21 / 55
討伐
今の僕ではもう、夜伽のお相手をすることはできないのです……
しおりを挟む
言いたくないのなら言わせたくはないけれども、毒の対策をするためには知っておかなければならない。ルカテに言わせるのではなく、こちらから確認する形にしてやるのが最大限の気遣いだろうか。
「ふむ……おしっこか?」
「いいえ、尿も涙や汗と同じです。猛毒ではありますが、空気や水に触れると無毒化します」
それなりに自信があったのだが、即座に否定されてしまった。人に話すのが恥ずかしい体液となると、それくらいしか思いつかないのだが……。
「いや、待て……そうか……」
「っ……あはは……多分、ご想像の通りです……」
俺の視線に気づいたのだろう。ルカテは答えを待たずに肯定した。
確かにこれなら合点がいく。自分の精液の話など他人にはあまりしたくないだろう。ルカテが羞恥心から口籠ったのもわかる……と思っていた。
ルカテに恥ずかしがっている様子は無い。自身の精液について言及されているのに、その顔は曖昧に苦笑いを浮かべているだけだ。羞恥心など微塵もなく、俺に知られてしまったことがただ残念という顔だった。
「? …………っ!」
少しだけ考えて気づいた。そもそも、精液が毒であっても当初の疑問の解決にはならない。血液であっても、精液であっても、その毒が王子様に触れる状況など思いつかない。
ルカテの受けていた仕打ちが差別だけであったのなら、王子様が死ぬはずも無かったのだ。
「ルカテっ……お前はっ……」
「申し訳ありません、ガル……今の僕ではもう、夜伽のお相手をすることはできないのです……」
それは、もうルカテにとっては日常なのだろう。誰かに使われることは当たり前のことで、だから出会って2日も経っていない俺に対してそんな謝罪をしてしまうのだろう。
「そんなことを謝る必要なんて無い。俺はルカテにそんなことを求めてはいない」
「そう……ですよね……。僕なんて……使い物にすらならない……」
「逆だよ、ルカテ……逆だ。ただ傍に居てくれるだけで、俺は満足なんだよ」
「え?」
ルカテの頭に手を添えて、包み込むように抱きしめる。
ルカテは幸せになるべき子供だ。今まで苦労をしてきた分、その未来は笑顔に満ちているべきだ。
眠る時には明日への期待で頭をいっぱいにして。目が覚めたら希望で胸をいっぱいにして。毎日は現実的では無いかもしれないけれど、少しでも幸福な日々を過ごして欲しい。
「えっ……えっ……がっ、ガル……っ?」
「もう少しだけ、こうやって抱きしめていてもいいか? 夜伽なんて必要無い……ただ、こうやってルカテを抱きしめていたいんだ」
「っ!? そっ、それって……っ」
「ダメか?」
「いっ、いえ……っ。ガルが、そうしたいなら……はぃっ……いいですよ……っ」
大人たちからの悪意によって歪んでしまったその価値観を、少しずつでも変えていけたらと思う。その肌も、その毒も、決してルカテの価値を下げるものでは無い。奉仕なんてする必要が無いくらいに、その身には将来への希望が詰まっている。
子供とはただ生きているだけで尊く、愛される存在だ。子供は大人に守られるのが常であり、大人と子供の関係とはそういうものだ。大人である俺は子供であるルカテを守り、ルカテは遠慮なく甘えればいい。
俺が両親にしてもらったことを全部、ルカテに返してやろう。そうしていつか、ルカテも……。
「大丈夫……大丈夫だからな……」
「ガル……?」
体液が毒で変じたのには原因があるはずだ。食べ物か、魔物か、呪いか、あるいは魔法か。なんにせよ、原因が特定できれば治すことだってできるはずだ。
絶対に治してやれるなんて、期待を持たせるようなことは言えないけれども。ガルが少しでも安心して未来を想えるように、俺はその成長途中の小さな身体を抱きしめながら撫でてやった。
「ふむ……おしっこか?」
「いいえ、尿も涙や汗と同じです。猛毒ではありますが、空気や水に触れると無毒化します」
それなりに自信があったのだが、即座に否定されてしまった。人に話すのが恥ずかしい体液となると、それくらいしか思いつかないのだが……。
「いや、待て……そうか……」
「っ……あはは……多分、ご想像の通りです……」
俺の視線に気づいたのだろう。ルカテは答えを待たずに肯定した。
確かにこれなら合点がいく。自分の精液の話など他人にはあまりしたくないだろう。ルカテが羞恥心から口籠ったのもわかる……と思っていた。
ルカテに恥ずかしがっている様子は無い。自身の精液について言及されているのに、その顔は曖昧に苦笑いを浮かべているだけだ。羞恥心など微塵もなく、俺に知られてしまったことがただ残念という顔だった。
「? …………っ!」
少しだけ考えて気づいた。そもそも、精液が毒であっても当初の疑問の解決にはならない。血液であっても、精液であっても、その毒が王子様に触れる状況など思いつかない。
ルカテの受けていた仕打ちが差別だけであったのなら、王子様が死ぬはずも無かったのだ。
「ルカテっ……お前はっ……」
「申し訳ありません、ガル……今の僕ではもう、夜伽のお相手をすることはできないのです……」
それは、もうルカテにとっては日常なのだろう。誰かに使われることは当たり前のことで、だから出会って2日も経っていない俺に対してそんな謝罪をしてしまうのだろう。
「そんなことを謝る必要なんて無い。俺はルカテにそんなことを求めてはいない」
「そう……ですよね……。僕なんて……使い物にすらならない……」
「逆だよ、ルカテ……逆だ。ただ傍に居てくれるだけで、俺は満足なんだよ」
「え?」
ルカテの頭に手を添えて、包み込むように抱きしめる。
ルカテは幸せになるべき子供だ。今まで苦労をしてきた分、その未来は笑顔に満ちているべきだ。
眠る時には明日への期待で頭をいっぱいにして。目が覚めたら希望で胸をいっぱいにして。毎日は現実的では無いかもしれないけれど、少しでも幸福な日々を過ごして欲しい。
「えっ……えっ……がっ、ガル……っ?」
「もう少しだけ、こうやって抱きしめていてもいいか? 夜伽なんて必要無い……ただ、こうやってルカテを抱きしめていたいんだ」
「っ!? そっ、それって……っ」
「ダメか?」
「いっ、いえ……っ。ガルが、そうしたいなら……はぃっ……いいですよ……っ」
大人たちからの悪意によって歪んでしまったその価値観を、少しずつでも変えていけたらと思う。その肌も、その毒も、決してルカテの価値を下げるものでは無い。奉仕なんてする必要が無いくらいに、その身には将来への希望が詰まっている。
子供とはただ生きているだけで尊く、愛される存在だ。子供は大人に守られるのが常であり、大人と子供の関係とはそういうものだ。大人である俺は子供であるルカテを守り、ルカテは遠慮なく甘えればいい。
俺が両親にしてもらったことを全部、ルカテに返してやろう。そうしていつか、ルカテも……。
「大丈夫……大丈夫だからな……」
「ガル……?」
体液が毒で変じたのには原因があるはずだ。食べ物か、魔物か、呪いか、あるいは魔法か。なんにせよ、原因が特定できれば治すことだってできるはずだ。
絶対に治してやれるなんて、期待を持たせるようなことは言えないけれども。ガルが少しでも安心して未来を想えるように、俺はその成長途中の小さな身体を抱きしめながら撫でてやった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる