重槍士は褐色毒ショタに出会う

papporopueeee

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討伐

その腹に突き刺さったランスには真っ赤な血が滴っていた

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「ガルっ!!」

 鋭く硬いグリフォンの爪が、硬く重厚な大盾にぶつかり、音の爆発が起こった。

 グリフォンと比較してしまうとあまりにも小さいガルの体躯では、その突進の勢いに耐えることができるわけもなく、構えていた盾ごと大きく吹き飛ばされ――

「うそ……」

 ――吹き飛ばされてはいなかった。

 ガルはその大盾でグリフォンの爪による一撃を受け止めていた。自身よりも何倍も大きく強靭な魔物の一撃を受けても、両足でしっかりと立っていた。

「■■■――!!」

 再びグリフォンが前脚を振り下ろし、轟音が鳴り響く。しかし飛び掛かりと比べれば軽い一撃では、やはり盾を構えたガルを崩すことはできなかった。

 あの大盾は伊達では無かったのだ。ガルの肉体にはあの大盾を使いこなすための筋肉が詰まっていて、それはグリフォンの一撃を防ぐほどに強靭であった。

「ガルっ……すごいっ……!」

 もはや不安など吹き飛んでいた。あの頼もしい背中を見せられては、ガルが負けることなど考えられなかった。グリフォンに最初の飛び掛かり以上の攻撃をできるとは思えない。一度あそこまで接近してしまったら、もはやガルの鉄壁の前に成す術も無い……そう思っていた。

「■■■■――!!」

 グリフォンは何度もガルに向かってその爪を振り下ろす。金属音を響かせながら、重厚な大盾に何度も攻撃を重ねる。サイドステップで位置を変え、角度を変え、ガルへと猛撃する。

 ガルはその全てを防いでいる。グリフォンが移動すれば即座に身体の向きを変え、大盾を構えているとは思えない俊敏な身のこなしでグリフォンを正面に捉え続けている。しかし、それだけだった。ガルは確かにグリフォンの攻撃を防いではいるものの、一度も攻勢に転じることができていない。

「ガル……ガルっ……」

 いつの間にか、僕は無意識に両手を顔の前で組んでいた。身体が勝手に、ガルの勝利を祈り始めていた。

 この膠着状態がこのまま続いた時、先に力尽きるのはどちらなのか。そんなのは見るからに明らかだ。そもそも人間と魔物のフィジカルには大きな差があり、攻撃と防御では精神力の消耗量も違うだろう。ガルは受け損なった瞬間に絶命するかもしれないが、グリフォン側はそうじゃない。見ての通りその攻撃のチャンスは何度もあり――

「■■■■■■■――!!」

 ――ついにグリフォンはその上体を大きく持ち上げた。

 その体重を使ってガルを上から踏み潰すつもりなのだろう。のしかかられてしまったら、いくら強靭な盾といえども意味を為さない。一度踏まれてしまえば、その巨体を持ち上げない限り脱出は敵わず、人間の力であのグリフォンを持ち上げるなどできるわけがない。

「ガルっ! 逃げて!!」

 思わず叫んでいた。声を出さずにはいられなかった。

 そして、ガルは僕の言葉とは真逆に、グリフォンの方へ向かって大きくステップを踏んでいた。

「■■――!?」

 高く持ち上げられたその胴体と地面の間に潜り込むと、ガルはその盾をバリケードへと変形させた。

 一瞬にして身体の下に現れた障害物にのしかかりを阻害され、グリフォンの上半身が無防備に宙に浮く。

 ガルはその隙を見逃さず、グリフォンの腹を目掛けて、両手で構えたランスを突き刺した。

「■■■■■■■――!?」

 グリフォンの叫び声が響き渡る。その腹に突き刺さったランスには真っ赤な血が滴っていた。

「やった! やった、ガル!!」

 思わずぴょんぴょんと跳ねてしまった。まるで自分のことのように、ガルの強さが誇らしくて堪らなかった。

 ガルはずっと隙を窺っていたのだ。グリフォンが焦れるのを盾の裏で待っていたのだ。

 心があるのかもわからない魔物相手に心理戦を仕掛け、そして見事に上回って見せた。文字通りの形成逆転だ。

 ガルは赤く染まったランスを素早く引き抜くと、再びグリフォンの腹部へと突き刺した。

「■■■――!!」

 しかし、二発目の突きは大きな翼による羽ばたきに邪魔されてしまい、深くは刺さらなかったようだ。グリフォンはその後脚で地面を蹴ると、盾を飛び越えてガルと大きく距離を取った。

「…………」

 ガルに油断している様子は無かった。グリフォンの流血が地面に垂れて血溜まりを作っていても、冷たい眼差しで睨みつけたまま盾を再び構えていた。

 僕はガルの勝ちを確信していた。ガルにはグリフォンの攻撃は通じない。再び飛び掛かったところで、ガルならもう一度防げる。接近戦になってしまえば、それはもうガルの距離だ。あの流血では、持久戦になってもガルに分があるだろう。

「ガルっ……ガルっ……!」

 感情が勝手に唇から溢れ出していく。ただ見ているだけなのに、身体が興奮してしまって仕方がない。自分のことのように、いや自分のこと以上に、ガルが強いことが嬉しくて仕方がない。

「■■■■――!!」

 そんな僕の期待を千々に割かんばかりの咆哮をあげると、グリフォンは翼をはためかせ飛び上がった。大きな翼が飾りではないことを示すように、グリフォンはその巨体で飛んでいた。

 逃げるつもりだろうか。このまま戦っていてもグリフォンに勝ち目は無いのだから、それは英断と言えるのだろう。できることならガルが勝利する様を見たかったけれども、無事に帰ってきてくれるのならなんだっていい。

「■■■■■■■――!!」

 僕の予想通り、グリフォンはその身を翻すと後方へと飛び去った。飛び掛かりとは比べ物にならないスピードで、その影が豆粒のように小さくなったかと思えば――

「えっ……?」

 ――豆粒サイズだったはずの影が、瞬きをしただけでガルの目前まで迫っていた。

「■■■■■■■――!!」

 気づいた時にはグリフォンは再び上空に居て、まるで勝利の雄叫びと言わんばかりの声を上げていた。
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