重槍士は褐色毒ショタに出会う

papporopueeee

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決着

僕だって

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 気づいた時には、ガルの声を背中に感じる場所に躍り出ていた。安全なガルの懐から飛び出して、いつボウガンの矢に射抜かれてもおかしくない場所へと足が動いていた。

「……」

 レイス王は黙って僕の動向を窺っている。その昏く陰った瞳から、警戒しているのが見て取れる。兵士たちもそうだ。僕を制止する様子は無いが、ボウガンの狙いはピッタリと僕の胸へと合わせている。

 ガルも、僕を連れ戻すことはせずに見守ってくれている。僕の覚悟を汲んでくれている。

 この離宮に居る全員が、僕の一挙手一投足に注目していた。

「……止まれ。それ以上近づくなルカテ」

 レイス王からそう告げられたのは、王の元まであと2メートルというところだった。非力な僕ではどうあがいても危害を加えることができない距離だ。

「レイス王……お話があって、ここまで参りました。どうか、僕の話を聞き遂げてはもらえないでしょうか」

「今更になって、お前の話を聞けだと? この期に及んで、命乞いでもしにきたか?」

「はい、その通りにございます」

「なに……?」

 少しだけ、レイス王の眉が吊り上がった。僕の言葉に、その感情を動かした。

 レイス王にガルの言葉は届かなかった。でも、それは当然と言えば当然だ。ガルは部外者なのだから。

 表面上の事情しか知らず。ドゥノーラ王子のことを知らず。レスト王が正面から僕を見るときの瞳を知らない。だから、その言葉がどれほど正しくとも、レスト王の決意は動かせない。

「……よかろう。我が息子への贐にその汚れた言葉を添えたいと宣うのならば、このレイス王が聞いてやる」

「ありがとうございます」

 死者であるドゥノーラ王子は生者であるレイス王に言葉を届けることができない。誰よりもその心に寄り添えていたティルハ王妃は、王子の死に耐え切れず心を保てなかった。

 だから、もう僕しか居ないんだ。レイス王が耳を傾けてくれる当事者は僕だけだ。僕だけが、レイス王の心に決着をつけることができる。

 その為に捧げるものが僕の命になるのか。それは、まだわからないけれど。

「まずは、謝罪をさせてください。あの日からずっと、僕はレスト王に謝罪することができていませんでした」

 ドゥノーラ王子が僕の目の前で死んだその瞬間、王子の今際の声を聞きつけた兵士に拘束されてからずっと、僕は独房に居た。レイス王が独房に来ることは無く、殺人者である僕が王への面会を望めるはずもない。

 ガルと出会ったあの日の広場が、ドゥノーラ王子を殺めて以来のレスト王との邂逅だった。今日まで僕は自分を責めるばかりで、謝ることもできていなかった。

「レイス王、僕にドゥノーラ王子への殺意はありませんでした。この肌を愚弄され、道具として使われる日々ではありましたが、殺めたいなどと思ったことはありません。しかし結果として、ドゥノーラ王子は僕の身体に宿った毒によって死んでしまわれました……ここに、お詫びいたします。真に、申し訳ありませんでした」

「……何の意味も持たない、独りよがりな独白だな。お前が謝罪したところで、我が息子は生き返ったりはしない……違うか?」

「仰る通りです。これは、僕なりのケジメです。今の謝罪は、あくまで僕自身のために行わせていただきました」

「はっ、本性を見せたか。さすがは先代の王を誑かした妾の子よ。謝ったのだからこれでいいだろうと、その心のなんと軽薄なことか」

「しかしながら、僕にとってはこれが精いっぱいなのです。僕にできる謝罪はこれだけ……レイス王もお分かりなのではないですか?」

「なんだと?」

「先ほど王も認めていたと記憶しています。あの日……ドゥノーラ王子が僕の寝床を襲うことがなければ、誰も死ぬことはありませんでした」

「貴様っ!!」

 その歯ぎしりがここまで聞こえてきそうなくらいに、レスト王は感情を発露させていた。ガルに指摘された際には、あんなにも冷静に躱してみせたというのに。

 レスト王は言っていた。人は感情を捨てられないと。僕の処刑は、その私情によって執り行うのだと。

 論理的に考えれば、僕には処刑に見合うほどの落ち度は無い。そんなこと、とても僕の立場と感情では考えられない。僕の毒によって命が尽きる様を目の前で見てしまったら、そんな言い訳では罪悪感の慰めにもならない。

 でも、ガルが引き出してくれた。ガルがレスト王の感情を露わにしてくれた。

 レスト王がその感情によって語るのならば、僕もそれに倣うべきなんだろう。レスト王がわがままを言うのならば、僕だってわがままに振舞わないと。

「身勝手なことを言っているのは十分に承知しています。しかしどうか、お聞き入れいただきたく思います……私とガルを、見逃してはもらえないでしょうか」

「文字通りに身勝手な言い分だな! そのようなわがままを、このレスト王が赦すと思うのか!?」

「わがまま……その通りです。身勝手なわがままを言っている自覚はあります。しかし、それはレスト王も同じではありませんか?」

「貴様っ……忌み子の分際で王を愚弄するか!」

「忌み子……っ、王だけではありません! このレスト国では、皆がわがままです! 僕はずっと、皆様のわがままに振り回されて生きてきました!」

「民まで愚弄するか……もはや付き合いきれないな。その汚れた血を絶つことで、全て終わらせるとしよう」

「そこまで仰るのならば、どうかお聞かせくださいレスト王! なぜ僕はこの国で蔑まれ、差別されなければならないのでしょうか!?」

「知れたこと。その肌、その猛毒……何より先王を誑かした女狐の血……生かされているだけ有情ではないか」

「僕だって、こんな身体で生まれたかったわけじゃない!!」

 その一瞬だけ、時が止まったかのようだった。僕の涙だけが、頬を伝って落ちていく。

 世界中の音が消え去ってしまったかのような感覚の中、ガルが小さく僕の名を呼ぶのが聴こえた。
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