重槍士は褐色毒ショタに出会う

papporopueeee

文字の大きさ
51 / 55
決着

例え不出来であろうとも

しおりを挟む
「冷静になれ、レスト王! そっちの被害を良く考えろ!」

「王子を殺害した人間を見逃すなど、あってはならないことだ。どれほどの被害を出そうとも、王子の仇は取らねばならぬ。ルカテの死は、レスト国の総意なのだ!」

「くそっ……おい、あんたらもここで死ぬ気なのか!? 王はともかく、あんたらまでここで死ぬことは無いんじゃないか?」

「逆賊の言葉に耳を貸すな、兵たちよ。このアンノーラ・レイスがその死への途に付き合おう。私と共に、殺されたドゥノーラの仇を取ってくれ」

 兵士たちの王への信仰はかなり熱いようだ。失っていたように見えた戦意が、発破をかけられただけで再び燃え上がってしまった。どいつもこいつも、相討ち覚悟でこちらにボウガンを向けている。

「が、ガル……」

 ルカテも不安気に声を揺らしている。その瞳が、どうか王たちを死なせないで欲しいと希っている。

 俺としても、そんな寝覚めの悪い終わり方は御免だ。

「レイス王! 死んでしまった王子へのその弔意の強さは確と伝わった。国王としても、王子を殺した者を赦すわけにはいかないのだろう。しかし死者への弔いの為に生者が犠牲となるのはいかがなものか! 何より、件の王子は王と兵士たちの命に釣り合うほどの人間であったのか!」

 俺はドゥノーラ王子のことは何一つ知らない。しかしそんな部外者の俺でも確かに言えることが一つだけあった。

「自業自得だろう! 王子はルカテの毒で死んでしまったのかもしれないが、王子が清廉潔白な人間であったのなら命を落とすことは無かった! 違うか!!」

「……違わないな。ドゥノーラが色欲の罪に囚われていたことは否定しまい」

「ならば、王と兵士の命を使ってまでその魂を雪ぐことはないだろう! 賢王なるレスト王であれば、賢明な判断が下せるはずだろう!」

「ふんっ……言ってくれる。旅人風情が王を説くか……」

 その声音から、少しだけ覇気が抜けた。兵を指揮するレスト王ではなく、一人の人間としてのアンノーラ・レイスが表出し始めていた。

「中々に痛いところを突いてくる……。認めよう……我が息子ドゥノーラは、褒められた人間では無かっただろうな」

「では――」

「だがな……例え不出来であろうとも、あれは大切な息子だったのだ。たった一人の、大事な息子だったんだ」

 其処に居たのは、一人の父親だった。我が子を失ったことによる悲しみをいつまでも忘れられない、一人の男が立っていた。

「教えてくれ、旅人よ。なぜ、息子は死なねばならなかった? 清廉潔白でなかったから、我が息子が死んだのは当然と言うのか?」

「それはっ……しかし、ルカテに殺意があったわけでもないだろう。ルカテだって、その体液が毒に変じているなんて知らなかったんだ」

「そうだろうな……だが、責任が無いとは言わせん。人の命を奪っておいて、知らなかったでは済まされないだろう」

「否定はできない。しかしだからと言って命を奪うなどやりすぎだ! 王子が死んだのはあくまで事故だろう」

「人は感情を捨てられぬ。ルカテを処刑しなければ、この追悼は永遠に終わらぬのだ。さあ、そろそろ幕を引くとしよう」

 ダメだ。レスト王は説得できない。子を失った心には、部外者の俺の言葉は響かない。

 兵士たちもその悲しみに感化されているのか、ここで死ぬ悲壮な決意を目に宿している。

 これ以上もたもたしていては、後ろから蜂の巣にされる。一か八か、盾を背負って逃げるしか――

「レスト王」

 その声は、盾の外から聞こえてきた。

「ルカテ……?」

 褐色の肌に、腰まである長い銀髪。母からもらっという衣装を身に纏い、前垂れを揺らしながら。

 ルカテは悠然と盾の外へと歩み出ていた。いくつものボウガンに狙われながらも、その身を王の御前に曝け出していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

処理中です...