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討伐
星空のように優しい光景
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「っ……」
「……これで良し」
「…………何をしているんですか?」
「ルカテっ? 悪い、うるさかったか?」
物音に目を開けてみれば、ガルは大盾をバリケードに変形させて僕の寝ている背後に設置していた。どうやら、夜這いではなかったようだ。
「なぜ、今それを? それに、そこまでしていただかなくても魔物除けはしてあるのですよね?」
「臆病だから、できることは全部しておかないと落ち着かないんだ。ただ、あんまり過保護にしても、ルカテは逆に気を遣うかと思ってな。だからこっそりとと考えていたんだが、睡眠の邪魔をしては本末転倒だった。すまない」
「いえ、その気持ちは嬉しいです。僕の安全を思ってくれてありがとうございます、ガル」
「そう言ってもらえると、俺の罪悪感も晴れる。今度こそ邪魔しないから、存分に眠ってくれ」
「はい……」
ガルは盾を置いて再び離れて行ってしまった。少しだけ残念だけれども、そこもガルの魅力なのだろう。こんな僕にも対等に接してくれて、大切に思ってくれて、大事に扱ってくれる。レイス国の人たちとも、あの王子様とも違う。あんな人といっしょにしては、ガルに失礼だ。
「っ……」
最低だ。僕は何を考えているのだろう。どうして今、死者を貶めるようなことを考えてしまったのだろう。僕の毒で殺しておきながら、見下すような思考をしてしまったのだろう。
僕は殺人者だ。王子様は罪人でも悪人でもなかったのに、その命を僕は奪った。命の灯が消える寸前の、恐怖と驚愕と絶望に塗れた表情を今でも憶えている。僕を恨み、僕に助けを求める目は一生忘れられない。
こんな僕が誰かに愛されたいだなんて烏滸がましい。ガルのような人に優しくしてもらえるような人間ではない。
ガルは人一倍優しいから、こんな僕にも触れてくれる。僕に対する嫌悪感を表面には出さずに、まるで普通の子供みたいに接してくれる。
でも、その優しさに甘えてはいけない。だって、僕の身体には人を死に至らしめる猛毒が流れているのだから。こんな僕が近くに居てはガルの気は休まらないし、いつかは死んでしまうかもしれない。
「ガル…………っ」
それだけは嫌だ。ガルを殺してしまうのだけは嫌だ。ああ、でも……既に人を殺している僕が、ガルだけは死んでほしくないなんて……あまりにも虫が良すぎる願いでしょうか……。
「大丈夫か?」
「あっ……」
「やっぱり、寝付けないか? こんな森の中だもんな、無理も無い」
「いっ、いえ……申し訳ありません……」
「こんなのはどうだ? 昔、母親によくこうしてもらっていてな……」
そう言って、ガルは僕に近づくと胸の上に手を置いた。そして寝袋の上からぽんぽん、と優しいリズムを奏でてくれた。
「嫌じゃないか?」
「はぃっ……ありがとう、ガル……」
程よい重みと、心地のいいリズム。何より、ガルの思いが掌から直接伝わってくる。その手が胸に触れる度に、僕の中で淀んでた思いが攪拌されて、心の奥底に光が差す。
涙で滲む視界の中、焚火に照らされるその顔をずっと見ていたい。そう思いながらも、僕はゆっくりと目を閉じた。星空のように優しい光景を、記憶に刻みつけながら。
「……これで良し」
「…………何をしているんですか?」
「ルカテっ? 悪い、うるさかったか?」
物音に目を開けてみれば、ガルは大盾をバリケードに変形させて僕の寝ている背後に設置していた。どうやら、夜這いではなかったようだ。
「なぜ、今それを? それに、そこまでしていただかなくても魔物除けはしてあるのですよね?」
「臆病だから、できることは全部しておかないと落ち着かないんだ。ただ、あんまり過保護にしても、ルカテは逆に気を遣うかと思ってな。だからこっそりとと考えていたんだが、睡眠の邪魔をしては本末転倒だった。すまない」
「いえ、その気持ちは嬉しいです。僕の安全を思ってくれてありがとうございます、ガル」
「そう言ってもらえると、俺の罪悪感も晴れる。今度こそ邪魔しないから、存分に眠ってくれ」
「はい……」
ガルは盾を置いて再び離れて行ってしまった。少しだけ残念だけれども、そこもガルの魅力なのだろう。こんな僕にも対等に接してくれて、大切に思ってくれて、大事に扱ってくれる。レイス国の人たちとも、あの王子様とも違う。あんな人といっしょにしては、ガルに失礼だ。
「っ……」
最低だ。僕は何を考えているのだろう。どうして今、死者を貶めるようなことを考えてしまったのだろう。僕の毒で殺しておきながら、見下すような思考をしてしまったのだろう。
僕は殺人者だ。王子様は罪人でも悪人でもなかったのに、その命を僕は奪った。命の灯が消える寸前の、恐怖と驚愕と絶望に塗れた表情を今でも憶えている。僕を恨み、僕に助けを求める目は一生忘れられない。
こんな僕が誰かに愛されたいだなんて烏滸がましい。ガルのような人に優しくしてもらえるような人間ではない。
ガルは人一倍優しいから、こんな僕にも触れてくれる。僕に対する嫌悪感を表面には出さずに、まるで普通の子供みたいに接してくれる。
でも、その優しさに甘えてはいけない。だって、僕の身体には人を死に至らしめる猛毒が流れているのだから。こんな僕が近くに居てはガルの気は休まらないし、いつかは死んでしまうかもしれない。
「ガル…………っ」
それだけは嫌だ。ガルを殺してしまうのだけは嫌だ。ああ、でも……既に人を殺している僕が、ガルだけは死んでほしくないなんて……あまりにも虫が良すぎる願いでしょうか……。
「大丈夫か?」
「あっ……」
「やっぱり、寝付けないか? こんな森の中だもんな、無理も無い」
「いっ、いえ……申し訳ありません……」
「こんなのはどうだ? 昔、母親によくこうしてもらっていてな……」
そう言って、ガルは僕に近づくと胸の上に手を置いた。そして寝袋の上からぽんぽん、と優しいリズムを奏でてくれた。
「嫌じゃないか?」
「はぃっ……ありがとう、ガル……」
程よい重みと、心地のいいリズム。何より、ガルの思いが掌から直接伝わってくる。その手が胸に触れる度に、僕の中で淀んでた思いが攪拌されて、心の奥底に光が差す。
涙で滲む視界の中、焚火に照らされるその顔をずっと見ていたい。そう思いながらも、僕はゆっくりと目を閉じた。星空のように優しい光景を、記憶に刻みつけながら。
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