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第五夜
義兄は寝る
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「……なんだこれ」
カオルの部屋から人の泣く声が聞こえたので向かってみたら、一条がカオルを抱きしめながら泣いていた。
訳がわからなかった。
「そろそろ寝るか」
「うん」
カオルは素直に頷くと、俺よりも先に立ち上がった。
今日はカオルは性行為をねだることはなかった。してほしいと言うこともなく、アダルトビデオの鑑賞を要求することもなく。一条が嵐のように帰ったあとは、勉強をして、ネットで映画を見て、感想を話し合いながら他愛のない雑談を交えて、いつもの日常を過ごした。
カオルは一条と何をしていたのか、何を話していたのすらも教えてはくれなかった。ふたりともが涙を流していたのだからただ事ではなかったはずなのだが、一条も洗面所で化粧を直してそそくさと帰ってしまった。
「……あの人、明日また来るんだよね」
「明日出直してくるとは言ってたな。特に拒否もしなかったから、このままなら来るだろうな」
「そうだよね……」
「嫌か?」
「……別に」
カオルの顔は喜んでいるようには見えない。かと言って嫌がっている風でもない。今日一日を通して、カオルは時折この微妙な表情を見せている。一条に対して何やら複雑な感情を抱いているのは間違いないだろう。
何があったのかを知りたくないわけではないが、無理やり聞き出したくはない。どちらかが傷心しているのであれば強引に介入もするが、ふたり共にそんな様子もない。今ははぐらかされたままでいるのが無難なのだろう。
「ねえ、一緒に寝てもいい?」
「まあ、そうだな」
昨日も同衾してしまっている。カオルがそうしたいのであれば断る理由もない。
それに、詳細はわからなくても今日カオルが頑張ったことは間違いない。経緯はどうあれ一条が家に上がるのを許し、そして対面するまで至ったのだ。そのご褒美というわけではないが、カオルのしたいことをさせてやりたいという気持ちもある。
「じゃあ、電気消すぞ」
我が物顔でオレのベッドの上に横たわるカオルに布団をかけてやり、明かりを消した。カオルにぶつからないように慎重に掛け布団の中へと潜り込むと、ピトリとカオルが引っ付いてきた。これでは気を遣ってやった甲斐がない。
「……ん?」
「っ……な、なに?」
「……いや」
俺の体にくっついた状態で、カオルがもぞもぞと動く。体を擦りつけるように、すりすりと。
性行為の要求かと思ったが、それにしては控えめだ。頭だったり首だったりを俺の体に擦ってくるばかりで、特に性器を刺激する様子はない。
「どうした?」
「……イヤだった?」
「別に、カオルがそうしたいなら構わないけど」
「……じゃあ、そうしてる」
カオルはジャージの中に潜りこむようにして、素肌同士を擦り始めた。
痒いのだろうか。言ってくれればかいてやるくらいわけないが、自分で擦った方が力加減を調節ができて気持ちがいいのかもしれない。
しかし、これはこれで気恥ずかしい。
「……それ、楽しいのか?」
「……そういうんじゃないし」
カオルはムスっとした声で返事をすると、少しだけ擦る力を強めてきた。
「あんまりやりすぎて、肌荒れさせないようにな」
「うん……」
カオルの意図はわからないが放っておこう。何かあれば言うだろうし、口にしないということは放っておいてほしいのかもしれない。その内寝るだろう。
大きなあくびを漏らして瞼を閉じる。今日も色々あったが、カオルの世界が広がったことは間違いない。一条を頼って本当に良かったと思う。
一条へのお礼を考えながら、すりすりという音を聴きながら、俺の意識は眠りに落ちていった。
「……マーキングってこれでいいのかな」
カオルの部屋から人の泣く声が聞こえたので向かってみたら、一条がカオルを抱きしめながら泣いていた。
訳がわからなかった。
「そろそろ寝るか」
「うん」
カオルは素直に頷くと、俺よりも先に立ち上がった。
今日はカオルは性行為をねだることはなかった。してほしいと言うこともなく、アダルトビデオの鑑賞を要求することもなく。一条が嵐のように帰ったあとは、勉強をして、ネットで映画を見て、感想を話し合いながら他愛のない雑談を交えて、いつもの日常を過ごした。
カオルは一条と何をしていたのか、何を話していたのすらも教えてはくれなかった。ふたりともが涙を流していたのだからただ事ではなかったはずなのだが、一条も洗面所で化粧を直してそそくさと帰ってしまった。
「……あの人、明日また来るんだよね」
「明日出直してくるとは言ってたな。特に拒否もしなかったから、このままなら来るだろうな」
「そうだよね……」
「嫌か?」
「……別に」
カオルの顔は喜んでいるようには見えない。かと言って嫌がっている風でもない。今日一日を通して、カオルは時折この微妙な表情を見せている。一条に対して何やら複雑な感情を抱いているのは間違いないだろう。
何があったのかを知りたくないわけではないが、無理やり聞き出したくはない。どちらかが傷心しているのであれば強引に介入もするが、ふたり共にそんな様子もない。今ははぐらかされたままでいるのが無難なのだろう。
「ねえ、一緒に寝てもいい?」
「まあ、そうだな」
昨日も同衾してしまっている。カオルがそうしたいのであれば断る理由もない。
それに、詳細はわからなくても今日カオルが頑張ったことは間違いない。経緯はどうあれ一条が家に上がるのを許し、そして対面するまで至ったのだ。そのご褒美というわけではないが、カオルのしたいことをさせてやりたいという気持ちもある。
「じゃあ、電気消すぞ」
我が物顔でオレのベッドの上に横たわるカオルに布団をかけてやり、明かりを消した。カオルにぶつからないように慎重に掛け布団の中へと潜り込むと、ピトリとカオルが引っ付いてきた。これでは気を遣ってやった甲斐がない。
「……ん?」
「っ……な、なに?」
「……いや」
俺の体にくっついた状態で、カオルがもぞもぞと動く。体を擦りつけるように、すりすりと。
性行為の要求かと思ったが、それにしては控えめだ。頭だったり首だったりを俺の体に擦ってくるばかりで、特に性器を刺激する様子はない。
「どうした?」
「……イヤだった?」
「別に、カオルがそうしたいなら構わないけど」
「……じゃあ、そうしてる」
カオルはジャージの中に潜りこむようにして、素肌同士を擦り始めた。
痒いのだろうか。言ってくれればかいてやるくらいわけないが、自分で擦った方が力加減を調節ができて気持ちがいいのかもしれない。
しかし、これはこれで気恥ずかしい。
「……それ、楽しいのか?」
「……そういうんじゃないし」
カオルはムスっとした声で返事をすると、少しだけ擦る力を強めてきた。
「あんまりやりすぎて、肌荒れさせないようにな」
「うん……」
カオルの意図はわからないが放っておこう。何かあれば言うだろうし、口にしないということは放っておいてほしいのかもしれない。その内寝るだろう。
大きなあくびを漏らして瞼を閉じる。今日も色々あったが、カオルの世界が広がったことは間違いない。一条を頼って本当に良かったと思う。
一条へのお礼を考えながら、すりすりという音を聴きながら、俺の意識は眠りに落ちていった。
「……マーキングってこれでいいのかな」
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