ボクとサナ ~淫魔はミステリーに恋し、ロジックを愛する~

papporopueeee

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16. 証言:佐藤 津

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『クックッ、形勢逆転されたか?』
『かも……』
『打つ手は?』
『……』

 雨降って地固まる。
 一度疑いを跳ね除けられてしまったら、その信頼は疑われる前よりも固いものとなってしまう。

『だったら、イチャモンつけるしかねぇな?』
『イチャモンって?』
『悪あがきだよ。テキトーに理由を付けてもっと情報を引き出そうぜ』
『テキトーって……サナには何かアイデアはあるの?』
『それを考えるのはアタシの役割じゃねえな』
『探偵の役割でもないと思うけど……』

 しかしサナの言うことも尤もだ。
 ここで諦めるわけにもいかない。

 津は純夏がコンビニのビニールを持っていたことを言い当ててみせた。
 しかし、純夏は毎日コンビニで昼食を買っているとも言っていた。
 純夏のことを知っている人間ならば、実際に見ていなくとも当てることはできたかもしれない。

 したがって、ここでシオンが取るべき悪あがきは――

「佐藤先生、ビニール袋の中身まで答えてください」
「ちょ、ちょっと思音くん!? さすがに無茶じゃない?」

 三葉の言葉通りだ。
 シオン自身でも、ちょっとどうかと思う発言だ。

 それでも、シオンはきっぱりと言い放った。

「無茶ではないですよ。ビニールは半透明ですから、色が透けて見えるくらいはありえることです。中身を正確に当てて欲しいわけじゃありません。ただ、先生が見たビニール袋の詳細な情報を話して欲しいんです」
「そう言われても、困りましたね……。えーっと……どうだったかな……」

 津は頭を抱えはするものの、一向に答えようとする気配がなかった。
 このままやり過ごすつもりなのかもしれない。

 津からすれば、ビニールを言い当てただけで成果は上々だ。
 既に部員からの疑念は弱まっており、シオンの悪あがきに付き合う道理もない。

『探偵が小狡ければ、お相手もまたせこいときた。見物だなぁ、この勝負は』

 なんとか次の手を考えなければ、津が合鍵を持っていることすらも証明できそうにない。

 シオンが焦りから口を開こうとしたところで、先に純夏の声が津へと飛んだ。

「先生、わからないんスか? 袋の中身」
「カラスくん……?」

 純夏の声にはまだ津への疑念が含まれていた。
 何か思うところがあるのか、もしくはビニールの中には遠目でもわかるような物が入っていたのだろうか。

「ええっと……ちょっと待ってくださいね…………!」

 純夏の追及によって、途端に津の様子にも焦りが見え始めた。

「あーーっと…………」

 額を指でトントンと叩きながらしばらく呻いた後、しばらくして津はパッと顔を上げた。

「ああっ! もしかして、ペットボトルのことですか?」

 その言葉が発された瞬間に、4人の視線が一斉に津へと注がれた。

 ペットボトル……?
 まさか……まさかとは思うが、ペットボトルとは――

「確か、烏丸君は緑色の液体が入ったペットボトルを持っていました。あれって、多分ジュースなんですよね? その割にはかなり濃い色をしていましたけど……」

 津は証言した。
 職員室へ向かう純夏が緑色のジュースが入ったペットボトルを持っていた、と。

 その証言がおかしいことは、津以外の全員が理解していた。
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