカテは未だ罪人だ。国の外ならともかく、この国を自由に歩かせるわけにはいかん。少なくとも今夜は牢に戻ってもらう」

 レイス王の言うことは尤もだ。俺とレイス王が個人的に取り引きしていることなど民衆たちは知る由も無い。王子殺しの犯人が自由にしていれば、それは国の信頼に関わる。

 しかし筋は通っていても、ここでむざむざとルカテを引き渡すこともしたくない。この国のルカテの立ち位置を知った今、ルカテが一番安全なのは俺の懐なのだから。

「では、私もルカテ共に牢に――」

「が、ガル! そこまで気を遣ってもらわなくて大丈夫です!」

「ルカテ……しかし……」

「僕は大丈夫ですから。それに、そこまでされてしまうと……困ってしまいます。僕の為にガルまで牢に入れてしまっては……僕は……。ただ牢屋で一晩過ごすだけです。何も心配することなど無いでしょう? だって、明日の朝にはガルが迎えに来てくれるのですから」

「……わかった」

「話は終わったか? こちらとしては、旅人が牢に入りたいと言うのなら一向に構わないが」

「僕一人だけです、レイス王。ガルは明日の準備もありますので……そうですよね、ガル?」

「ああ、必ず迎えに行く。ルカテこそ、外套を貸しておくから必ず返してくれよな?」

「はい……ありがとうございます……ガル……」

 ルカテは王と兵士に連れられ俺の元から歩き去って行った。一度も振り返ることもなく、簡易的な靴のせいで少しだけ歩きにくそうにしながら。その指で示していた、一番大きな建物のその隣の方向へと。
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