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討伐
あの時だけは、必要とされている気分になれたから
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「これが寝袋だ。持ち運び重視の代物だから大して寝心地も良くないし、ルカテの身体にはサイズも合ってないが……まあ、外套にくるまって寝るよりはマシだろう」
「ガルはどうするのですか?」
「俺は元々野営中には横になっては寝ない。寝込みを襲われないように、座って寝るんだ。だから、遠慮せずに使ってくれていい」
「……」
ガルが嘘を言っているのはすぐにわかった。横になって寝ないのなら、寝袋を携帯している意味が無く矛盾している。それに高価な魔物除けの聖水を撒いたから、魔物に襲われることは気にしなくていいと言っていた。横にならずに警戒する必要なんてない。
気を遣っているのは明らかだった。きっと僕が何を言っても、寝袋を譲ることを譲らないのだろう。
「……わかりました。ありがとうございます、ガル」
「おう。おやすみ、ルカテ」
「はい……おやすみなさい、ガル」
焚火から少しだけ離れた位置に寝袋を敷いてその中に潜り込む。焚火の灯りが気になるけれども、牢屋に比べたらずっとマシだ。
何より、近くにガルが居てくれている。誰かと一緒に眠るのは久しぶりで、朝にはきっとガルの顔を見ながら目を覚ますことになるのだろう。
「……っ」
焚火の面倒を見ているガルをじっと見ていたら、視線に気づいて微笑み返してくれた。それが何となく気恥ずかしくて、寝返りを打って視線を逸らす。
「…………」
明日も早いのだから、早く寝てしまおう。いよいよグリフォン討伐という時にガルの足を引っ張るなんてことはしたくない。
しかしそう考えれば考えるほどに、先ほどのガルの言葉が脳の中を反響して暴れ回った。
『ただ傍に居てくれるだけで、俺は満足なんだよ』
「ぁっ……」
つい名前を呼びそうになってしまって、咄嗟に口を噤んだ。もう独りきりの独房では無いのだから、感情のままにガルを求めてはいけない。
しかし、ガルの言葉が頭を離れてくれないのも事実だ。あの言葉を、ガルはどんな思いで口にしたのだろうか。
『もう少しだけ、こうやって抱きしめていてもいいか? 夜伽なんて必要無い……ただ、こうやってルカテを抱きしめていたいんだ』
素直に考えれば言葉通りの意味なのだろう。僕のことを抱きしめたい。夜伽なんかはしなくていいから、ただ抱擁していたい。つまり、ガルにとって僕はそういう存在だと告白されたということだ。
昔母様が話してくれた。人を好きになるということは、そういうことなのだと。母様と父様は、ただ傍に居たいと思い合っていただけ。その思いの結実として、僕をその身に授かったと語っていた。
「…………」
同性への抵抗なんて今更存在しない。むしろ異性よりも慣れているくらいだ。毒のせいで子供もできない体なのだから、異性にこだわる理由も無い。
だからもしも。もしもガルが僕を求めてくれるのなら。僕はこの身の全てを、ガルに捧げたい。心は言わずもがな、この体だって。ガルはこんな毒に満ちた僕にも、傍に居て欲しいと言ってくれるから。
「ルカテ、寝たか?」
「っ!?」
「……寝たみたいだな。さて……」
突然の声掛けに返事をし損なったせいで、ガルは僕が寝ていると勘違いしてしまった。そしてその上で、何かをしようとしていた。何かをするために、寝ている僕の方へと歩いてきていた。
やはり、夜伽なんて必要無いというのは気遣いだったのだろうか。寝ている間に、気づかれないように僕に精を吐き出そうとしているのだろうか。
「っ……」
しかし、それでも良かった。もとより、僕はそこまで夜伽に抵抗を持っているわけではない。あの時だけは、必要とされている気分になれたから。夜伽自体は気持ち悪いし、ただ利用されているだけとわかってはいても、それでも寂しさを誤魔化すことだけはできたから。
ガルが相手なら、きっと不快感すらも無いに違いない。ガルにもらった恩を返す為に、僕は心の底から奉じることができる。
だから、いい。ガルが僕の寝込みを襲ったとしても、僕はその全てを受け入れて――
「ガルはどうするのですか?」
「俺は元々野営中には横になっては寝ない。寝込みを襲われないように、座って寝るんだ。だから、遠慮せずに使ってくれていい」
「……」
ガルが嘘を言っているのはすぐにわかった。横になって寝ないのなら、寝袋を携帯している意味が無く矛盾している。それに高価な魔物除けの聖水を撒いたから、魔物に襲われることは気にしなくていいと言っていた。横にならずに警戒する必要なんてない。
気を遣っているのは明らかだった。きっと僕が何を言っても、寝袋を譲ることを譲らないのだろう。
「……わかりました。ありがとうございます、ガル」
「おう。おやすみ、ルカテ」
「はい……おやすみなさい、ガル」
焚火から少しだけ離れた位置に寝袋を敷いてその中に潜り込む。焚火の灯りが気になるけれども、牢屋に比べたらずっとマシだ。
何より、近くにガルが居てくれている。誰かと一緒に眠るのは久しぶりで、朝にはきっとガルの顔を見ながら目を覚ますことになるのだろう。
「……っ」
焚火の面倒を見ているガルをじっと見ていたら、視線に気づいて微笑み返してくれた。それが何となく気恥ずかしくて、寝返りを打って視線を逸らす。
「…………」
明日も早いのだから、早く寝てしまおう。いよいよグリフォン討伐という時にガルの足を引っ張るなんてことはしたくない。
しかしそう考えれば考えるほどに、先ほどのガルの言葉が脳の中を反響して暴れ回った。
『ただ傍に居てくれるだけで、俺は満足なんだよ』
「ぁっ……」
つい名前を呼びそうになってしまって、咄嗟に口を噤んだ。もう独りきりの独房では無いのだから、感情のままにガルを求めてはいけない。
しかし、ガルの言葉が頭を離れてくれないのも事実だ。あの言葉を、ガルはどんな思いで口にしたのだろうか。
『もう少しだけ、こうやって抱きしめていてもいいか? 夜伽なんて必要無い……ただ、こうやってルカテを抱きしめていたいんだ』
素直に考えれば言葉通りの意味なのだろう。僕のことを抱きしめたい。夜伽なんかはしなくていいから、ただ抱擁していたい。つまり、ガルにとって僕はそういう存在だと告白されたということだ。
昔母様が話してくれた。人を好きになるということは、そういうことなのだと。母様と父様は、ただ傍に居たいと思い合っていただけ。その思いの結実として、僕をその身に授かったと語っていた。
「…………」
同性への抵抗なんて今更存在しない。むしろ異性よりも慣れているくらいだ。毒のせいで子供もできない体なのだから、異性にこだわる理由も無い。
だからもしも。もしもガルが僕を求めてくれるのなら。僕はこの身の全てを、ガルに捧げたい。心は言わずもがな、この体だって。ガルはこんな毒に満ちた僕にも、傍に居て欲しいと言ってくれるから。
「ルカテ、寝たか?」
「っ!?」
「……寝たみたいだな。さて……」
突然の声掛けに返事をし損なったせいで、ガルは僕が寝ていると勘違いしてしまった。そしてその上で、何かをしようとしていた。何かをするために、寝ている僕の方へと歩いてきていた。
やはり、夜伽なんて必要無いというのは気遣いだったのだろうか。寝ている間に、気づかれないように僕に精を吐き出そうとしているのだろうか。
「っ……」
しかし、それでも良かった。もとより、僕はそこまで夜伽に抵抗を持っているわけではない。あの時だけは、必要とされている気分になれたから。夜伽自体は気持ち悪いし、ただ利用されているだけとわかってはいても、それでも寂しさを誤魔化すことだけはできたから。
ガルが相手なら、きっと不快感すらも無いに違いない。ガルにもらった恩を返す為に、僕は心の底から奉じることができる。
だから、いい。ガルが僕の寝込みを襲ったとしても、僕はその全てを受け入れて――
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