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第二夜
義弟は一人では笑えない
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「そろそろ風呂入るかー」
「あっ……」
陽も暮れて、テレビ番組がバラエティからドラマへと移行し始める時間帯。風呂へ誘うと、カオルはわかりやすく気落ちした。情事の現場となると否応にも意識してしまうのだろう。
俺はあえてカオルの様子が変わったことに気づかない振りをしようと思った。
「ドラマが見たいって喚いても、無理やり連れていっちまうからなー」
「んー……」
カオルを抱え上げても抵抗がない。ドラマを見たいと駄々をこねることもなく、ただ不安そうにしている。
少しでもカオルの緊張を和らげようと思い、俺は脱衣所の戸棚から入浴剤を取り出しカオルの前に並べた。
「今日は久しぶりにバブ使うか。カオル、どれがいい?」
「うん……」
カオルの前に並ぶ色鮮やかな包装に包まれた入浴剤たち。入浴剤好きのカオルのために通販で取り寄せた逸品達にも、カオルの反応は薄かった。いつもはバブを使うと言えばすぐに機嫌が直っていたのだが。
「前はこれが好きって言ってたっけ? あー、でもまだ一回も使ったことのないのもあるな。新しいのを試してみるか?」
「そだね……」
俺の声が聞こえていないのか、返事も曖昧で中空をずっと見つめている。吹っ切れたと思っていたのは俺の思い違いで、まだカオルの心には棘が刺さったままなのかもしれない。それを我慢して、日常を演じようとしていたのかもしれない。
「……今日は風呂は止めとくか?」
「え?」
「外に出てないし汗もかいてないから、一日二日くらいなら入らなくても平気だろ」
このまま無理に入って、カオルの心に負担をかけるのは好ましくない。トラウマになんてなってしまったら取り返しもつかない。カオルは多感な思春期だ。少しくらい甘やかすくらいが、丁寧すぎるくらいがきっとちょうどいい。
「……それ、いつもオレがケン君に言ってるやつじゃん」
「あれ、そうだったか?」
「そうだよ。いつもはドラマを見たがってるオレの言い分になんて耳も貸さないでお風呂に連れ込んでるくせに……ぷふっ、あははっ、おかしい」
ケラケラとカオルが声を上げて笑う。それが嬉しくて、俺も声を上げて笑った
「なんだよ、そんなに笑うことないだろ。俺はカオルが落ち込んでで心配してたってのに」
「あははっ、ごめんねケン君。もう大丈夫だから、お風呂入ろ?」
「おう。バブはこれでいいんだな」
「いいけど……」
「なんだ、嫌なら他のでもいいんだぞ」
「嫌じゃないよ。ただ、それってローズマリーの香りでしょ? ケン君には似合わないなーって」
「なんだ、俺がローズマリーの香りさせてたらおかしいか?」
わざとらしく筋肉を強調させるポーズを取ると、カオルはまた笑った。その笑っている好きに乗じて、手早くカオルの衣服を脱がしていく。
「そんなに笑われると傷つくな。俺みたいなマッスルがローズマリーに憧れたっていいだろ?」
「ふふっ、じゃあケン君はローズマリーがどんな花か知ってるの?」
「……薔薇の一種だろ?」
カオルがまた噴き出して笑う。どうやら違ったらしい。
「あはは、ケン君には梅が似合うと思うよ」
「お前それお菓子のことだろ! 男梅!」
男梅のパッケージに描かれている腕の生えた梅干し。あれのモノマネをすると、カオルは笑い転げた。このままでは呼吸困難もありえるかもしれない。
ひーひーと腹を起伏させて喜ぶカオルを抱え込み。俺は風呂場へと足を踏み入れた。
「あっ……」
陽も暮れて、テレビ番組がバラエティからドラマへと移行し始める時間帯。風呂へ誘うと、カオルはわかりやすく気落ちした。情事の現場となると否応にも意識してしまうのだろう。
俺はあえてカオルの様子が変わったことに気づかない振りをしようと思った。
「ドラマが見たいって喚いても、無理やり連れていっちまうからなー」
「んー……」
カオルを抱え上げても抵抗がない。ドラマを見たいと駄々をこねることもなく、ただ不安そうにしている。
少しでもカオルの緊張を和らげようと思い、俺は脱衣所の戸棚から入浴剤を取り出しカオルの前に並べた。
「今日は久しぶりにバブ使うか。カオル、どれがいい?」
「うん……」
カオルの前に並ぶ色鮮やかな包装に包まれた入浴剤たち。入浴剤好きのカオルのために通販で取り寄せた逸品達にも、カオルの反応は薄かった。いつもはバブを使うと言えばすぐに機嫌が直っていたのだが。
「前はこれが好きって言ってたっけ? あー、でもまだ一回も使ったことのないのもあるな。新しいのを試してみるか?」
「そだね……」
俺の声が聞こえていないのか、返事も曖昧で中空をずっと見つめている。吹っ切れたと思っていたのは俺の思い違いで、まだカオルの心には棘が刺さったままなのかもしれない。それを我慢して、日常を演じようとしていたのかもしれない。
「……今日は風呂は止めとくか?」
「え?」
「外に出てないし汗もかいてないから、一日二日くらいなら入らなくても平気だろ」
このまま無理に入って、カオルの心に負担をかけるのは好ましくない。トラウマになんてなってしまったら取り返しもつかない。カオルは多感な思春期だ。少しくらい甘やかすくらいが、丁寧すぎるくらいがきっとちょうどいい。
「……それ、いつもオレがケン君に言ってるやつじゃん」
「あれ、そうだったか?」
「そうだよ。いつもはドラマを見たがってるオレの言い分になんて耳も貸さないでお風呂に連れ込んでるくせに……ぷふっ、あははっ、おかしい」
ケラケラとカオルが声を上げて笑う。それが嬉しくて、俺も声を上げて笑った
「なんだよ、そんなに笑うことないだろ。俺はカオルが落ち込んでで心配してたってのに」
「あははっ、ごめんねケン君。もう大丈夫だから、お風呂入ろ?」
「おう。バブはこれでいいんだな」
「いいけど……」
「なんだ、嫌なら他のでもいいんだぞ」
「嫌じゃないよ。ただ、それってローズマリーの香りでしょ? ケン君には似合わないなーって」
「なんだ、俺がローズマリーの香りさせてたらおかしいか?」
わざとらしく筋肉を強調させるポーズを取ると、カオルはまた笑った。その笑っている好きに乗じて、手早くカオルの衣服を脱がしていく。
「そんなに笑われると傷つくな。俺みたいなマッスルがローズマリーに憧れたっていいだろ?」
「ふふっ、じゃあケン君はローズマリーがどんな花か知ってるの?」
「……薔薇の一種だろ?」
カオルがまた噴き出して笑う。どうやら違ったらしい。
「あはは、ケン君には梅が似合うと思うよ」
「お前それお菓子のことだろ! 男梅!」
男梅のパッケージに描かれている腕の生えた梅干し。あれのモノマネをすると、カオルは笑い転げた。このままでは呼吸困難もありえるかもしれない。
ひーひーと腹を起伏させて喜ぶカオルを抱え込み。俺は風呂場へと足を踏み入れた。
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