重槍士は褐色毒ショタに出会う

papporopueeee

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討伐

あいつら人間を舐めてやがる

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「ど、どこですか?」

「正面だ。あれは……犬? いや……違うか」

 慎重に盾から顔を出して前方の様子を窺う。すると、確かにガルの言う通りに複数の何かが近づいてきていた。

 最初は点のようだった影が次第に大きくなっていくにつれて、その全貌が明らかになっていく。犬のように四肢を使う四足歩行。全身が体毛で覆われた姿。数は4匹で、その顔は――

「え……人……?」

 ――まるで人のような目鼻立ちをしていた。

「人じゃない、あれは猿の魔物だ。人間に近い体の構造をしているから、人間の道具を扱える。あいつらも戦利品を持っているみたいだな」

 ガルの言う通り、猿たちはその体を人間の武具で武装していた。盾、剣、斧、棍棒。人間よりもずっと強靭な肉体で武器を持たれたら、いくらガルでもひとたまりもないんじゃないだろうか。

「に、逃げますか?」

 相手は複数であり、身のこなしも見るからに軽い。重い盾とランスを装備しているガルでは相性が悪そうに思えた。

「……いや、問題ない。あいつら人間を舐めてやがる」

「え?」

 ガルの言う通り、猿たちはこちらをまるで警戒していない。一直線に猛スピードで迫る様子からは、満ち溢れる自信を感じる。

 しかしそれは当然ではないか。彼らの恰好を見れば、既に武装した人間を打ち倒したことがあるのは明白だ。その自信は驕りではないように思えた。

「ルカテはこの盾の後ろに隠れてろ。絶対に前に出てくるなよ」

 ガルは僕を優しく下ろすと、盾を足で小突く。すると盾は自立するバリケードに変形した。

「が、ガルはどうするんですか?」

「俺は前に出て戦う。絶対の盾の後ろには通さないから安心しろ」

「でもっ、盾無しでは……僕を守るよりも、ガルが使ってください!」

 相手は複数だ。囲まれたりしたらランスでは防ぎきれない。

「いらんいらん。大盾はもっとデカい魔物と飛び道具用だからな。ああいう魔物相手だと、むしろ邪魔になる」

「でも……」

「盾から顔を出すくらいならいい。でも俺がいいと言うまで絶対に盾から出てこないこと。わかったな?」

「はい、わかりました……気を付けて、ガル」

 ガルは盾の前方に躍り出ると、穂先が後方を向くように両手でランスを構えた。低く腰を落とし、迫りくる猿を待ち受けている……ように見えていた。

「すー……ふー……っ!!」

 深呼吸して肩を大きく上下させた後、ガルはいきなり前方に跳び出した。

 まるで滑るように、地面と水平に跳躍するガル。堂々とした一瞬の踏み込みによって、ガルは正面から猿たちの不意を打ってみせた。

 突然眼前に現れたガルに、猿たちも動揺している。

「おらあぁっ!!」

 ガルはその長く太い得物で大きく薙ぎ払った。着地した足を軸に回転させ、勢いをそのまま乗せた一撃によって、猿たちは成す術もなく吹き飛ばされる。咄嗟に武器を構えて防御行動を取っていたようだが、ガルの剛槍の前では何の意味も無かった。

「すごい……っ、ガル!」

 しかし吹き飛ばされたのは3匹だけだった。最後尾に居た猿は後方に躱していて、薙ぎ払いの隙を狙って斧を振り被りながらガルに飛びかかろうとしている。

 咄嗟に目を瞑ってしまいそうになった。ガルの頭が割られ、血飛沫を上げる凄惨な光景を想像してしまった。

 しかし、それは僕の杞憂だった。ガルは隙など晒してはいなかった。

 薙ぎ払いによって生まれた遠心力を流すようにランスをくるりと回転させて軸足を入れ替えると、その切っ先をピタリと合わせて――

「ふっ!!」

 ――斧が届くよりもずっと遠い位置から、最後の1匹を貫いた。
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