重槍士は褐色毒ショタに出会う

papporopueeee

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討伐

ルカテは口籠った

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 夜の森、野営中にて

 日も暮れた森の中。俺はルカテを膝に乗せて焚火に当たっていた。

 ルカテはあまり俺に近づきたくなさそうだったが、夕食前に頼み込んでみたら遠慮がちに膝に乗ってくれた。夕食も終えて時間の経った今では、朝の時のように身を寄せてくれている。

 しばらくは俺の方から積極的にスキンシップを求めた方がいいのだろう。ルカテはその身が毒だということを隠して俺に引っ付いて甘えていた。その内側に人恋しさを抱えているのは明白だ。

 他の人はともかく、俺は毒など気にしないという事をその身体に理解させてやろう。

「それじゃあ、あくまで猛毒なのは一部だけなのか?」

 今はルカテが落ち着くまでは聞けなかった、その身体のことを話してもらっていた。魔物がひしめく森の中ということもあり中々聞く機会が無かったが、野営中の今ならルカテのことだけを考えられる。魔物除けの聖水も撒いてあるし、邪魔が入ることもあるまい。

「いいえ、例外なく猛毒です。分泌された直後の体液はその全てが猛毒であり、傷に触れれば死に至るという点では同じです。しかし、体液の種類によって無毒化する条件が異なります。涙と汗は空気や水に触れただけで弱まるので、実質的には人には無毒と言っていいのかもしれません。唾液も同様で、直接傷を舐めるでもしない限りただの唾液です」

 それなら、俺がルカテの涙や汗を拭ってやる分には何も問題はなさそうだ。

「しかし、血液の毒は強力です。血液は傷口だけでなく、粘膜に触れるのも危険です。水に混ざると無毒化するのは唾液などと同様ですが、空気に晒していても長時間その毒性を保ち続けます。密閉すれば、一月以上も毒のままです」

「ふむ……かなり調べてあるんだな……」

「……命に関わることですから」

 尤もな理由だろう。ルカテからすれば、自身の持つ毒の特性は是非とも知っておきたいに違いない。

「レスト国の王子が死んだのも、その毒が原因なんだな?」

「っ……はい」

 ルカテは俺から顔を背けたままこくりと頷いた。

 国の王子がルカテの毒によって死んだとあれば、この体質は国の民衆も知っているのだろう。その身体に流れる毒の研究もレスト国が先導して行ったに違いない。せめて人道に則った研究が行われたことを願うばかりだ。

「生来からこの体質だったわけじゃないんです。半年前までは……少なくとも人を殺すほどの毒ではなかったと思います……」

「そうなるとここ半年の間で体質が変わったってことか……? それも、致死性の毒に……?」

 にわかには信じがたい。猛毒というだけでも尋常ではないのに、たったの半年で変わるなど、とんだ成長期もあったものだ。

「誰も知らなかったんです。王子様も、僕自身も……体液が毒に変わっているなんて、思いもしなかった。だからあの日、王子様は死ぬ気なんて無くて、僕も殺すつもりはありませんでした」

 つまり、殺人ではなく事故だったということだ。ルカテに悪意は無く、殺意も無かった。体液が毒に変わっているなど予想しようも無いのだから過失も無い。それでもルカテが極刑を科されてしまったのは、レイス国での立ち位置が悪かったことと、相手が王族だったからだろう。

 思っていた通り、ルカテは殺人を犯すような子ではなかった。

「しかし、それでも不可解なことはあるな。ルカテの体液は傷に触れた時、血液であっても粘膜に触れないと毒は発揮されない。実質的には血液以外の体液には毒は無いようなものだから、王子の傷口か粘膜にルカテの血液がかかったことになるが……どんな状況だ?」

 二人が刃物で斬り合いでもしていればそんな状況にもなるかもしれないが、現実的ではない。しかもルカテはレスト国では忌み嫌われていたのだ。孤独で寂しい思いをしていたルカテの血が、どうしたら王子に触れることになるのか。

 王子に残虐趣味があったのなら、ルカテを切りつけた後に血液を舐めた可能性もあるかもしれない。しかし、褐色肌を人間と思っていないあの国で、ルカテの血液を自主的に舐めるとも考えにくい。

「……血液よりももっと強い毒性を持つ体液があるんです。粘膜は言うに及ばず、皮膚に触れただけでも確実にその身体を死に至らしめるほどで……」

「何だと?」

 それでは話が変わってきてしまう。今までに聞いていたルカテの毒は強力ではあるものの、効果を発揮する条件がかなり限定的だった。武器としては強力無比だが、ルカテに殺意が無ければ注意しているだけで防げる程度の毒でしかなかった。

 皮膚にかかっただけで危険となると、注意だけではなく対策が必要になってくる。万が一にもルカテに俺を殺させない為にも、その最も強力な毒については詳しく聞いておく必要があるだろう。

「その毒というのは、どこの体液なんだ?」

「っ……えっと……」

 ルカテは口籠った。言いにくそうに、その唇をもにょもにょとしている。
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